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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第九章 暁闇①

昏い夜を抜けて429

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 「ん…」
 喉の渇きを憶えて、目が覚めた。
 そうは言っても、酒の残った体は容易に頭の霞を払ってはくれず、とりあえずいつもの習慣で枕元に置いてあるはずの携帯電話を探す。
 だが、手を伸ばした先には、まだ冷たいシーツの感触があるだけで、パタパタと周囲を探ってもいっこうに目的のものが手に触れずに、小さく息を吐き出す。
 …今、何時よ。
 空調の効きすぎた部屋に寒さを感じて、つくしはブルリと体を震わせる。
 諦めて温かいへと戻ろうとして、手に触れた温もりに身を寄せたのは自然な成り行きだった。
 …類?
 いつのまに類が来てくれたのだろうか。
 …あれ?あたし、どうしたんだっけ。
 まとまらない思考はとりあえず置いておいて、心地よい温もりに包まれ、再び眠りの世界へ戻ろうと体の力を抜いた。
 が―――。
 …え?
 ふんわりと香った、懐かしい甘い香り。
 華やかなそのコロンの香は、彼によく似合っていた。
 だがしかし…。
 おそるおそる薄く目を開けた視線の先、意外ではないことに、肌色の素肌に行きあたって唇が震えだす。
 このシチュエーションは初めではなかった。
 初めてではないからといって、慣れることなどあるわけがなかった。
 いや、シチュエーションが問題なのではない。
 そこにいる相手が問題だったのだ。
 …そんな、うそ。
 もしかして、これは夢なのだろうか。
 今となってはとびっきりの悪夢。
 そんな都合のよい夢などあるはずがないとはわかっていて、それでも心が信じたくないと目を反らし、空転する思考がまとまりのつかないわけのわからないことばかりを思い浮かばせては、繰り言を繰り返す。
 …どうしよう。
 …そんな。
 …桜子は。
 …類。
 …あたし、なんで。
 規則正しい寝息をたて、ぐっすり眠り込んでいる相手を起こさないようにと、つくしはゆっくりと体を起こした。
 …道明寺。
 まさか、そんなことがあるはずがない。
 そうは言っても、目の前の彫像のような美しい男が彼以外の何者でもあるはずがなかった。
 「ん………の」
 司が何事か呟いて、つくしはギクリと体を揺らす。
 「…………ふぅ」
 しかしただの寝言だったようで、息を止め、彼を見つめるだけで震える体を身動きさせることができないでいる彼女をよそに、司は小さく息を吐き、再び眠りの世界へと戻っていったようだった。
 大きく上下するはだけた司の裸の胸が、つくしの動揺をなおいっそう大きく波立たせ、彼女の逼迫した気分を追い詰めてゆく。
 ポロリと涙が落ちた。
 …信じられない。
 嗚咽が零れそうな唇を片手で覆って、自分の体をもう一方の手で確認する。
 とりあえずは、自分までもが裸ということはなかった。
 バスローブ一枚ということが、裸でないことに対してどれだけ救いになるものなのか、定かではなかったけれど。
 それでも、自分の体のどこにも異変はないように思えた。
 ただ、アルコールのもたらせた酩酊、突然の衝撃と動揺に思考を纏まらせることのできない今の彼女に、どれだけ事態を冷静に判断できているものか。
 司が酔った自分を相手に、彼女を傷つけるようなマネをするとは思えない。
 けれど、ありえないと思っていた類でさえ、彼女を裏切った過去があるのだ。
 ましてや、つくしは今の司をまだよくは知らなかった。
 「か、帰らなきゃ」
 しゃがれた声音は、自分でさえギョッとするほど疲れて、まるで老婆のようだ。
 けれど、こんなところでいつまでも泣き伏しているわけにはいかないのだけはわかる。
 あらためて見回した周囲。
 どうやら南国風の佇まいを見せるそこは、道明寺邸やメイプルホテルというわけではなさそうで、しかし、つくしの知るどこでもないようだった。
 やっとの思いで布団の合間から抜け出し、ソロリソロリとキングサイズのベッドを這って出る。
 足元を覗くと、ふわふわとした高級そうなスリッパが二足揃えて置いてあった。
 靴が見当たらない。
 「靴、どこだろう」
 靴だけの話ではない。
 よもやバスローブのまま帰るわけにもいかないから、衣類やバック、財布も探さなければならないだろう。
 とりあえずスリッパを履き、つくしが立ち上がろうとベッドについた手を放そうとしたその瞬間―――。
 「………こんな真夜中に、どこに行くつもりだ?」
 「ひっ」





 ザァ―――――。
 疲労に凝り固まった体に、熱い湯が気持ちがいい。
 それでも、ゆっくりと風呂に浸かるよりは、今は柔らかなベッドが恋しかった。
 …牧野がいてくれれば、もっと良かったのに。
 シャワーのコックをひねり、頭上のラックにひっかけてあったバスタオルを腰に巻いて、類は小さく溜息をついた。
 寝室に戻ると、スマートフォンが機械的な呼び出し音を鳴らし、ブルブルと震えていた。
 「…ジャストタイミング」
 見慣れた名前。
 この時間に、彼から連絡が入るのはいつものことで、特別な兆しなどではないはずだというのに…予感があったのかもしれない。
 じんわりとした不快な何かが胸を騒がせていた。
 けれど、そんな気持ちとは裏腹に、焦ることもなくゆったりとした仕草で携帯のタッチパネルに触れ、電話に応答する。
 「はい、俺」





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