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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第九章 暁闇①

昏い夜を抜けて424

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 「…え?本気?本当に仕事辞めちゃうの?」」
 退職願をまだ出していなかったが、直属の上司にあたる類にはすでに口頭で意思を伝えてあったので、もはや覚悟も決まっている。
 「うん…、仲良くしてくれた江島さんと離れちゃうのは寂しいけど、あたし、フランスには行けないから」
 「ああ…なるほど」
 つくしのフランス留学および転勤の話はすでに正式辞令として社内でも知られていたし、類との事情も彼の子飼いである江島には承知されている。
 花沢物産の同僚として、あるいは個人的な友人として…そして、類の部下としてのさまざまな立場が江島を複雑な顔にさせた。
 「…そっか、なんていうか、あたしもこんな立場だから、なんて言葉をかけたらいいかわらないけど」
 「……」
 「つくしちゃんのためにはおめでとうって、送り出してあげたいし、同僚としてはすっごく寂しい」
 「……うん」
 「こうやってつくしちゃんと給湯室で女子会話するのも、もうすぐ終わりなんだね」
 「そうだね」
 いろいろなことがあった。
 花沢物産に出向してから、早1年近く。
 社会人として社会に出てからと考えてみたにしても、まだそれほど長い月日が流れたわけではなかったというのに、つくしにとっては人生のうちでもなんと濃い期間だったことだろう。
 けれど、思い起こしてみれば、彼女の人生は波乱と変遷の連続で、それも…類と、いや、彼らF4と出会った時から始まったものだと思えば、なんとも言えぬ感慨と苦笑が溢れる。
 「いつまで、いてくれるの?」
 「あ…それは、まだ。退職願もまだ提出してないし」
 「ああ、そうなんだ。まあ、提出先も専務じゃあね」
 「はは、そうなんだよね」
 もちろん、ケジメというものがある。
 いくら口頭で伝えたからといって、それは個人的な話。
 きちんと清書した書類を、会社で、上司としての彼に提出する必要があるだろう。
 「ま、専務にしてみれば、ルンルンなんだろうけどね」
 「は?」
 …ルンルン。
 思わず、腰に手を当てスキップしている類を思い浮かべてしまったが、意外に違和感がなくって動揺する。
 けっこういつもの飄々とした表情で、やってのけてしまいそうだ。
 …いやいや、そうじゃなくって。
 「何、微妙な顔してるのよ、変なつくしちゃん。寿退社なんでしょ?」
 「………」
 「………」
 「……へ?」





 江島の思わぬ誤解に、驚愕し、帰り際によけいな動揺を抱え込んでしまった。
 …そっか、だから、おめでとうって言われちゃったのか。
 つくしとしては、単純に会社命令に逆らう→会社に無用の混乱と迷惑をかけてしまった→辞職、の図式しかなかったが、言われてみればそう取られても仕方がない。
 いやもちろん、それだけが理由ではなかったけれど、『結婚』、まだそこまでの認識がつくしになかったのだ。
 しかし…。
 …ずっと一緒にいようって言われたよね。
 子供の話なんかもでた覚えがある。
 それで具体的に結婚へと意識が結びつかないつくしもたいがい鈍かったが、それ以上に類には、本人たちが『結婚しよう』、『結婚して』と合意するだけでは一筋縄でいかない問題がある。
 …花沢をでるって言ってたけど。
 本当にそんなことが可能なのだろうか。
 類は花沢物産の御曹司。
 そこには常に、過去立ちはだかった道明寺楓の影が心のどこかに染み付いていて、事あるごとに浮かび上がり、そして類の母志保子の顔へと変わる。
 …いけない。類を信じるってちゃんと決めたんだった。
 過去に囚われるばかりで、逃げていればやがては本当に影に追いつかれる。
 大切な人を信じず、自分を信じず、身勝手な臆病風に吹かれて逃げてしまえば、後悔ばかりの人生が待っていることをもう自分は知っていた。
 幼かった少女時代ではないのだ。
 つくしには戦う力がある。
 それはもしかしたら、類の父や母、花沢に関わる人々にしてみれば、塵芥にも値しない非力な力でしかないかもしれなかったけれど、少なくても彼女には彼らに負けずとも劣らぬ確固たるものがあった。
 ただ…類を愛しているということ。
 彼を信じると誓ったその気持ち。
 どんな嵐にも、雨にも…もう負けはしないというこの決意。
 少しでも気を抜いてしまえば、怖くて…本当に恐ろしくて、また逃げてしまいたいという臆病風に吹かれてしまいそうな心を支えてくれる人たちが彼女にはいた。
 ふと目を向ければ、そこかしこに彼女を支えてくれた人たちがいたのだ。
 それは類であり、彼女の肉親であり、友人たち…そして知り合った多くの大切な人たち。
 
 人は弱くて身勝手な生き物だから、つい見失いがちだったけれど、けっして一人で生きているのではない。
 誰かに支えられ、時には支えながら、迷い惑っても、前へと進んでゆく。
 どんなに願ってもけっして、過去へと戻ることが叶わぬように、それは生きとし生ける者たちの必然なのではないだろうか。
 …もう迷わない。
 …もう忘れない。
 何が大切なのか。
 この手からすり抜けてしまわないように、しっかりと握り締めて…前だけを見よう。
 ガタガタ…バッタン。
 机の引き出しからカバンを出して、手帳や小物をしまい、つくしが簡単に身支度を整えたところで、外出していた類と三田村が戻ってきた。
 「あれ?牧野、もう帰るの?」
 もう…と言われるには、就業時間も過ぎていたけれど、いつもは上司である類や三田村に付き合って、もう少し遅い時間まで残業をしている彼女だ。
 「あ、はい。お疲れ様です」
 「珍しいね、牧野がほとんど定時に帰るなんて。いつもはいいって言っても、俺たちに付き合って遅いのに」
 「もしかして、何かトラブルでも?」
 ここのところ、残務に追われる類たちに付き合って残業づくしの生活を送ってるだけに、どうやら類や三田村は、つくしを今時のOLだということを忘れているらしい。
 「あ、いえ、違います。その…海外に行っていた友人が、いま少しだけ日本に戻ってきていて、このあと、会う予定なんです」





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