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「中・短編」
意地張ってんじゃねぇよ!…30話完

意地張ってんじゃねぇよ!11

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 「香港?」
 …またかよ。
 あのオヤジはこの俺を何度呼び出せば気が済むんだよ、という言葉はとりあえず飲み込んだ。
 どのみち、機嫌を損ねるわけにはいかない相手だ。
 こいつに当り散らす時間も、今は惜しい。
 NYでは西田が俺につけられる予定だったが、どうしても西田でなければダメな交渉があるとかで、結局、東京から俺の本来の第一秘書、寺島を連れてきていた。
 「はい。来週から中東方面の出張が入っているとかで、どうしてもそれまでに専務に都合を合わせていただけないかと」
 香港か。
 香港からなら、東京まで4,5時間ってところか。
 「明日から3日間ってことは、ロスアンゼルスでの合同会議に社長に同行することが決まってるから、ほとんどトンボ帰りってことだよな?」
 「ええ…それは申し訳ないことですが」
 現地視察を兼ねてるから、ほとんど3日間連れ回されることは間違いないから、間に抜けるのはけっこう難しい。
 そして、予定より伸びちまったが再来週には東京へ戻ることが決まってる。
 無理することなんてねぇ。
 そうは思うのに…。
 「わかった。それまでに処理しなきゃなんねぇ仕事、どんどん回せ」
 「では、了解だとお伝えしてよろしいですね」
 「ああ」
 答えた時には、すでにパソコン画面に目を戻してる。
 手元に書類にざっと目を通し、サインしながら必要な情報を開いてゆく。
 分刻み?
 もしかしたら秒刻みなんじゃねぇの?
 けど、それがどうした?
 そんなの関係ねぇ。
 「…そのかわり、半日ほど中日に時間空けろよ」
 「ええっ!?」
 手渡した書類を揃え、アタッシュケースにしまいかけていた寺島が、ぎょっと目を向いてこちらを見たのに、睨み返し、念を押す。
 「東京を往復する時間+2、3時間でいい」
 「そ、そんな」
 「わかったつー返事以外俺には必要ないぜ?」
 西田だったら俺の睨みくらいじゃビクともしねぇが…。
 「か、か、かしこまりました。ですが、時間を作ることができても、移動もありますから、おそらく1時間かそこらのことかと」
 「……とにかく、やれ」
 寺島とは俺のNY時代からの付き合いだ。
 当時は教育係として付けられていた第一秘書の西田の下、第二秘書だったが現在は繰り上がって第一秘書として東京にも随従してきていた。
 だから、俺の性格は熟知してる。
 たぶん青ざめたこいつの頭の中は、すでにフル回転でこれからのスケジュールを組み直してることだろう。
 西田が薫陶した男だ。
 俺の睨みや恫喝でかなり右往左往する情けない男だが、それでもエリート中のエリート。
 頭の回転は速いし、あらゆる面で秀でている。
 俺と牧野の事情も把握しているから、俺の意図などわかっているだろう。
 …俺からは連絡しない。
 そう言った自分のセリフが頭をよぎる。
 連絡はしない。
 ただ俺がいない間、あいつがどうしてるか見るだけだ。
 キョトキョトしてる女だからな。
 うっかり野放しっぱなしにしてたら、どんな状態になってるかわかったもんじゃねぇ。
 そう思いつつ、俺の仕事を処理する速度は格段に効率をあげ、ろくに休みもとらずに疲労に凝り固まっていたはずの体も不思議に軽くなっていた。
 …まったく、しょうもねぇ。





 久しぶりに帰国した東京は、8月も後半だというのにまだまだ蒸し暑く、そろそろ秋に向かって涼しくなり始めたNYの気候にホッとし始めた体にはことさらキツく思える。
 それでも、牧野に会える(俺の脳内ではいつの間にか、見るだけから、会うことに自動変換されている)という期待からか、単にNYの常に薄曇りのようなどんよりとした空に比べて晴天が目に眩しいせいか、気分は上々、長距離移動での時差ボケの頭も明るく切り替わった気がしていた。
 わずかに頭痛がするのは、今日、数時間のこととはいえ東京にいるために激務をこなし続けた後遺症のせい。
 スケジュールを空けさせた当の寺島は、さすがの無茶ぶりにダウンして香港に足止め。
 …たく、西田にはまだまだ及ばねぇな。
 とはいえ、ババアの懐刀のあの男が張り付いていては、こちらもやりにくいったらありゃしねぇ。
 「専務、きっかり2時間。それだけしかお時間はありません」
 有能なくせに妙にあたふたと腰の座ってなかった寺島の焦り顔も見飽きたが、この女の西田張りの能面顔にはうんざりさせられる。
 だから、西田のことなんて思い出したんだな。
 これから好きな女に会いに行こうっていうのに、ツマンネーこと思い出したもんだと、ため息をついた。
 「お前はこっちに残ってろ。2時間とはいえ、プライベートだ」
 「いえ、そうは行きません。寺島からくれぐれも、専務から離れず、スケジュールをお知らせするように命じられております」
 「………」
 なにが、スケジュールをお知らせ、だ。
 ようは、うるさく急かせて連れ戻れってことだろ?
 言い争っている時間ももったいねぇ。
 どのみち、車内でもぼうっとしてるわけにもいかねぇんだ。
 それなら、ジェットで待たせていようと、車に待機させておこうと一緒かと、同行を了承した。
 「…邪魔すんなよ?」
 「専務がスケジュールをお忘れにならなければ、私の出る幕はないかと思います」
 淡々と受け答えしてくるその顔は、あきらや総二郎あたりに引き合わせたら脂下がること間違いなしの、まあまあの美人つーやつなんだろうが、取り付く島がないところがまさに西田女版。
 西田のやろう、どこからこんな女連れてきたんだ?
 まさかやつの隠し子ってこともねぇだろうが、これなら寺島の方がまだましだ。
 とはいえ、突然の代打で派遣されてきたわりに、ジェットで顔を合わせてすぐに仕事ができるやつであることはすぐにわかった。
 まあ、じゃなかったら、女の秘書なんて絶対ゴメンだったけどな。
 それでも一応既婚者だということで、渋々受け入れた。
 こんな女と結婚する奴の顔が見てみたい。
 自分の男の前でも、こういう女はこんな態度なのか?
 ついジロジロ見てしまっていたらしい。
 「……なにか?」
 「いや、お前の旦那ってどんな男なのかってさ」
 「は?」
 何聞いてんだ、俺は。
 他人のプライベートに興味を持ったことなんかねぇのに。
 「なんでもねぇ、気にするな」
 女秘書・永瀬と一緒に車に乗り込み、すぐに手渡された書類に目を通す。
 「………とても生真面目な人です」
 「あ?」
 「真面目過ぎて不器用で、でもとても心の温かな、私の気持ちをホッとさせてくれる人です」
 ほんのりと頬を染めたその横顔に、ドキッとした。
 いや別に、この女に対してどうこう思ったとかじゃねぇ、もちろん。
 ただ、どうみても仕事一筋、この女こそ真面目を絵に書いたようなやつのように見えるのに、そういう風に自分の男を想って話す顔が妙に可愛らしく思えて、驚かされただけだ。
 とはいえ、若くは見えても、永瀬はたぶん俺より一回り近く年上だろう。
 ふと思った。
 牧野も…。
 牧野も、俺を想ってこんな顔をしてくれたりするんだろうか。
 意地ばっか張って、ちっとも俺に頼ったり、甘えたりしてくれねぇ女だけど、他人に俺のことを話してこんな幸せそうな顔をしてくれてるのか?
 …ねぇな。
 瞬時に自分で自分に否定して、顔を歪める。
 『あんたのことなんて、誰にも言えるはずないでしょっ!自分の立場を考えなさいよッ!?』
 まるで耳元で言われたように、まざまざと想像できる。
 「専務、その書類すべてに目を通し終えてくださらなければ、自由時間は差し上げられませんよ」
 持たされた辞書並みに厚い紙の束が、急にずっしりと重さを増した気がして、チッと舌打ちが洩れた。





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