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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第九章 暁闇①

昏い夜を抜けて418

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 トントントントン、コトコトコトコト。
 「うん!よし、美味しい」
 飲みすぎたわりには二日酔いにもならず、いつものとおりの起床時間。
 目が覚めてまず目にしたのが、美貌の王子様の顎下からの眺め…という贅沢にもドキマギしすぎて心臓が壊れてしまいそうに小っ恥ずかしい朝の目覚めだった。
 「……って、なんでなんだろう」
 つい呟いてしまうのはいつも同じセリフ。
 こんな朝…類と同棲している間は何度となく、それこそ数え切れないほど過ごしてきたシチュエーションだというのに、だ。
 類との関係が契約に基づいていた間も、ときめきを感じていなかったとは言えないが、それでも苦悩や不安、哀しみの方が大きかった。
 いずれくる別れを心に留めながら、愛されぬ苦しみ、愛しても報われぬ恋に再び踏み込んでしまった自分を憐れむばかりで。
 それでも彼を憎むことができなかった自分に呆れるばかりだ。
 「…なにが、なんでなの?」
 「わっ!」
 いきなり背後から、肩の上に腕を乗せられ首に抱きつかれて悲鳴をあげる。
 「あつっ!」
 焦るあまりに、火をかけていた鍋に手が触れてしまった。
 「バカッ!なにやってんのっ」
 大きな手に手を取られ、ジャージャー流した水道の水に手を晒される。
 まだ麻痺しているのか、痛みはそれほどではなかったけれど、それでもわずかにチリチリとした痛みを感じ始めていた。
 「もう、なにボウっとしてるの」
 不機嫌に顔を歪めた類がため息混じりに、つくしを咎める。
 だが、元はといえばいきなり後ろから抱きついて驚かせた類が悪いのだ。
 「…だって、あんたがあたしをいきなり脅かすからでしょ!」
 「まあ、それは悪かったかな。でも、一人で喋ったり、自分で返事したりしてるあんたを見てたら声を掛けそびれちゃったんだよ」
 「ええっ!?」
 自覚してやっていたわけではなかったつくしが、ぎょっと類を肩ごしに振り返った。
 「マジ?」
 「…マジ。いつもながら、傍から見たらけっこう変な女だよね」
 「あうっ」
 …恥ずかしすぎる。
 「まあ、俺は面白いし、見てるのも楽しいからいいけどね」
 「…止めてよ」
 一人芝居を黙って見ている類もたいがい人が悪い。
 だがそう思いかけて、
 …この人は見た目によらず人が悪かったんだった。
 いまさらな悟りに、つくしの方がため息が溢れそうだ。
 「もうそろそろいいかな」
 流水に晒してたつくしの手を引き上げ、類が確認する。
 「…ん、まあ、とりあえず多少赤くなってるけど水膨れにはならないかな」
 「ありがと」
 「どういたしまして。俺のものなんだから勝手に怪我しないでよね」
 「あ、はい…って?」
 うっかり返事をしかけて、言葉尻のあまりのおかしさに疑問符を浮かべる。
 つくしの頬にキスを落として、類が立ち去るのを背中越しに呼び止める。
 「ちょっと待て」
 「ん?なに?」
 「…今の?」
 「キス?」
 「…いや、それはまあ、…その、それはいいんだけど」
 新婚みたいなやりとりは気恥ずかしいが、それを一々咎めたりテレていたら身が持たないので、とりあえずは置いておく。
 慣れといえば慣れだけど、それでも類の甘さは加速度的に上がってる気がするのもスルーして、
 「俺のものなんだからって…」
 「俺のものでしょ?」
 「いや、普通にあたしの手だし」
 「…俺のだよね?」
 「……」
 間違いではないかもしれないけど、なんと返していいのやら。
 返事に困って、黙り込む。
 「それに俺も牧野のもの。そんないかにも、対応に困ってますって顔しなくてもいいじゃない。なんか、文句ある?」
 「……いえ、その…」
 「え?違った?」
 びっくりしたように問い返されたら頷かないわけにはいかず、それでもやはり今日も赤面させられ、感情のアップダウンの激しさにつくしはヘロヘロだった。
 「違わない…です」





 つくしの作った朝食を二人で食べて、やはり相変わらずな偏食&少食の類に溜息をつきつつの、出勤時間までのわずかな時間。
 二人ソファに並んでテレビを見る。
 小難しい世界情勢を伝えるニュース…ではなく、朝っぱらから有料チャンネルでバラエティ番組。
 そりゃつくしも嫌いではないが、正直朝から大笑いしたいものでもなかった。
 …本当に面白いんだなあ。
 見るともなく鼻歌まで歌いそうにご機嫌な類の横顔を、ついジロジロ眺めてしまう。
 こんな見た目完璧な男性が、朝から見ているのがかなり低俗でお下劣なコント。
 類はアニメも嫌いではないらしく、特に選局したりはしないが、見ていたチャンネルで放映していればそのまま観ることも珍しくない。
 …でも、なんだかこうしてると無邪気な子供みたいなんだよね。
 元々威圧的なところはない男だが、その怜悧さばかりが目立って、ともすれば冷たく見られがちなクールでとっつきがたい青年だった。
 ビー玉のようだとつくしが少女の日から憧れたその綺麗な瞳も、何の感情も浮かべていないと単なるガラス玉のようで、恐ろしいと思った日さえあるというのに、今の彼にはそんな過去の片鱗さえない。
 …わ、すっごいサラサラな髪。光に透けると茶色っていうより、ほとんど金髪っぽい?
 テレビに集中しているのを良いことに、いつの間にかつくしはテレビではなく類鑑賞へと関心が移ってしまっていた。
 …すっと通った鼻筋がノーブルで、男のくせにこの綺麗さってホント反則だよね。
 一心不乱に見つめていたのだ。
 当の本人にも気がつかれないはずがなかった。
 「……なに?」
 「へ?え?あ…えっとぉ」
 横目で笑われて、つくしはシャチホコ張って慌ててテレビヘと向き直り、何食わなさを装う。
 もちろん、類に見蕩れていたことなんて、彼にもバレバレだ。
 そうしてずっとこの1年間一緒に過ごしてきた。
 もしかしたらそれは、高校生のつくしが彼に憧れたあの日々とあまり変わらないのかもしれない。
けれど、確実に変わったこともある。
 「いいよ。俺は牧野のものなんだから、好きなだけ眺めてて」
 「……その牧野のもの、っていうのやめて」
 「なんで?」
 確信犯な意地悪男はつくしの手に余る。
 ニヤニヤ笑う顔が悪くて、つくしは憮然と足を踏んでやった。





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