FC2ブログ

「昏い夜を抜けて…全483話完」
第八章 開花③

昏い夜を抜けて416

 ←昏い夜を抜けて415 →昏い夜を抜けて417
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 いまさら…と、類は言ったけれど、実際、彼の秘書になってからは公私は分けられていて、こんなふうに社内で手を繋いで歩いたことはない。
 とはいえ、時間が時間で、社内のほとんどの部署の灯は消え、居残っている社員たちも残業しているだけあって事務所に詰めているので、玄関先まで誰にも会うことはなかった。
 …まあ、類の執務室は特別階にあるわけだし、エレベーターも一般社員たちが使ってるものとは違うんだもんね。
 昼間はにこやかな応対を絶やさない受付嬢の姿もすでにない。
 最初はドキマギした社内での手繋ぎも、誰にも出くわさないとなれば事情が違う。
 大きな手にギュッと手を握られ、広い背中を見ながらゆく道行はふわふわして、ウキウキと心弾む嬉しい時間だった。
 どちらかといえば引きずられている感があったつくしが、類の手を握り返す。
 その仕草に真っ直ぐに前を向いていた類が、おやっと視線を向けてくれた。
 そのビー玉色の目が彼女を映し出すととたんに、ドキドキと動悸が激しくなりだす。
 そんな彼女の気持ちなどとっくにわかられているのだろうか。
 繋いでいた手を離され、肩を抱かれた。
 「る、類。ここ、会社!」
 「…平気だったでしょ?こんな時間だもん、誰にも会ったりしないよ」
 「もうっ」
 だが、玄関ロビーを通り過ぎて自動ドアをくぐり抜けた瞬間―――。
 玄関前の臨時駐車スペースに停まっていた車から出てきた社員の一人と目が合ってしまった。
 …うっ。
 「せ、専務」
 「お疲れ」
 類を見てつくしを見て、再び類を見て棒立ちになった男性社員に、なに食わぬ顔で類が挨拶しながら通り過ぎるのを横目に、つくしも合わせる。
 「お疲れ様です」
 「お、お、…お疲れ様です」 
 つくしの声にわれに返ったのだろう。
 慌てて挨拶を返してくるのにもはや一瞥もせずに、つくしを連れ類が立ち去る。
 「み、見られちゃったよ」
 「別にいんじゃない?」
 「…………うーん」
 いくら社内恋愛が禁止ではないにしろ、社内でいちゃつく?カップルなど問題外だろう。
 しかも、ただの社員ではない。
 自社の専務…あの!?花沢類なのだ。
 「言ったでしょ、もうアフターファイブ」
 「そりゃ、そうかもしれないけど、また…変な噂になりそう」
 はあぁとため息をついてしまったのは、つくしにとってもはや習い性のようなものだった。
 ぐっと引き寄せられ、頭にキスが落とされる。
 「いいじゃない。変な噂じゃない、単に本当なだけ」
 「ちょっ…ハァ」
 文句を言いかけ、どうせ類には何をいっても糠に釘だと文句は諦める。
 けれど呆れた気持ちはせめて表さずにはいられなくて…。
 「……あんたねぇ」
 「人の噂は七十五日って言うじゃない?どうせ、俺がここにいるのも後わずかなんだよ。当の俺がいなくなったら、お前にどうこういう奴はいなくなるって」
 「後わずかって…」
 人の噂はうんぬん…はともかくとして、類の言葉尻につくしがハッとする。
 「社長にはもう言ったよ。東南アジア統括への転勤には従わない。と、いうか花沢物産そのものを来月半ばまでに退職するつもりだって。……言ったでしょ?それに、以前とはもう状況が違うし…」
 「え?」
 「隠さなければならない理由のほとんどが、ある意味もう無意味になったってところかな」
 「………」
 迷いのない類とは裏腹に、つくしの脳裏にいろいろなものが去来して目を泳がせる。
 覚悟は決めたつもりでも、迷うのがつくし。
 そんなことはつくし自身も…類ももちろんわかっている。
 「スキあり」
 ちゅっ。
 今度は唇に軽いキスを落とされ、つくしが目を瞬かせる。
 が…、
 「クスクス、鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔…いてっ、ぷくくく」
 脇腹を抓られ、類が笑い含みに悲鳴をあげて痛がる。
 「真面目な話をしてる時にやめろつーのっ!!」
 半分以上がテレで怒りではない。
 熱い頬に自分が真っ赤になってることなんて、容易にわかる。
 「ホント、お前っていつまでたっても物慣れないよね」
 「……うるさい」
 自分だっておかしいと思う。
 けれど、どれだけ類と過ごせても、触れ合ったとしても、この美しい王子様のような外見と小悪魔の性格をもった性悪男に慣れることなどできないだろう。
 「でも、そんなお前が好きだよ」
 「…もうからかうのやめてってば!」
 「これはホント。どんなお前も可愛いし愛しいと思う。だから、お前はなにも変わらなくていい…捨てる必要もない。ただ俺を信じてて?それだけでいい。これからの思案も心配も、苦悩も…すべて俺が背負うから。ただ信じるって言ってそばにいてくれればいいよ」
 守られているだけなんてガラじゃないのに。
 それなのにすべてを引き受けるという類の方が縋るように彼女を見るから…。
 「信じるし、傍にいる。だからあんたも、あたしを信じて傍にいてくれなきゃダメだよ?」
 本当に嬉しそうに、類がにっこりと綺麗に笑う。
 「…もちろん信じてるし、牧野が嫌だっていっても俺はもう一人ではどこにもいかない」





 「で、デートってどこに行くの?車じゃないし」
 「どこいこっか」
 「………や、それってもしかしてなにも考えてないとか言う?」
 どうりで繁華街の方へは向かっているようだが、なにか目的があって歩いてるという感じではなかった。
 でも…、
 「こういうのもたまにはありでしょ?牧野が行きたいところがあるなら、そこへ行ってもいいし、こうして二人でブラブラするとかダメ?」
 「ううん、全然ダメじゃないよ」
 おそらく類が相手でなければ、彼らF4という人種との付き合いでなければ、つくしにとって当たり前のデート。
 「嬉しい」
 「そ?」
 「…うん」
 ただ手を組んで、笑い合って、たわいない会話を楽しんで。
 「ねね、ご飯どこで食べる?」
 「牧野のおススメある?」
 「うーん、あんたみたいなセレブなお坊ちゃまの口には合わないだろうけど、前から行きたかったところあるんだけど…」
 チラッと上目遣いで見上げるつくしを可愛いと思いながら、類がにっこり頷く。
 「いいよ、どこにでもお伴するから」
 「うん!」
 通り過ぎる人の波に沿い、あるいは逆らってどこまでも二人歩いてゆく。





 「……えっ!……なんだぁ」
 つくしや類と同じく笑いさざめく人々の声。
 「世紀の経済界ビックカップルとか当時騒がれていたのに……、へぇ」
 「やっぱ政略結婚って噂本当だったのかもね。でも、あたしは嬉しいかも」
 「あははは!道明寺司がフリーになったからって、どうせすぐにまた違う大財閥のご令嬢かなんかと婚約しちゃうに決まってるジャン」





 「………お待たせしました」
 その主を彷彿させるような無味無乾燥な声音の秘書の声に、フッと社交辞令の笑みを浮かべ彰が立ち上がる。
 「いえ、突然ご予定を空けていただいたのはこちらですから」
 黙礼する秘書が脇にずれ、…本日の主役、彰が面会を求めた相手が現れる。
 彰でさえどうかすれば気圧されかねない、威風堂々としたカリスマとオーラを兼ね備えた男。
 「お久しぶりです」
 「ええ、本当ですね。あなたがNYに渡米されて以来だから、彼此何年になるかな。道明寺さん」





◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ





↓ランキングの協力もよろしくです♪
ブログランキング・にほんブログ村へ 💛 
いつも応援ありがとうございます^^!

web拍手 by FC2













8章完

いよいよ、次回から最終章です。
なにげに、こ茶子のお話の中でももっとも長期連載になったこのお話。
単純に1章の類が思い浮かんで、パパッと構想したお話がここまで長編に^^;;
100話くらいでと考えていたのが、あれよあれよと400話超え!
後長くても70~80話のお付き合いになるかと思います(それでも長いか^^;)ので、どうぞ最後までお付き合いくださいませm_ _m


関連記事
総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【昏い夜を抜けて415】へ
  • 【昏い夜を抜けて417】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【昏い夜を抜けて415】へ
  • 【昏い夜を抜けて417】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク