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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第八章 開花③

昏い夜を抜けて410

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 「あなたは七生叔母さまを捨てるべきではなかった」
 「………」
 「あるいは、親に定められた許嫁だった母を結局選ぶつもりだったのなら、七生叔母様に手を伸ばすべきではなかったんですよ」
 どっちつかず、未練を捨てきれず、一度は別れた学生時代の恋人と再会した…それがよもや、自分の生まれながらの許嫁である女の姉妹として再び彼の前に現れたのはどんな運命の皮肉だったというのだろう。
 あっという間に燃え上がった炎。
 好きで別れたわけではなかった。
 だが、馨もまた生まれながらの花沢家の跡取りとしての自覚を幼い頃から教育され、身につけていた。
 志保子との結婚…高階家の娘との『嫡子』に『花沢』を継がせる。
 それは息をすること以上に、自然に育まれた義務感で。
 「……七生が高階の娘だとわかっていたら」
 だったら、どうなっていたというのだろうか。
 元々、認知や養育費は払われていたようだったが、戸籍にさえ入れられていない存在の娘だったというのに。
 「どうにもなっていなかったでしょうね。祖母が許したとも思えない。元々、叔母様が内縁の妻の子だったにしろ、正式な高階の子として認められていなかったのは政治家一族だったお祖母様の強権でしょ?あのお祖父様でさえ、お祖母様には遠慮していらっしゃいますからね」
 『高階』の子でなければ、ならなかったのだ。
 たった一夜の過ちが、二人の女の人生を狂わせ、馨自身の心も切り裂いた。
 その苦悩の中に、二人のそれぞれの女から生まれた息子たちの存在を含んでいないのは、彼もまた一人の身勝手な人間にすぎなかったからなのか。
 今更、そんな父親の冷酷や不完全さを類は恨もうとは思わない。
 すでにもう遥か過去、そんな両親にありもしないものを求めることは、幼い頃に諦めてしまった…見限った。
 今はもう、彼らに何の期待も…愛着もないのだから、お互いさまのことなのかもしれない。
 「…結果、母は流産し、叔母様は彰を出産した」
 「………」
 「彰をいったん他家の養子に出したのは、罪悪感からですか?…それとも疑いを捨てきれなかったから?」
 「…どうだろうな」
 その真実を告げようとはさすがの馨にも思えない。
 そして、打しがれ10才も年をとったように思える父親を冷静に観察する類にも、それ以上の追い打ちをかける必要性を見いだせなかった。
 「お前が生まれる前の事情だ。…三田村か?」
 「あいつの優秀さは、あなたも認めるところでしょ?本来なら、俺の下になどつかず、自分自身がトップに立った方がよほど良い男ですからね」
 「…人には人の分がある」
 優秀であれば人の上に立てるわけではないのだ。
 生まれながらの分。
 天賦の才能。
 さまざまな才をもってしても、結局人の上に立つのはそうした人間たちを集め、上手く使うことができる人間に他ならない。
 人はそれをカリスマ、といい、F4と呼ばれる彼ら4人にそれを見る。
 「分、ね。まるでお母さんがおしゃるような言い方ですね」
 「………」
 二人の間に沈黙が落ちた。
 だが、今度口を開くのは馨の方だった。
 類が出てゆくのを認めるか、認めないか、その二つのうちの一つ。
 だが、どちらにせよ、類がどんなカードを持っていようと、人の心のすべてを理屈で縛りきれるものではない。
 花沢物産の社長として一大企業を背負う馨とは違う論理を持ち、過去の所業でその危うさを見せつけた女には道理は通じない。
 そしてそんな彼女の危うさが、今の馨の唯一の武器とは、我ながら情けないものだと馨は自嘲した。
 この息子の自分とはまた非なる冷徹と非情さはよくわかっている。
 それこそ、かつてはその無関心さを侮り、一度は跡取りとして不適格と見捨てた性質こそが、どんなに恐ろしいものであるものか、その一端をここ数ヶ月…類がつくしゆえに花沢を捨てようと画策し始めただろう時から、顕にしたことでなおさら、馨は類に執着せずにはいられなかった。
 「…お前なら、花沢をもっと大きく発展させることができるというのに」
 「それはどうでしょうね?…それにたとえ、俺が彰に勝って花沢の後継者の地位に返り咲いても、司が邪魔をするかもしれませんよ?」
 「…司君が?」
 虚をつかれたような父の顔が面白いと内心小さく笑い、頷く類の顔はいたずらを企む時そのままで、幼い頃を除いてほとんど一緒に暮らしたことのない父親にはそれがわかるはずもない。
 「忘れたんですか?司は…牧野を挟んだ俺のライバルですよ?」
 「まさか?まだ、司君は彼女に未練があるというのではないだろうな?」
 なぜ驚くのだろう。
 最近の司の動きを父は探ってはいないのだろうか?
 「もちろん大いにありますよ。そのための、T&Tだ。あんがい、司&つくしとかだったら、笑っちゃうけどあいつならありえるかもしれませんね」
 くくくと笑う息子がどこまで本気なのか。
 だが、馨は戯言と断じ、不愉快げに顔を顰める。
 「バカなことを。道明寺ほどの巨大財閥の跡取り息子…しかも鉄の女の一人息子が、たかだかたった一人の一般の女性のために、私情で動くとでも本気で言ってるのか?」
 「ええ」
 飄々と肩を竦める息子が冗談を言っているようには見えなかったが、それでも家のために恋人すら捨てた彼にはそんな男たちの戯言ととしか思えない所業が信じられなかった。
 それもどこかのボンクラ息子たちならばともかくとして、世間でも名だたる次代のリーダーとも目される青年たちなのだ。
 確かに、一般人でありながら普通では考えられない人脈を次々に築くような女性で、しかも、この目の前の自分ですら持て余し計り知れなかった息子を捕らえた女性なのだとしても。
 「今は司も本気ではないでしょうけれどね。十分、脅威にはなっているでしょ?」
 「…いくら道明寺だとて、うちと本気で戦ったらただではすむまい」
 「まあ、そうでしょうね。でも司なら、やりますよ。彼女を俺から解放するためなら」
 解放…この言葉の意味に果たして、馨が気づくだろうか。
 …そして、おそらく壁の向こうで聞いているだろう彰は?
 コソリとも物音はしないが、それでもそこに高階がいることを確信して、馨に気がつかれないように類はチラッとわずかに開けたままのドアへと視線を走らせた。
 「それならば、くれてやればいい!」
 「俺が離しませんよ」
 「お前がどうしようと、私が放り出してみせるッ」
 平行線だ。
 それはそうだろう。
 だが、切り札を持っているのは常に類だと示さなければこの勝負に勝つことはできない。
 何を傷つけても、誰を苦しめることになったとしても。
 どちらせよ、類にしても、馨にしても、そして彰にしても、選ぶのは常に自分自身なのだから。
 「俺のことはいいかげん、諦めてください。忘れればいい。つまらない妄執は捨てて、手に持っているもので満足されることだ。俺ではなく、彰で…」
 「より良い選択肢がわかっていて、そう簡単に諦められるはずがない!彰ではダメだ、お前ではなくてはッ!!」
 ガタンッ!!





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