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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第八章 開花③

昏い夜を抜けて406

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 「……ずいぶんな方向転換ですね」
 「………」
 正直、類も予想していなかった。
 確かに、以前は彼の伴侶選びに対して一定の理解を示していた父親だったが、それも類次第、花沢物産にそれ以上の利益をもたらすことを示せればのこと。
 だが、類がつくしの影響を受けるにつれ、彼の彼女への執着が増すにつれ、花沢物産から離れていったのを馨が嗅ぎつけ、確信した時―――――。
 『たとえお前が花沢物産を継ぐことがないにしても、とても自由にすることなどできない。お前にも花沢の力となるしかるべき女性を娶ってもらう。…そして、それが志保子やその他さまざまな我が家を支える者たちから、お前の愛する女性を守ることになるだろう』
 そう父が言い放ったのもまだ、記憶に新しい。
 「牧野ではダメだと、あなたはおっしゃいませんでしたか?」
 「………」
 「野心がない。俺を足がかりにしてでも、花沢を手に入れようとするくらいの気概がない。そんな女では認められない、違いましたか?」
 「…それを今もって、私は撤回するつもりは、もちろんない」
 「……」
 「だが…」
 馨が執務椅子から立ち上がり、部屋隅のミニバーへと歩み寄り、壁際のキャビネットの扉に手をかけた。
 格調高い家具一面には、グラスと彼愛飲のバーボンやスコッチ、ワイン等の酒類が並んでいる。
 「何か、飲むかね?」
 「いえ、けっこうです。すぐに失礼させていただきますから」
 取り付く島もないが、いまさらな親子関係だ。
 一つ頷くと、馨はグラスを取り出し、自分の為だけに氷を入れ、バーボンの瓶から琥珀色の液体をグラスへと注ぎ入れる。
 そのグラスを手に、今立ったばかりの執務椅子へと再び腰を下ろし、窓の外へと視線を移して酒を口に含む。
 「…だが、彼女の交友関係は大したものだ」
 「……」 
 「元々、彼女には力ある人間を惹きつける才能があったようだな?」
 それは、高校時代、F4と呼ばれる彼ら4人を惹きつけたことで、すでに証明していた。
 どんな人間でも受け入れられるような、彼らではなかったのだ。
 それなのに…、彼女はいとも容易く彼ら4人を魅惑した。
 「司君は言うに及ばす…、総二郎くん、あきら君、彼らともまだ友達だそうだね?」
 「……」
 「それに、お前だろう?彼女に有力者を次々に近づけているのは。…倉敷老から、牧野さんによろしく、と言われたよ」
 『よろしく』、その言葉の中には、どれくらいの意味合いが含まれているだろう。
 彼ら上流階級の人々の中では、いかに力のある人間たちと繋がりを持ち、人脈を広げるか、なのだ。
 究極的にはそのことに邁進して、出来うる限りの人脈を広げ、派閥を作り上げることが、魑魅魍魎とも言える世界の中で‘力を得る’ことと同意なのだと誰でも熟知していた。
 「今はまだ、彼女がどれほどの利益を我が家にもたらすことができるのかは、未知数であると言える。だが、少なくても、お前への楔になることは確かなことだろう」
 「……なるほど」
 父の思惑など、最初からわかっていたことだ。
 だが、どこまで譲歩するつもりなのか、見てみたかったのかもしれない。
 しかし、結局のところ、すべては茶番、詭弁にすぎなかった。
 「…餌で釣って、俺をがんじがらめにするつもりですね?」
 「………」
 「あなたが牧野を認める。確かに、それはかなりの影響力があることでしょう。……俺自身も、牧野を周囲に認めさせる為に奮起せざる得ない」
 「できないと言うつもりか?」
 先回りされた挑発にのって熱くなれるタチならば、さぞや父も本望だったろうと我ながら冷めた思考に苦笑を禁じえない。
 「できるか、できないか、で言えば、やるしかない。それだけかな」
 類の言葉に、馨が大きく頷き…かけた。
 「でも、それは俺が花沢に残る場合だけだ」
 「………なんだと?」
 言い出すことはわかっていた。
 だからこその提案だった。
 しかし、いま、この場面で…馨がたとえ限定的ではあっても、二人の関係を認めると言質したこの場での暴言に、馨が大きく目を見開いた。
 「さっき言ったでしょ?俺は東南アジアにはいかない。花沢を出ます」
 「馬鹿なッ!!」





 「こうして聞くと、つくしって顔が広いんだねぇ?」
 あの人でしょ、この人でしょ?と指折り数える滋の言葉に、つくしは曖昧に頷く。
 滋が数え上げるどの人物も大半が類によって引き合わされた人たちが、また違う人物を引き合わせてくれたという手合いで、そのどの人物も経済界では一廉ならぬ人たちだというのはある程度知っていたけれど。
 いずれも、非公式な場での知人だったのだ。
 司が片眉をあげるたび、滋が感心して歓声を上げるたびに、つくしの戸惑いが深まる。
 「…でも、顔が広いって言っても、顔を合わせたら挨拶する程度の人も多いし」
 「挨拶程度って、それが大事なんじゃない?あたしたちだって、関わる機会がなかったら、挨拶する切っ掛けを探して、知人を頼ったりするものね?」
 同意を求められた司が頷く。
 「ああ…、俺たちに阿る程度の雑魚ならともかく、同格の連中はそうそう自分から声をかけたりすることはねぇ。まず、知人になることだ。その点、お前の顔の広さは驚嘆に値するな」
 「………」
 「そんな顔しない!」
 どんな顔をしていたというのか、後ろから滋にどつかれ、危うく司の胸に飛び込みかける。
 とっさに突っ張った手で、なんとかそれを防いだものの、両手を広げて待っていたらしい司が、チッと舌打ちをした。
 「あ~、司ったら、つくしに抱きつきたかったんだ~」
 ギョッとつくしが司を振り仰ぐと、図星だったのか赤い顔に出くわした。
 目が合った司が、照れ隠しに滋を怒鳴りつける。
 「うるせぇっ!黙ってろ」
 「やだぁ~、司ったら赤くなっちゃって、図星~」
 「………ぜったいに、てめぇ、後でシメるからな」
 ぎゃあぎゃあ、わあわあ、狭い車内で両隣で騒ぎ立てられ、うるさいことこの上ない。
 …ひ~、勘弁してぇ、この人たち。
 「でもさ、司や倉敷のおじ様、それに他の人たちの気持ちよくわかるな」
 「え?」
 ひとしきり騒いで、ふと滋が思いついたように呟く。
 両耳を塞いだまま目を瞬かせるつくしに、ニッコリと笑い、「ね?」、というように滋が司を伺った。
 「みんなつくしのことが好きになる。つくしを知ると、信じられる人ってこういう人なんだな、って思える」
 「……滋さん?」
 「あたしたちに心にもなく媚びたり、おもねる人はたくさんいるけどさ、本気で向き合ってくれる人なんてそうそういないものなんだよね…」
 「………」
 「………」
 寂しそうな滋の顔は、普段の明るくて闊達な彼女とはまた別の彼女が覗いている。
 それは、おそらく司…や類も同じく抱えていた屈託なのだろう。
 「そういう人が一人でも傍にいてくれたら、なにが本当に大切で、正しいのかとか、間違ってることは間違ってるってわかる気がするんだよね」
 「滋さん」
 「ふん」
 なんと言ってよいのかわからず口ごもるつくしと、反論せずに、だが鼻を鳴らしただけでそっぽを向いた司。
 しんみりした空気が流れかけたが、滋が突然ガバッと顔をつくしへと近づけ、彼女の両手をとりギュ~ッツと握りしめた。
 「し、滋…さん?」
 キラキラキラキラ。
 異様に輝いている眼差しがちょっと怖い。
 「そうだ!つくしっ、NYに来てよッ!?」
 「………は?」
 「なんかさ、司に婚約破棄されちゃったし、花嫁修行っていうのももう飽き飽きしちゃったからさ。これからは滋ちゃん、一企業人としての明日を目指そうと一念発起しますッ!つくし、あたしの秘書として大河原においでよっ!?」
 「「はあッ?!」」





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