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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第八章 開花③

昏い夜を抜けて404

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 「…大丈夫?つくしぃ」
 「平気、ありがと、滋さん」
 滋から渡されたハンドタオルで、髪から滴り落ちるワインの水滴を拭い、引きつり笑いで司を睨みつける。
 「………悪かったよ」
 「まったくワインを吹き出すなんて、司ったらありぇなぁ~い」
 呆れた滋の言い分に、多少は申し訳なさそうだった司のこめかみに青筋が浮かび上がって、大の男でも怖じけてしまいそうな視線で滋を硬直させた。
 「ひっ」
 「…黙れ」
 が。
 「つくしぃ~、怖いよォ。司がいじめるぅ~」
 あっという間に立ち直って、つくしの背後に隠れて訴える様は懲りない子供そのままで、その度胸も大したものだとあらためてつくしも感心する。
 「…そう言えば、お前、倉敷会長と知り合いらしいな」
 「え?」
 「ええっ!そうなんだ?倉敷のおじ様って言ったら、ここ近年、日本にこもっちゃってあんまり海外に出てこないけど、気さくで楽しいおじいさんだよね?!」
 「…ああ、うん」
 ね?とキラキラした目で問いかけられて、やはり社交界は狭いんだな、と思う。
 遠く海外に在所する司や滋とも知り合いなのはともかくとして、つくしみたいな社交界の社の字とも縁のない人間との付き合いまでもが知られているとは。
 「楽しい…ね。あのじいさん、ガキの頃は何度か類の顔で挨拶くらいはしたことあったけど、道明寺のことは毛嫌いしてるからな」
 「え、毛嫌い?」
 あの温厚で、平衡感覚に優れた老人の人となりからは予想だにしない事情に、つくしが目を丸くする。
 「大河原とは仲良いよ~」
 「ふん、お前んとこはけっこう中道路線ってやつだし、言っちゃあなんだが日和見的方針で派手に躍進することもねぇが、どこいってもそれなりに上手くやってるだろう」
 「まあ、そうだよね。パパの性格もあるけど、大河原は昔から安定を第一に、あまりアグレッシブな企業戦略は取らないかなぁ。真逆に司のママがかなりのイケイケだもんねぇ~」
 …イケイケ。
 あの道明寺楓を称して『司のママ』にも恐れ入るが、滋の怖いもの知らずというか突拍子もない発言は本当に驚かされる。
 だからこそ、毛嫌いしているように見えていたケンモホロロな司を相手にも、それなりに会話を成立させていられるのだろうと感心半分呆れた。
 「確か、数年前に道明寺と合併の話がでたバーンス会長のとことも、そういうところが嫌だって物別れになっちゃったんだっけ?」
 「………ふん」
 不愉快そうだったが、否定をしない。
 仕事につかず、花嫁修業に専念しているということだったが、滋はかなり企業間の事情に明るいようだ。
 …滋さんならお似合いだと思うのに。
 「なんだよ?」
 「え?あ…ううん。倉敷会長、道明寺…あんたともあんまり仲良くないの?」
 「…まあ、蛙の子は帰るだったか?なんだかんだあったが、俺もけっきょく道明寺に入っちまってるし、反りが合わない親子でも、似たようなやり方で財閥を動かしてる同じ穴の狸だと毛嫌ってんじゃねぇの?」
 「………?、そ、そうなんだ」
 「………」
 「………」
 微妙な間が一同に流れる。
 怪訝な顔をしていた滋が目を瞬かせ首を傾げていたが、「あ」と声を上げる。
 そして両手をポンと小さく叩き合わせ、
 「ああ!なるほど、蛙の子は蛙かぁ!」
 「し、滋さん」
 …あえて指摘しなかったのに。
と、つくしが焦る。
 一瞬、発音の聞き取り間違いかと思っていたけれど、そのあとに連打できた言い間違え?ムジナとタヌキで確信した。
 だが、司も名の知れた企業人。
 恥をかかせないのが大人だと、学生時代とは異なりあえて目を瞑ったつくしの気遣いを、まったく空気を読まない滋が見事に台無しにする。
 「あはははは!司って、そんな澄ました顔して、あんがいお茶目な奴だったんだね。そのジョーク全然面白くないよ。それに、どっちかといえば、司もおばさまもタヌキっていうより、キツネだよね」





 類を見送り、高階が溜息を一つ。
 「…ごめんなさい、急にこんなところまで押しかけてきて」
 正直どう七生に顔向けすればいいのかと迷っていただけの高階が、ハッと振り返り否定する。
 「いや、俺のほうこそ、お前から連絡もらってたのは知ってたのに。忙しさにかまけて、時間をとるのを怠っていたよな?」
 「……」
 七生の微妙な顔が、高階の欺瞞を見透かしている。
 忙しかったのは主に、高階自身の進退の変化によるものだったが、それに付帯する婚約の事実は互いに見て見ぬ振りなどできない事情だというのに、逃げていたのは彼の方だ。
 花沢の実権を握ることを目指す以上、七生に対して誠実な関係を築くことなどもはや叶わぬことはわかりきったことだったのに、それでも思い切れない彼の卑劣さと未練がましさ。
 次に会った時こそ、七生から三行半を申し渡される時だという予感があったからこそ、簡単な伝言程度で彼女と連絡をとりわなかったのだ。
 「彰が忙しいことはわかってるから」
 「…ホント、ごめん」
 「ただ、あたしの方も、どうしても今日中に彰に会って話しておきたいことあったの。彰のメールでは羽田のホテルに泊まるって書いてあったけど、秘書の高木さんに聞いたら、こっちに戻ってきてるって教えてもらって…」
 門の脇、インターフォンから聞きなれた使用人の声が聞こえてくる。
 『……彰様、なにかございましたでしょうか?』
 おそらく類が帰ってきたことで、彰の帰宅に気がついたのだろう。
 「いや、すぐに戻る。ガレージだけ開けていおいて」
 『かしこまりました』
 そもそもこんな門前の真正面に車を駐車したままでは、使用人たちが戸惑ってもしかたがなかった。
 少しだけ考えて、邸の中に入れるのには躊躇する。
 だがさすがにこのまま七生を追い返すわけにもいかない。
 かといって、類が馨と会談する場で不在でいることもしたくなかった。
 …何を話すつもりだ。
 父は、類は。
 「悪い、ちょっとヤボ用があって。良かったら…」
 中へ…、そう言いかけた高階の言葉を遮り、七生が肩から下げたトートバックの中を探って一冊の雑誌を取り出す。
 週刊誌のようだったが、人気海外セレブの動向を特集した記事が前面に掲載されているもので…。
 その雑誌は、つい先日高階も取材を受けたルポライターの書いた記事。
 …そうだ、わからないはずがない。
 「これ、ヨーロッパの支社の担当者から送られてきたの。経済部の記事じゃなかったから、どこまで本当かは疑わしいっていうのはわかっていたんだけどね。…でも、近々婚約発表をされることは間違いないのよね?」
 それは、セリーヌ・ド・バルビエと…彰の交際に関しての取材記事だった。
 「なな…俺は」
 …何をいうことがあるというのだろう。
 「彰、今度こそ、別れましょう。…もうあたしは、あなたを待つことはできない。あなたにはあなたの道が、あたしにはあたしの道がある。それを言いに…あたしはここに来た。あたし、明日田舎に帰るつもりなの」
 高階の目を七生の強い眼差しが真っ直ぐに射抜く。
 「あたしも実家の農家を継ぐ。…お見合いをして、結婚するわ」





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2周年記念、本当におめでとう&お疲れ様でした。

七生さんが気になります。
今まではオリキャラにこんな気持ちになることなかったのに。
実家が農家なんですね。本当に別れちゃうのかな?
何より、恋人のことを本人からではなく週刊誌から知るって辛いね・・・・。
過去に私も、そんなことがありました。
インディーズバンドをやっていた人で、なので音楽雑誌でスケジュールを知るっていう。
忙しかったり裏事情もあり、ケータイやメアドも何度も変えたりして連絡を取るのも一苦労。
電話の声より、ラジオ番組の声を聴く回数が増え切なさ倍増。
でも、彼の成功を誰よりも信じている。そんな感じ。
結局上手くいかなかった。そんな過去を久しぶりに思い出しました。
決して結ばれることない恋。
花沢類が好きなのも、キャラクターが好きなのもあるんでしょうが自己投影してるのかもしれません。
30代後半、未だ独身の私。
たまに、「私も本当に好きになった人とは結ばれないのかな?」なんて思っちゃいます。

長くなりました。
そして、勝手な思い出話ごめんなさい。
七生ちゃんの幸せを祈りつつ、これからも応援しています。
猛暑続きですので、くれぐれもお体ご自愛ください(^_-)-☆

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