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「中・短編-」
Better Sweet Angel…9話完

Better Sweet Angel 07

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 昨日は実家から病院の呼び出しを受けて、そのまま患者につきっきりで徹夜だったという兄と用件だけを話し、飛び出すように後にしたBAR。
 早い時間の待ち合わせだったので、夏時間ということもあり、外に出てもまだ陽が残っていた。
 とはいえ、もう数十分もすれば、日は完全に沈み、夜の時間へと移行するのだろう。
 腕時計を覗き込み、婀娜な視線を投げ誘いかけてくる女たちの思惑に気がつかないふりで、ふと頭に浮かんだのは、兄の婚約者のことだった。
 つい一ヶ月前までは、誰のものでもなかった。
 親友の元カノ。
 それがなんだったというのか。
 その親友は彼女を忘れ去り、来年には結婚する。
 そして、置き捨てられた彼女もまた、来年には別の男の横で微笑むのだろうか。
 大して飲んではいないはずなのに、無性にやりきれなくなり、足早にその場を立ち去る。
 無意識に向かっていたのは、やはり気になっていたのだろう、行き慣れた道。
 高校時代、彼の親友もまたこの道を通って、普段は使わない自分の足で彼女に逢いに行ったんだろうか。
 たどり着いた団子屋。
 いつもはもっと早い時間にあがっているのに、気がつかれないように覗いたウィンドウの向こうには、まだ彼女の姿があった。
 少しだけ迷って、結局店の少し脇、帰宅する彼女が必ず通るだろう場所。
 そこのガードレールに腰を下ろして…、見上げる空は既に星が輝き東京にしては明るい。
 それでもさすがに、南の島や北海道など、片田舎で見上げるものとは雲泥の差だ。
 …連れて行ってやりてぇ。
 誰も乗せることがないタンデムシートに乗せ、二人でどこまでも。
 『やだよ、お尻が痛くなっちゃうもん』
 ところが言われそうなセリフがいとも容易く思いついて、総二郎は一人噴き出した。
 いやいや…、それとも彼と二人旅など、高校時代からよく言われた『触られるだけで妊娠させられるよ』、そんな風に断られることの方がありえそうか。
 …何言ってんだよ。この俺が、好きな女と二人で触るだけなんて、そんなもったいねぇことするわけねぇだろ。
 頭に回った酒が、そんな妙に素直な想いをカタチどって、泣き笑いになりそうな顔を片手で隠して俯く。
 …いまさらだ。
 いまさら。
 よもや実の兄から女を奪えるはずもない。
 臆病な男が言い訳をしている間に、彼女はさらに遠い手の届かないところへ。
 ふと指の間から女の足が見えて、そのまま顔を上げると、ちょうど今考えていた当の女の怪訝な顔。
 「……西門さん、いったい、あんた何やってるの?」
 「よう、つくしちゃん、久しぶり。元気だった?」





 「はい」
 「…サンキュー」
 渡された缶コーヒーを手に、そのままプルトップも開けずになんとなく手で弄ぶ。
 隣に腰を落としたつくしが、缶のプルトップに四苦八苦しているのを横目で見て、無言で手を差し出した。
 「……なに?」 
 「貸せよ。開けてやる」
 「あ…ありがとう、お願いします」
 渡されたプルトップはつくしの苦労にも関わらず、総二郎の手には簡単に開く。
 その途端、プシュッ~と音がして、ぷわぁんと甘い人工香料の匂いがたちあがった。
 「……何買ったんだよ、お前。不●家やネクター?うげぇ、すげぇ甘いッ」
 「ちょっと!何、人のジュース勝手に飲んでるのよッ」
 「いてっ」
 ゲィンと頭を殴られ呻いている間に、いつの間にか取り上げられた缶を覗いて、つくしが嘆いていた。
 「……ぶ~、半分も飲んじゃうなんてぇ」
 「そんなに飲んだわけねぇだろ。欲しいのなら、もう一本買ってやるよ」
 「いらないわよ!っていうか、それ最後の一本だったんだから!あんた責任もって、それ全部飲みなさいよ!!」
 「……この俺様を、たかがジュース一本で殴る女なんてお前くらいなもんだぜ」
 「そ、それは思わず…」
 さすがにジュース一本で殴ったのはやりすぎだったかと、反省したらしいつくしが、へへへへ、と気まずそうに笑った。
 「いいよ、それ、お前飲めよ」
 「………いらないわよ」
 ちょっと赤くなって缶を押し付けてくるのに、ピンときた。
 「なんだよ?間接キスが恥ずかしいのか?」
 「か、間接キスって、あんたは中学生かッ!?」
 「だったら、別にいいだろ?」
 そこまで言われてはつくしも押し付けきれなかったようで、かといって飲むこともできずに、口を開けたままのジュースを手に、持て余している。
 伏し目加減に俯いた彼女の瞼から伸びるまつ毛が、頬に影を落とす。
 そんな何気ない仕草に、総二郎の胸がドクリと音を立てた。
 そして、そんな彼の視線に、怪訝そうなつくしが上目遣いで顔を上げて彼を見る。
 ふいに、…本当に、それは衝動だった。
 「……お前」
 「え?」
 「司のことはもういいの?」
 「……いきなり何を言い出すのよ」
 突然のふいうちに目を見開いたつくしは、驚きを顔いっぱいに浮かべている。
 「いきなりもなにも、今から聞くぞって言い出すようなもんでもないだろ?」
 「まあ、そりゃそうだけど…」
 まるで腫れものにでも触れるように、あの日、つくしが司の婚約を知り大学を休んだ日から、互いの間での不文律だった。
 司と…つくしの間のことを、口に出さないこと。
 詮索しないこと。
 笑顔を取り戻した彼女は、もう過去にこだわってはいないように思えた。
 そんな日が来ることずっと、彼女のために願っていたというのに、いまはただ、それが憤しく悔しい。
 「お前、そんな女だったか?」
 「は?」
 突然何を言い出すのかと、キョトンとしていたつくしの顔が次の総二郎のセリフで固まって、険を帯びる。
 「たった…4年だぞ。たった4年で、駆け落ちまでしようとした男を捨てられるものなのかよ」
 「…捨てるって」
 「いつか思い出すかも知れない。それなのに、お前は奴のことを吹っ切るつもりなのか?」
 「…たった4年って。あんたにとってはそうなのかもしれないわね」
 吐き捨てるつくしの顔は怒りではなく、泣き出しそうに悲しそうだった。
 「司が思い出したらどうするつもりなんだよ」
 「…思い出すかな」
 「………。お前、あいつのことが好きだったんじゃねぇの?」
 「好きだったよ」
 好きだったよ。
 過去形。
 「じゃあ、なんで待っててやれねぇんだよ?あいつだったら、きっとお前を待ってた」
 根拠のない予測。
 だが、確かにあの親友だったのなら、逆の立場の時、そうしただろう。
 …いや、司の場合、牧野が憶えていようといまいと無理やり、突っ走るな。
 想定すること自体が無駄だった。
 そしてそもそも、今総二郎が彼女を責め立てているのは、司への友情からなどではなく…。
 「あんたにはわからないよ」
 「………」
 「一期一会で、女を取っ替え引っ替えしてるあんたには、絶対にわからない。あんたは誰かを本気で好きになったことなんてないんでしょ?誰かを本気で欲しいって思ったことはないの?」 
 それなのに、彼女の言葉が思わぬほど胸をついて、自分が売った喧嘩の反撃に頭に血が上った。
 「はん!そんなに簡単に捨てられるものなら、最初からいらねぇな。どうせ、代わりなんていくらでもあるもんなんだろ?」
 アルコールで鈍っていた理性が、単純に自分の気持ちを吐露させるのではなく、捻くれ曲がって、罪もない彼女へと八つ当たりをした。
 パチンッ。
 殴られた頬は熱を持って、衝撃を伝えていたけれど、少しも痛みを感じない。
 それはきっと、痛いのは殴られた自分ではなく、殴った彼女の方だからだ。
 「簡単なんかじゃないッ!ずっと…もしかしたら、あたしのことを思い出してくれるかもしれない。そんな馬鹿な期待を、もうやめようって何度も思った。あいつが…あたしを見つけてくれっこないなんて、もうずっと以前、4年も前にわかっていたことなのに。それなのに、ずっと、ずっと!!あたしは無様に、未練タラタラで…忘れられなくって、ずっと苦しかったッ。そうだよ、代わりのない恋なんて、夢物語なんだよ!」
 とっさに立ち去ろうとしたつくしの手首を、総二郎が掴む。
 「あたしはいったいあいつをどれくら待てば、許されるっていうわけ?4年で足らなくて、それじゃあ、5年?10年?それとも20年とか?あいつが結婚しても、子供ができて、孫ができて、幸せになっても、あたしはたった一人であいつを想っていろって?道明寺が好きで、あたしのことを忘れたわけじゃないんだから?いつか思い出して、戻ってきてくれるかもしれないんだからって?!一生思い出してくれないかもしれない人を、あたしは一体いつまでたった一人で待てばいいのよ?そんなの無理だよ。……あたしはそんなに強くない。一人でなんて生きたくない」
 「……牧野」
 「あたしは幸せになりたいの。たとえあいつがいなくても、それでもあたしなりの幸せを探したいッ!!」





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