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「中・短編-」
Better Sweet Angel…9話完

Better Sweet Angel 04

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 …俺もなにやってんだか。
 つくしと優紀が高校時代から世話になっている団子屋。
 ウィンドゥ越しに見る彼女は、いつも見る彼女とはまるで違う女のように総二郎の目に映った。
 明るく朗らかで、雑草のようなしぶとさを持つ彼女はずっと総二郎の親友。
 そして、彼の知らないパワーと世界を持った驚異と感嘆の象徴だった。
 だが彼女の人間的魅力にハマった自覚はあっても、けっして彼にとってつくしが『女』だったことは一度だってなかった。
 笑顔が可愛い。
 笑い声が楽しい。
 一緒にいる時間が心安く、彼女とフざけあっている時間がいつもの取り繕った自分ではなく素でいられる貴重な一時。
 けれど、今彼の関わらないところで笑っている彼女は、年相応の艶やかさと、花開いた大人の色香を持つ一人の魅力的な女性だということが強く胸に迫る。
 …どうして、いまさら。
 彼女にアプローチする機会などいくらでもあったはずなのに。
 …いつでも自分は。
 苦い思いにため息をつき、まるでこれじゃあストーカーじゃないかと自虐的に、目の前のコーヒーを一気に口に含んで飲み干した。
 「……あのぉ、お水のおかわりは」
 媚を含んだウェイトレスの声に顔をあげ、ニッコリと微笑み実のない愛想を振りまく。
 「ああ、ありがとう。水はいいから、コーヒーのおかわりお願いできる?」
 「は、はい。ただいま」
 色気漂う美男の甘い声音に周囲の羨望値が一気に高まり、その周囲だけ異様に密度の高い女性客たちばかりか、彼女の同僚たちの嫉妬の視線がキツく鋭くウェイトレスに集中する。
 「このカフェの子たちはみんな可愛いだけじゃなくって、よく気がつくよね。絶妙なタイミングでいつも声をかけてくれるから、嬉しいよ」
 「…そんなぁ」
 彼のそんなおべんちゃらに勇気を得たのか、目を潤ませ頬を紅潮させたウェイトレスが素早くカップを下げざま、総二郎のそばにアドレスを書いたメモをすべり込ませる。
 もちろん、そんなことは日常茶飯事で、正直今の彼はまったく興味の欠片もそそられなかったが、ニッコリ笑って卒なくそのメモを手に取った。
 そして周囲の視線を意識しつつ、そのカラフルな紙片を唇に軽く押し当て、チュッと音をたて勇気を出した彼女への酬いに、カフェ内に黄色い悲鳴と余計な不和を生じさせる。
 「…ふ」
 だがいつものとは違ったのは、ウェイトレスの期待値をあげただけで、それ以上の先を約束しなかったことだ。
 手に持ったメモも適当にポケットに突っ込んだけ。
 携帯電話のアドレス帳に登録するのすら、面倒で食指が動かない。
 その理由も実は、わかっていて気がつきたくないのかもしれなかった。
 戻した視線の先。
 さっきまで団子のケースの前に立っていたつくしと優紀の姿がない。
 外はそろそろ夕闇に包まれ始めて、和菓子の売れるような時間帯ではなくなり、バイトである彼女たち二人は仕事を終えたのだろう。
 しかし…。
 「16時半、か」
 まだいつもの終業時間よりも30分も早い。
 ふと流した視線の先、見慣れた男の姿が目に映り、ガタンと総二郎が椅子を立つ。
 …兄貴。





 「…綺麗~」
 海の見える波止場から眺める景色は、たいていの女がロマンチックだと好むシチュエーションだ。
 実のところあえて女の機嫌を気にして、この場へと足を運んだわけではなかった。
 高校時代、優紀と測ってデートを装い訪れた海の公園。
 …あの時は、牧野が俺を追いかけたんだっけな。
 もちろん、目的は彼…ではなく、一芝居打った総二郎の毒牙から優紀を守るという笑ってしまう友情による行動。
 ぎゃあぎゃあ騒ぐ背後の気配に、何度も笑って楽しんでいた思い出が蘇る。
 あの頃は良かった、なんて懐かしむつもりはなかった。
 純粋…とは言えなかったかもしれなかったが、当時の彼にとってつくしは物珍しく面白い女で。
 恋愛感情なんてもちろんなかったけれど、あの司や類を変えた彼女への感嘆と尊敬がそこにはあった。 
 あれからいろいろなことがあり、親友の司が彼女を忘れて…。
 いつからだっただろうか。
 人知れず泣いて、人前では変わらぬ笑顔で周囲を明るくさせる彼女の意気地と強さに惹かれて、自分が笑わせてやりたいと思うようになったのは。
 兄の言うとおり、誰も乗せたくはなかったバイクの後部座席を彼女の指定席にして。
 きっとあの鈍い女はそんな彼の気持ちをわかってなどいないのだろう。
 それでも良かった。
 けっして手を伸ばすつもりはなかったからだ。
 『司の女』
 『類の惚れてる女』
 『あきらが心惹かれている女』
 いつもそんな言い訳で、真正面からぶつかった事がなかった。
 『……更の二の舞か?』
 祥一郎の言葉が耳に蘇る。
 …ああ、そうさ。俺はいつまでたっても変われない。
 口先だけのおべんちゃらと、日々を刹那的に生きるだけで、いつまでも一人怯懦と卑劣さを自分に赦して。
 あの輝いて眩しい女を、自分の闇に引きずり込むことなどできようはずもない。
 それともそれさえも、自分の弱さの言い訳なのか。
 「西門くん、この後、どうする?あたし、少し疲れちゃった」
 期待と興奮、誇らしさで紅潮して艶めいた女の顔。
 見た目こそ煌びやかに飾り立て、甘い匂いを振りまき、オスを誘う食虫花。
 そんな没個性的な女たちを、気の向くままに食い散らす自分を嘲笑う。
 「…西門くん?」 
 「そうだね、ミキちゃんが疲れちゃったなら、少し休憩してゆこうか。
 腕に絡ませた赤い爪が、まるで赤いシミのように見える。
 こうして行きずりの女に声をかけられ、声をかけて…一夜の夢でせめてもの無聊を慰めようか。
 そうすればこの胸の痛みもいずれは癒されて、叶わぬ夢も眩しすぎる女の面影も薄れ、ただ流されるように生きていけばいい。
 「行こ、ミキちゃん」
 「うん」
 ♦♫♦・*:..。♦♫♦*゚¨゚゚・*:..。♦、♦♫♦・*:..。♦♫♦*゚¨゚゚・*:..。♦、
 ビクッ。
 ただ一つだけ、特別に設定してあった着信音が鳴り響く。
 彼女の着信にだけ、こんな甘く切ない曲を設定してあるのだと、けっして本人にだけは知られたくない。
 「………」
 「あれ?この曲…、聞いたことがある。凄い素敵だよね、えっと…なんだっけ、確か…」
 気づいた女が、小さく歓声をあげた。 
 「…ごめん、ミキちゃん、俺やっぱり帰るわ」
 「え?」
 「…これ、タクシー代。悪いけど急用を思い出したから、送ってやれないけど気をつけて」
 目を見開き驚く女の絡んだ腕を振り払い、踵を返す。
 「ちょっと!西門くんっ!!?」
 怒って叫ぶ女の声も、先程までの諦観もすでに彼の脳裏から消え失せている。
 手にとった携帯のタッチスクリーンに表示された名前を確認などしなくても、もちろん誰からの電話かなんてわかっていた。
 それでも…。
 その名を改めて確かめ、グッと握り締める。
 ♦♫♦・*:..。♦♫♦*゚¨゚゚・*:..。♦、♦♫♦・*:..。♦♫♦*゚¨゚゚・*:..。♦
 『…あ、西門さん?あたし、牧野』 
 期待した声が期待どおりに流れ、けれど…。





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間違い報告

『二の前』ではなく、正しくは『二の舞』。
誤字かと思ってましたが、ずっと『二の前』と書かれてるので、認識間違いされてますね。
文章中、結構使われる言葉のようなので、正確な方で使用下さい
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

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