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愛してるって言ってくれ…8話完

愛してるって言ってくれ03

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 「あ!あった、これだ」
 すぐ横に立った交通課のミナが、手に持った雑誌を掲げて歓声を上げる。
 いくら一時期教育係をしていたとは言え、課が違うというのにこうも頻繁に顔を出されては、つくしとしても頭が痛い。
 「ミナちゃん、またお茶汲みに逆戻りさせられても知らないわよ…」
 「えっ!そうしたら、牧野先輩の助手になれますかね!?」
 「……いや、あたしも刑事課ではまだ新米だから」
 それ以前に、交通課で使い物にならなくてお茶汲みに逆戻りした人間が、刑事課に配属されるはずもないだろう。
 「で?ミナちゃん、何があったわけ?」
 ちょうど取調室から出てきた同僚の高瀬が声をかけてくる。
 「この人です、この人!」
 「ちょっ」
 呼び止める間もなく、ミナが高瀬の傍らまで飛んでゆく。
 高校を卒業してから警察学校に入り、警察官になったミナはまだ23才。
 つくしと同様童顔で、さらに背丈も低いので未成年に見られがちだったが、これでもキッチリお茶汲みを3年間勤め上げ、今年見事!?交通課に配属された女性警察官だ。
 本人はお茶汲み時代、教育係だったつくしのいる刑事課を希望していたが、大卒でキャリア組※でこそなかったけれど、大学時代の学業成績はもちろんのこと、警察学校時代も優秀さを発揮し、異例の出世で刑事課に配属されたつくしのようにはいくはずもない。
 それでも同じ所轄にいることを良いことに、こうして何かとつくしの元へと顔を出しては、世間話をしてゆく。
 本来ならば叱咤されてもおかしくないところを、本人の明るく人懐っこい性格と…各管轄に多い友人たちを通じてか、意外にも情報通なところをそれなりに買われて黙認されている。
 「これって、アレか。日本経済界若手の4大プリンスとか言われてる」
 「はい、美作あきらさんです」
 「………」
 「なになに、美作あきら、28才。英徳大学経済学部出身。美作商事の社長一族出身の御曹司で、大学卒業後3年間をイギリスで、NYで2年間を過ごして副支社長を歴任し、昨年東京に戻り…現在副社長。学生時代は道明寺司氏、花沢類氏、西門総二郎氏と…」
 高瀬が雑誌を読み上げる声を聞くともなく聞きながら、つくしの記憶は彼らと奇しくも関わることになった高校時代に遡ってゆく。
 …ホント、ありえなかったよね。
 母親の見栄から始まった身の丈に合わないセレブ校への入学。
 息を潜めて送っていた高校生活の1年間。
 司と出会い、彼の不況を買って女ながらに赤札を貼られた。
 壮絶なイジメ。
 その中で初めて経験した初恋。
 学園の支配者であり、つくしの高校生活を一転させる元凶になった司からの告白と彼への裏切り。
 …今思うと、すっごい濃い半年。
 あの頃、多少なりとも司に惹かれていたところがあったと大人になった今なら素直に認められたが、当時は類への淡い恋心と憧れの方が強くて、鈍いつくしには尚更自覚するができなかった。
 そのことが告白してくれた司への裏切りに繋がり、結局3on3のバスケットボール勝負の後、司がNYへと旅立ち、彼との関係は途切れた。
 …ま、今考えればそれで良かったんだと思うけど。
 司には申し訳ないが、つくし自身玉の輿など興味はなかったし、彼にしてみても学生時代ならともかくとして、大人になればもつくしとの恋愛にうつつを抜かすことなど許されない立場だっただろう。
 御曹司の学生時代の美しい思い出としては悪くない展開になったかもしれなかったが、思い出にされる方としてはとんでもないことだったし、とてもじゃないがその思い出の材料にされるには、つくしはリアリスト過ぎてこうして噂に聞くだけでも雲の上の存在だったのだと改めて思う。
 …美作さんかぁ。
 彼ともそういえば、あれからほとんど関わることもなかった。
 静を忘れきれなかった類とはあの後結局付き合うことはなかったし、それよりもつくしの父・晴男の転落で英徳を中退せざる得ず、正直あの頃のつくしは、恋愛がどうのと言っている場合ではなかった。
 そして10年。
 英徳を去れば、住む世界の違う彼らとの接点がなくなるのは当然のことで、落ち着いた先の公立高校を卒業し、そのまま国立の大学へと進んで、安定性と正義感との兼ね合いで選んだ現在の職業・警察官としての今があった。
 彼らとのことは今思えば夢だったのかとさえ思うことがある。
 先日、ひょんなことからあきらと再会することがなかったら、まさに夢のまま。
 「へぇ、こんなイケメンですげぇスペック持ってる奴なのに、まだ独身で彼女もいないって?」
 「…うーん、でも、この間、カノジョとドライブしてましたよ?」
 「あ?」
 「橋のど真ん中ですっごい高級車を駐禁してて、あたしと牧野先輩が注意したんですよね?」
 「ひゅぅ~、有名人じゃん!俺も俳優の○○が不倫相手の○○んとこ偲んでゆくとこに出くわして、職質したことあるけどよ」
 「あたしなんて、某アイドルの○○がこの間、信号待ちの車にオカマ掘っちゃって、呼ばれて調書とりましたよ!」 
 「すげぇ!」
 「……」
 なにげに、長身で渋い硬派のハンサム男である高瀬はミーハーで、輪をかけたミーハーであるミナとは気が合うらしく、よく意気投合していた。
 つくしにしてみれば、これだけ気があって、互いに独身で恋人なしのフリーなのだから、いっそ付き合ってしまえば、と思うのだが、それをミナに提案すると生ぬるい目で呆れたように見られてしまう。
 その生ぬるい目の意味はわからなかったけれど、おそらく高瀬にも彼女の一人でもできれば、やたらと同僚のつくしを暇つぶしに呑みやらカラオケに誘ったり、休日におしかけてくることもなくなって、面倒もなくなるものと思われ。
 …いい年して、友達と遊んでる場合じゃないでしょうに。
 警察官も堅い職業の例にもれず、職場結婚でもなければ中々縁遠かった。
 とはいえ、彼氏がいないのはつくしも同じなのだから、人のことを言えないのは確かで。
 「でも不倫といえば、美作さんが連れてたカノジョもけっこう年上っぽかったですよね」
 「ほぉ、副社長は年上好みってか?」
 「…というか、たぶん、あれは」
 「ミナちゃん!!」
 とっさに話をブッた切ったのは、それでも高校生時代の『よしみ』という奴だろうか。
 …まったく、よくもこれまで変な噂を立てられなかったものだよ。
 噂というか、本当のことと言うか。
 まあ、それも美作家の意向というやつでもみ消してきたのかもしれないと、すぐに思い当たって庇ってやる愚を今更ながらに後悔する。
 「どうしたんです?先輩。そんな大きな声出して…」
 「なんだよ、牧野。まさかお前まで、F4だかなんだかこういう奴らのファンだとか言うんじゃねぇだろうな」
 「……いや、ほら、職務上で知り得た秘密をね、いくら同僚とはいえペラペラ喋ったりするのはさ。公私混同というか、職務違反というか」
 「何言ってるんですか。牧野さんだって、この間、女子プロレスラーの新庄夏希が酔っ払って喧嘩相手の男をノシて調書取る時、非番を変わってあげて野々村さんに変わってもらったそうじゃないですか」
 思わぬことに、つくしがギョッとミナを見る。
 …ど、どうして課も違うこの子がそんなこと知ってるの?
 いくらしょっちゅう顔を出しているとはいえ、さすがにあの時は疚しくて、取調室に入る前の野々村を隣の取調室に連れ込んで交渉したのだ。
 「どうして知ってるんだって、顔をされてますね?野々瀬さんの彼女は、交通課の津川婦警なんですよ。津川さんと非番が合わなくってコンサートに行けないってさんざん愚痴ってたのに、急に野々瀬さんが行けることになったって凄い喜んでましたもん」
 高瀬がポンと手を打ち合わせる。
 「そう言えば、牧野、今月ってかなり呼び出し多くてヘロってたくせに、野々瀬の非番変わってやってる日があったな。お前、新庄真希の熱烈なファンだもんなぁ」
 …み、見透かされてる。
 「……」
 「うわあ、すげぇ公私混同~」
 「ですよねぇ~」 
 「………ミナちゃん、あんた、この間、あたしは半休だったのに、相談があるからとか言ってパトロールの時付き合ってあげたあたしへの恩を忘れたわけ?」
 あきらと再会した時のことだ。
 つい恨みがましく声音がオドロオドロしくなる。
 それにはバツが悪そうに、あ、と口元に手を当て、可愛らしくミナが首を竦めた。
 「はは、牧野先輩にはいつもいつも大変お世話になっておりますです、はい」




※キャリア組…日本の国家公務員試験の上級甲種、またはⅠ種に合格し、中央省庁に幹部候補生として採用された、国家公務員。





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