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愛してるって言ってくれ…8話完

愛してるって言ってくれ01

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愛してるって言ってくれ

 CPはあきら×つくし。
 原作9巻、類とのことで3on3の勝負の後、司ががNYに旅立ち、結局類とも上手くいかず、3年生になる前につくしが家庭の経済事情で英徳を中退して10年設定のラブコメ。
 その後、司とはもちろんのこと、類や総二郎、あきらともまったく付き合いがなくなり、互いに音信不通状態。
 司と類は和解していて、それぞれに、大企業の2世として活躍していて、総二郎とあきら以外は海外生活。
 ちなみに、10話程度の中編のために、ここでは、司や類の葛藤についてはまったく無視でいきます!
**********





 「お水のおかわりはいかがですか?」
 大学生くらいだろうか、目をハートにしたウェイトレスに声をかけられるのは、これで2回目。
 窓際から離れて、奥まったこの席に座ってかれこれ30分。
 手もつけていない水のおかわりどころか、手元のタンブラーグラスに注がれたアイスコーヒーは、まだ半分も飲み干していない。
 いつも遅れがちのツレもそろそろ現れる頃だが、もしかしたら今夜の予定はキャンセルになるかもしれないと予感があった。
 「ありがとう、大丈夫だよ」
 サングラスを外し、あえて視線を合わせて微笑みかけると、彼にしてみれば今ひとつ乳臭く感じて触手の伸びないウェイトレスは頬を染め、愛想よく立ち去ってゆく。
 …どうするか。
 ブー、ブー、ブー。
 案の定、テーブルの上に置いておいたスマートフォンのバイブが震えて、画面の着信表示をみれば、『M』の文字。
 3か月前、さるチャリティ・パーティの場で出会った有閑マダム…何人目かの『M』イニシャルだった。
 「オレだよ、美咲さん」
 『あきら君?もしかしなくても、待たせちゃってるよね』
 あえて作らなくても、柔らかな声音が作れる。
 正直、とても暇とは言えない身の上の彼にしてみれば、たとえ30分とはいえ、待たされるのは嬉しくはないのは当然のことだ。
 けれど、それは相手も承知している上でのこと。
 『いつも本当に、ごめんなさい。重責を担っている美作商事の副社長を待たせちゃってるなんて…』
 「いいよ。美咲さんを待つためならいくらでもスケジュールを調整するし、待ちたいんだよ」
 甘く囁けば、『あきらくぅん』と鼻に抜けたような甘え声が返る。
 『あのね……み…き?ボソボソ、ボソ……あ、ちょっと待ってくださるかしら?』
 突然他人行儀になった言葉尻と、遠く携帯が拾った男の声に、待ち合わせからだいぶ遅れて相手があきらに連絡を入れてきた理由を瞬時に悟る。
 …ま、これくらいのことは慣れたものだし。
 不倫…そういった関係を学生時代から繰り返してきた彼にしてみれば、特に珍しい事態ではなかった。
 『ぅ……ボソ……ぃ。お待たせして申し訳ありません』
 「旦那さん?」
 『ええ、そうなんですのよ。商用で出かけていた主人が、急な予定変更で帰宅致しまして』
 その声音の中には、礼儀正しい親しみがあるだけで、いつもの奔放であきらに臆面もなく甘えてしなだれる淫らな女の片鱗もなかった。
 「…そうかぁ、残念だけど仕方ないね。時間がとれるようになったら、また連絡くれるよね」
 『ええ…では、また』
「またね、美咲さん」
 別れの言葉にだけ、わずかな情が含まれていただろうか。
 けれど、結局相手にとっても、あきらと持つ時間は、仕事人間の夫が不在の間のアバンチュールのひと時にすぎないことは互いにわかっている。
 …あれで、旦那に惚れてるんだから、女って怖ぇかも。
 純愛を気取っていた子供の頃とは違って、今のあきらはありのままに受け止めている。
 「…さて、すっぽかされたしどうするか」
 氷が溶け出し、すっかり汗をかいてしまったグラスの側面の水滴を指先で撫でて、片手に持ったスマートフォンの履歴を眺めて思案する。
 「総二郎は…昨日から京都だっけ」
 そうでなくても、他の親友たちに比べれば頻繁に会っている方だとはいえ、学生時代と異なり急に誘ったとしても、そうそう都合を合わせることは難しいだろう。
 類は3年前から転勤でフランスだったし、司も高校生の時にNYに行ったまま日本には戻ってきていない。
 …俺ってもしかして、けっこう寂しい奴?
 いつの間にか外の景色はすっかり日が沈み、夜の時間へと移行していた。
 ちらほらと埋まりだした席に座った女たちが、まるで誘蛾灯に群れる色とりどりの羽を震わせる蝶や蛾のように、彼へと誘惑の視線を投げかけ始めている。
 …どうせ今から仕事に戻るのも億劫だし。
 勤勉な彼の第一秘書の永松はきっとまだ社内にいるだろうから、彼の帰社は大歓迎だろうが、とてもその気にはなれない。
 ここのところの激務で、気が抜けないことが多かった。
 いつでもスタイリッシュであくせくするところを見せない彼だから、たいていの世間の人間は恵まれた男だと羨むばかりで、あきらのハードな毎日を察することがない。
 確かに女と会う時間はそれなりにとっているものの、せいぜい1週~2週に一度のことで、その上不倫という関係上定期的なものではなかったし、学生時代のように無軌道な生活を送っているわけではなかった。
 のべつくまなく複数の女と付き合っているということもないのだ。
 平均睡眠4時間。
 週休2日など夢のまた夢。
 会社の執務室で夜を明かして、帰宅は午前様になることも多く、この年齢の男にしてはきわめてストイックな生活を送ってるものだと自分でも感心することも少なくない。
  
 …やっぱり久しぶりにBARで呑むか。
 そこで知り合った女と、今夜限りの一夜の夢を見るのも悪くないかもしれない。
 「…ん?」
 ブー、ブー、ブー。
 再び入ってきた着信の名前を確認し…、ため息一つ。
 「俺、………は?うちのキッチンが火事になったぁ?!」





 「だってね、だってね。倉坂さんの奥様が、ホームパーティで披露したら、それはそれは大好評だったって言うんだもの」 
 呆れてキッチンを眺め回すあきらの後ろで、目を潤ませ、両手を祈るカタチで胸元で組んで涙ながらに訴える母親は、余裕であきらの姉で通るが、恐ろしいことに軽く不惑を超えてそろそろ五十路も近い。
 「…だからって、いきなりズブの素人がフランベはないだろう」
 「コツは聞いたのよ!火災警報器の下ではやらない。可燃性の物は遠ざける。炎が上がったら、慌てないで、即蓋をするって」
 「で?それで、どうしてこうなっちゃうわけ?」
 ため息混じりに、焦げて煤けたキッチンカウンターを見下ろす。
 少し離れたところでは、申し訳なさそうなシェフや使用人たちが控えているが、物柔らかげでも言いだしたら断固として他人のいうことなど聞かない母を止められるものなどいなかっただろう。
 「スマホで撮ろうと思ってぇ~」
 「は?」
 「ほら、絵夢と芽夢のお誕生日のお菓子作りの予行練習だったんだけど、次回も絶対に上手くいくとは限らないでしょ?」
 「……」
 「これはもう、ぜひとも証拠を残さなきゃって目を離したら、燃えてなの」
 …そうじゃないだろう。
 チラッと目に入った母親の長い髪の毛先の縮れ具合に額を抑えた。
 「…髪が?」
 「え?」
 「先っぽ焦げてるよ」
 「……えへ」
 舌を出してウィンクする母は、年齢と自分の実母であることを考えなければ文句なく可愛かったが、そんな問題ではなかった。
 おそらく長い髪に火がつきパニックになったあげくに、周囲のものにまで波及したのだろう。
 …みんな泡食っただろうな。
 自業自得の母はもちろんのこと、使用人たちの恐怖は察してあまりある。
 もちろん、大事にいたらなかったからこそ思えることだ。
 「………頼むからさ、勘弁して。オヤジの留守中に母さんが怪我でもしてたら、まず間違いなく俺は明日まで生かしておいてもら
えないだろうからさ」



※フランベ…調理の最後にアルコール度数の高い酒をフライパンの中に落とし、一気にアルコール分を飛ばす調理法。見た目炎がボウボウ燃えていて、派手な演出効果アリ。




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