FC2ブログ

「昏い夜を抜けて…全483話完」
第八章 開花②

昏い夜を抜けて391

 ←昏い夜を抜けて390 →昏い夜を抜けて392
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 類と手を繋ぎ、車の停めてあった駅前デパート地下の駐車場へと辿りつく。
 大した距離ではなかったけれど、夏の暑い時期だというのにひんやりとした手に握られて歩く道行は照れ臭くも、ただ歩いているだけなのに浮き足立つように楽しかった。
 …なんで、いまさら。
 何度となくこうやって手を繋いで歩いた。
 彼と再会してともに過ごした月日は、高校時代の一時淡い片思いをしていた日々を遠く追い越し、気がつけばもう一年余りにもなるというのに。
 …あの時もこんなふうに手を繋いで歩くことがあるなんて思ってなかったよね。
 ましてや、再会してしょっぱなのあの展開で、こんな穏やかな時間、幸せを感じることができる時間を類と過ごせるようになれるなんて間違っても思っていなかった。
 人の縁の不思議を思う。
 「…何考えてるの?」
 「え?…あ、ううん。今日は楽しかったな、って思って」
 「カラオケボックス?」
 「ええ?」
 「それとも流し素麺??…そんなに面白かったなら、俺も行きたかったな」
 「……」
 つまらなそうに言われて、つくしは曖昧に微笑む。
 …だって、類とこうやってただ歩いたり、お土産を選んだりする時間が楽しかっただなんて、なんだか恥ずかしくて言えないよ。
 昨日、今日ですっかり見慣れたお仕着せの運転手が、類とつくしを認めて早々、いかにもな高級外車の運転席から降りて会釈する。
 …混んでるからしょうがないけど、隣に車を停めている人、勇気あるな。
 少し擦っただけでも、修理代で何十万だ。
 現に反対隣には車が停まっていなかった。
 「おかえりなさいませ」
 「ただいま」
 「…ただいまです。迎えに来ていただいたばかりか、お待たせしてしまって、すいません」
 
 「いいえ」
 つくしの丁寧な礼に、初老の運転手も顔を綻ばせた。
 社交辞令ではない笑み。
 「…あの、こちらの方には珍しいものではないでしょうけど」
 前置きをして、先ほどお土産屋で買った小さな菓子の箱を類が手に持った紙袋から取り出し運転手に渡す。
 だが、運転手の方は恐縮して受け取らない。
 「いえ、お気遣いなく。これが私の仕事ですから」
 「でも、私たちがのんびり物見遊山したり、食事したりしている間、元木さんにはずっと待っていていただいたり、無茶な時間とかにも融通を利かせてもらったりもしてますよね?」
 「……いえ」
 困った顔は肯定はしていなかったが、東京での類の行動パターンを考えれば、きっとつくしが高松を来訪する前にもそんなことがあったに違いない。
 もっとも四国に来訪した当初、類を送迎していた運転手は別の人物で、命に関わる怪我ではなかったけれど、やはり三田村同様まだ入院していた。
 「迷惑でなかったら、もらってやって?言いだしたら聞かないから、彼女」
 「ありがとうございます」
 直接の雇い主である類に言われれば、遠慮しつつも目尻を下げ運転手がつくしの差し出す土産を受け取った。
 車に乗るのかと、つくしはドアの後部座席で待ち構えたのだが。
 「…こちらを」
 「ありがと。じゃあ、あと頼むよ」
 運転手から車のキーを受け取って頷き合い、類が周囲にサッと視線を走らせ、誰かに向かって頷きかけるのにつくしも気がついた。
 …北村さんたちだ。
 だが、それも見慣れた類のSPたちで、おそらく姿は見えないが、つくし付きのSPの堀田もどこかに控えているのだろう。
 …後で堀田さんにも、いつもお世話になってるお礼にお土産を渡さなきゃ。
 そんなことをつくしが思っていると、類が渡されたキーで、乗ってきた車の隣に停まっている国産車のロックを開ける。
 ガチャッ。
 「…え?」
 そして手に持っていた大量の紙袋を後部座席に積み込み、助手席を類自らが開けて、つくしを中へ乗るようにと促す。
 「牧野、こっちに乗って」
 「え?」
 「ここからは、俺が運転するから、鳴門まで二人っきりでドライブしよ?」
 「ええっ!?」





 倒していたシートを戻して寝そべっていた体を起こすと、類がシートベルトを装着する。
 それを横目で見ながら助手席のつくしも類に習い、シートを戻してシートベルトを止めつつ、運転席の類へとうろんな眼差しを向けた。
 「なんか、すげぇ胡散臭そうなんですけど?」
 「そりゃあね、こんな不審なことさせられれば、誰だってそうだわよ…って言うか、ねぇ、まさか本気で自分で運転するつもりじゃないよね?」
 「うん?なんで?前にも運転したことなかった?」
 「………」
 あるから言っているのに、決まっている。
 だいぶ期間が空いていて、それ以来彼の運転する車に乗る機会がまったくなかったから、ある意味喉元すぎれば忘れるという感じで恐怖感は薄れていたが、それでもあの時受けて衝撃は忘れられない。
 …なんかもう二度と、この人の運転する車に乗りたくないと思ったような。
 縦のものも横にしない司でさえ、自分でハンドルを握ることもままあるようというのに、この1年という付き合いの中でも、類は常に運転手付きの車で移動して、つくしとの付き合いの中でもたった一度しか自分で運転したことのない男なのだ。
 運転免許は持ってはいても、彼が自前で運転するという違和感は否めない。
 「大型トラックの免許も持ってるよ」
 「ええっ!?本当?」
 「…ウソ」
 にっこり平然と返され、ピクピクとこめかみが引き攣る。
 「あたし、これだけあんたに騙され続けて、どうしてすぐあんたを信じちゃうんだろう」
 「…愛?」
 「殴るわよ」
 我ながら声がおどろおどろしい。
 「本当のことなのに」
 ぼやく言葉に赤面しかけて、無視をする。
 いくら本当のことでも、当の本人に言われたいことではない。
 …この人、恥ずかしくないわけ?
 相変わらず日本人とは思えない人種だと、互いの間に暗くて長い川が流れている気さえする。
 「…あんたたちがトラックだのなんだの運転するなんて、普通に考えてそりゃあありえないわよね」
 「ん~。子供の頃、司が重機の運転をしてみたいってダダこねたことがあるから、あいつならトラックの免許も持ってるかも?」
 「……いや、たぶん、それはないと思う」
 「俺もそう思うよ」
 「……」
 なにげにカッコつけしいの男だ。
 むしろ、必要があれば類の方がこだわりがないだろう。
 「さて、じゃあ、そろそろ行きますか」
 「あ、…うん」
 何を待っていたのか、類はと言えば、妙にのんびりとシートに座り込み、走り去ってゆく自分の高級車の後ろ姿を見送ってからハンドルを握り出す。
 「せっかく元木さんが待っててくれたのに、なんで、わざわざこの車に乗り換えたの?」
 「二人でドライブしたかったから?」
 …なんで、疑問形なのよ。
 「それに車に乗ったとたん、少し休もうとか言って、どうしてデパートの地下駐車場に停めた車の中で寝転がらなきゃいけないわけ?」
 「なんか逃亡者みたいで楽しいよね」
 「はあぁ??」
 つくしは、やっぱりこの男と自分の間には、暗くて深~い川が流れているとあらためて思った。


※類が過去、このお話中に運転を自らしていたことを忘れていた為に、修正いたしました(いや、なんとなくしてた気がしてたんですが、その場面を発見できず…)。ご指摘くださった方、ありがとうございましたm_ _m





◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ





↓ランキングの協力もよろしくです♪
ブログランキング・にほんブログ村へ 💛 
いつも応援ありがとうございます^^!

web拍手 by FC2






関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【昏い夜を抜けて390】へ
  • 【昏い夜を抜けて392】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【昏い夜を抜けて390】へ
  • 【昏い夜を抜けて392】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク