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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第八章 開花②

昏い夜を抜けて389

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 「美味しい?」
 「うん!すっごい美味しい~」
 つくしと類が入った店は、おしゃれなフレンチ…ではなく、郷土料理の店だった。
 老舗らしい風情はあったが、ありていにいえば類のようなセレブが出入りするような店の佇まいではない。
 けれど、カウンターに二人並んで、一つの小鉢をつつき合う。
 料理人の方を向いて客席に背を向けているせいか、すぐ近くに座ったOL風の若い女性客や、大学生のグループなどの注目もそれほど気にならなかった。
 それでも時々、
 「うわっ、見てみて。あの人、すごいカッコイイ!」
 「…あんな王子様みたいな素敵な人って本当にいるんだぁ。隣にいるカノジョさんが羨ましい」
 などという羨望の声に気がつくが、間近で微笑んでくれる類に見惚れるばかりで、それが嫌じゃない。
 「…なに?」 
 「え?」
 「俺の顔ジッと見て。何かついてる?」
 小首を傾げて、バサバサ睫毛の縁ったビー玉みたいな綺麗な目をキョトンと瞬かせて、いかにも無邪気を装っているのが小面憎い。
 絶対わざとだとわかるのに、熱くなってしまう頬を抑えられないから。
 「……あんたみたいなお坊ちゃまが、こんな庶民料理、よく食べれるなって感心しただけだよ」
 くくくと含み笑って肩を揺らす男の態度が悔しいと虚勢を張るも、絶対に見透かされてしまっている。
 「美味しい?」
 「うん?牧野は美味しいんでしょ?」
 「……」
 「じゃあ、俺も美味しいよ」
 ニッコリ。
 きゃあああっとコンサート会場でもあるまいに上がった歓声はともかくとして、微妙な答えは聞かなければよかった気がする。
 「…しょうがないわよね」 
 「個性的な味だと思うけど、不味くはないよ?」
 「まあ、偏食バリバリのあんたが一応とはいえ、口にしてるしね」
 何を食べていても優雅さを失ってはいないが、それだけに類と里芋のにっころがしではかなりの違和感がある。
 …ていうか、あの綺麗な口からタコの足が覗いてるのもけっこう違和感バリバリだけど。
 本人は全く気にならないらしい。
 「讃岐うどんはとらなくてよかったの?」
 「…うーん、さすがに昼は素麺だったし」
 いくら美味しくても、さすがに2食も味が薄いものはごめんだ。
 「これけっこうイケるね」
 「しょうゆ豆?」
 「うん、日本酒と合う」
 そう言いつつ、類は酒を飲んでいない。
 つくしもまたさすがに、これ以上は酒量オーバーだった。
 「このあと、お土産買ってく?」
 「え?いいの?」
 「うん。秘書課の女子はけっこうお盆休みとか、正月のお土産だとか言って、会社にも持ってきてるし、あんた、そういうのキッチリしてそう」
 「ははは…」
 まさか、そんな世俗的な風習を類が知っているとは思わなかった。
 だが、案外類はそういうところがあった。
 生まれながらのお坊ちゃま、それも大企業の御曹司だというのに、つくしが意外に思うような庶民的なこともよく知っている。
 「何買っていこうかなぁ」
 醤油豆パクッ。
 元々甘いものが好きだし、餡子も好きだったが、甘辛く漬け込んだ醤油豆の味わいはクセになりそうな美味しさだった。
 …普通にこれ、ご飯にも合うよね。
 「…お豆も買っていこうかなあ」 
 「揚げぴっぴ、和三盆、名物かまど、瓦せんべい…」
 「は?」
 唐突に念仏よろしく唱えだした類に、つくしの方は??状態だ。
 「それに、ぶどう餅、カタパン、おいり、讃岐うどん、讃岐うどんグミ、それにこの醤油豆がお土産の人気どころだって」
 「…それって」
 「牧野が知りたいかなあって思って、連絡待ってる時間に調べておいた」
 「ええっ!?」
 …類が?
 本当に?
 「…ていうのは、嘘で、三田村が教えてくれたんだよ」
 ガクッ。
 確かに類には甲斐甲斐しい一面もあるが、さすがにそういうことをしてくれるキャラクターではなかった。
 事故で打ちどころでも悪くて、激しく人格でも変わってしまったのかと危うく疑うところだったつくしは、安堵半分落胆したような。
 「三田村もあれでけっこう気遣いの男だからね。毎回、出張のたびになんだかんだと買ってるみたいだね」
 「…ああ、うん、そうだね。この間の出張の時にも美味しいお菓子もらったよ」
 類の第一秘書だけあって、何かと彼に随伴したり単独でも出張の多い三田村だ。
 一々みやげなど買っていたらキリがないだろうと思うのに、マメに何かと土産を買ってきてくれて、秘書課のお茶菓子事情はかなり種類・質ともにハイクラスだった。
 …ああ、でも、類や高階さんもよく買ってきてくれるか。
 けれど、類のキャラではない気がして、前から気になっていたことを聞いてみる。
 「あのね、類もよく出張のお土産買ってきてくれるじゃない?」
 「うん、みたいだね」
 …みたい??
 「あれって、もしかして…」
 「俺のポケットマネーで三田村が買ってるんじゃない?」 
 「………まあ、そうだよね」
 類の立場でそこまで気にしていられないだろうから、当たり前か。
 「でも、牧野に買ってきてるのは、ちゃんと俺が選んだ奴」
 「え?」 
 「だってお前の喜ぶ顔、想像しながら買うのって、すげぇ楽しいからね」
 ニコニコ、ニコニコ。
 「…それって、また嘘?」
 「ホント」





 …またからかわれてしまった。
 いや、本当だというのだから、からかったというのとは少し違うかもしれなかったけれど、どちらにせよ、類がつくしの反応を楽しんでいるのは間違いない。
 「…フくれないの」
 クスクス笑われて頭をポンポンとされる。
 正直、この年齢になると頭に触られるのはあまり嬉しいことではなかったが、上機嫌な類にされるとそれはそれで悪い気がしないからやはり色ボケしているのだろうと自己嫌悪によけいにフくれてしまう。
 「…これと、これ買います」
 類と連れ立っての土産屋巡り。
 いたって庶民的な軒先で、興味深々な美青年を、店主たちも興味津々伺っているのがよくわかる。
 特に年配の女性にその傾向は謙虚で、行きずりの若い女性などが見て見ぬ振りで注目するのとは異なり、ガッツリがん見して、類と目があってもニカッと笑って、
 「お兄ちゃん、イイ男だね」
 「……」 
悪びれないのは、どこへ行っても見たような光景だ。
 「しかし、あんた仕事ではそれなりに愛想笑いも身につけたみたいだけど、普段…ていうかプライベートではまるっきり昔のまんまだよね」 
 「…そう?」
 「そうだよ」
 ニマニマ愛想のよい花沢類というのも確かに想像し難かったが、丸無視はないだろうといつも思う。
 「はい、お姉ちゃん、オマケしておいたから。これ、お釣りね」
 「わあ、ありがとうございます」
 無愛想な類とは真逆に愛想のいいつくしは、好感度抜群で。
 どこへ行ってもオマケをしてもらっていて、その愛想笑いが愛想ではなく本物なので人目をそば立てた。
 …ホント、菓子が美味いと笑って、オマケが嬉しいと笑うってやつだね。
 クスリと笑ったのを見とがめ、不審そうにつくしが財布を開けたまま類を見上げた。
 「…なに?」
 「ん?別に」
 「絶対笑った」
 「そう?牧野も笑ってるじゃん。それより、いま何か、財布から落ちたよ?」
 カサリと音を立て床に落ちたカラフルな紙を指差す。
 「え?嘘」
 お金でも落としたのかと、慌てて屈みこもうとした彼女に先んじて、類が拾った紙をつくしへと差し出した。





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