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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第八章 開花②

昏い夜を抜けて385

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 『……どうせ、そっちに牧野を呼び寄せてるんだろう?』
 司が類やつくしの動向に目を光らせてることなんて、類にもとっくにわかっていることだった。
 「だからって、なんで俺たちが高知まで移動しなきゃなんないわけ?」
 司の用件は、再来週半ばまで…約10日ほど九州につめないとならなくなってしまったらしいが、明日明後日と二日ほどポンと間が空き、近く計画しているプロジェクトの現場を視察がてら高知に向かうので、つくしを連れて類にも高知に来いというものだった。
 類たちが滞在している香川県・高松市から高知県・高知市まで車で約2時間。
 移動して移動できない距離ではなかったけれど、もちろん司の命じるままに唯々諾々とそれに従う理由など、類には全くないのだ。
 『高松にいるんだろ?どうせ、予定外で居残ってるんだ。大してスケジュールも詰まってないんじゃね?』
 「…意味がわからないんだけど。俺も別に遊びにこっちにきてるわけでなし、いくら本来の予定外でまだこっちにいるにしろ、どうして俺らがお前の都合に合わせなきゃなんないわけ?」
 司の自分勝手は今に始まったことではない。
 一時期互いの仕事や類自身、あるいは司の精神的な屈託から疎遠な時期もあったが、学生時代よく思いつきや暇にあかせて司に呼び出されることも珍しくなかった。
 しかし類などは面倒臭いのでそれに応じないこともごく普通のことで、主にその司の身勝手に振り回されていたのは総二郎とあきら。
 司も類に誘いを断られるのは慣れていた。
 だが…。
 『じゃあ、牧野だけでもいいぜ?こっちから車差し向けるから、寄越せよ』
 「……どうせ最初から牧野が目的なんでしょ?よくそれで九州まで、無理やり連れ出さなかったよね、お前」
 『当初ギチギチのスケジュールだったんだよ。連れてきてもロクに構ってやれねぇかもしんねぇし、それくらいならしょうがねぇかってな。それでも無理すりゃできねぇこともなかったけど、あいつも唯々諾々とうんと言わねぇ女だし」
 「ふぅん、お前も人の都合を慮るってことができるようになったってわけ」
 どちらにせよ、それもつくし限定のことなのだろう。
 『この俺様が東京までジェットで送ってやろうって言ってんだ。どのみち、あの女のことだから、仕事を休んでまでお前とそこにいるつもりなんてねぇんだろ?』
 …よく言うよ。
 もちろん、つくしがどうして類の元にいるかなど司も知っていて言っているのだ。
 それなのにこの物言いは、司の類への宣戦布告。
 それがわからない類ではない。
 そして、悟られていることをわかっていながら平然と言いのける司。
 互いが互いを知り尽くした幼馴染みの親友であるだけに、一人の女を間に挟んでも互いを理解するのは難しくなかった。
 「俺も帰るんだよ、明日、牧野とね」
 『……じゃあ、ちょうどいいじゃねぇか。しょうがねぇから、お前も送ってやるさ』
 「わざわざ自分の女にコナかけてる男んとこに、俺がその女を連れてゆくと思ってる?」
 フッと鼻で笑う司には、まったく動じる気配はない。
 『今はお前の女かもしれねぇけど、それは今だけのことだ』
 「過去のことを言いたいわけ?」
 『未来もだな』
 「………」
 相変わらずの自信に、さしもの類も苦笑がこぼれた。
 『お前とあいつがどういう経緯があって、今の関係になってんのか、…俺もヤボを言うつもりはねぇさ。俺らしくもなく、過去をいつまでも引きずって、あいつを放っておいたのがお前にかっ攫われたそもそもの原因、失敗の元だ。けど…たとえお前が相手だとしても、…あいつだけは譲れねぇ』
 「…譲る?そう言われる謂れもないけどね」
 つくしが類のものになったのは、司に譲られたからではない。
 そして、類が彼女を愛したのもまた、司には関係のないことだ。
 確かに彼女に拘りを持つきっかけになったのは、司の存在があってのことだったかもしれなかったけれど、今、思い起こせば、英徳のあの非常階段で彼女が一人、『王様の耳はロバの耳』と叫んでいたあの日から、彼女には他の誰にも感じることのできなかった『なにか』を感じていたのだと思う。
 つくしがつくしであるだけで、彼女がそこにいるだけで、類を惹きつけ興味を抱かせずにはいられない何か。
 それはもしかしたら、彼の知らない何かを持っている彼女への本能的な好奇心であったのかもしれなかったし、あるいは…単純に、彼女に一目惚れしただけのことだったのかもしれなかった。
 …だとすれば、ずいぶん、俺も鈍感だよね。
 初めて出会ったあの日から、いったいどれくらいの月日が過ぎて彼女への気持ちを自覚したというのだろう。
 『…たかだかガキの初恋なんて、過去の幻想だ。簡単に打ち壊してやるさ』
 「牧野が俺に惚れてるのは、高校生の時の気持ちの延長だって言いたいわけ?」
 『……どうだろうな。あの頃、お前に向いていたあいつの気持ちを俺に強引に振り向かせた自覚がないでもないさ』
 「……」
 類の知らない司の屈託。
 類が静を追い、フランスに渡ったまま、つくしや司の数ヶ月間の恋愛を知らないままに過ごした年月。
 二十数年間の人生のうちでのホンの数ヶ月間。
 本当に彼らにとっては一時の恋だったのだと、あらためて知り、類は不思議な感慨を覚えた。
 類にとって静への想いは、もはや雛鳥が卵から生まれいでた時から親鳥を慕うかのような習い性にも似て、気がつけば彼女に囚われてきた20年余。
 それなのに、高校時代のホンの一時、そんな短期間の…類からすれば麻疹のような一瞬の恋が、ずっと会うことさえなかった数年もの間、燻り続けて、つくしと司、二人、互いにこだわり続けたその事実を思う。
 …これは嫉妬なのだろうか。
 たぶんそうなのだろう。
 何か心の奥深く、ドロドロとして不快な感情の存在を類は自覚した。
 「……渡さないよ」
 『奪い取るさ』
 「とにかく、せっかくの申し出だけど、高知に出向くのはお断り。もちろん、牧野も行かせない。当たり前じゃん。フツーに明日は牧野とデートして、好きなだけイチャイチャしてから一般航空機で東京に帰るよ。お前も無駄な寄り道なんて計画せずに、一刻でも早く東京に帰れるように精々努力するんだね」
 ヒクヒク青筋を浮かべて、怒り心頭の司の顔が容易に類にも思い浮かべることが出来た。
 『…てめぇ、俺を無視するつもりかよ』
 「寂しいなら…ああ、そうだ、なんでか知らないけど、お前の婚約者がこっちに来てるよ。彼女を引き取って?」
 『……婚約者?』
 答える声がおどろおどろしい。
 わかっていて、答える類もやはり確信犯で。
 「そう、大河原滋。ああ…そういえば、彼女、元婚約者なんだっけ?お前も俺にわざわざ骨を折って、政略結婚の相手を紹介してくれたし、お礼に今度は俺が新しい婚約者候補を紹介しようか?」
 『いるかッ!』





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