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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第八章 開花②

昏い夜を抜けて384

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 ブー、ブー、ブー。
 「…俺みたい」
 鳴り出した携帯のバイブの呼び出し音に、真っ先に反応したのは三田村の方だったが、音の主は類の方だった。
 「ちょっと、悪い」
 「……牧野さんですか?」
 「そ」
 わざわざ確認せずとも、スマホの着信画面を確認した時に類が浮かべた柔和な顔が語っていたが、肯定されて三田村の顔にも柔らかい笑みが浮かぶ。
 「うん、俺。そう、まだ三田村のところ。牧野は?……素麺?へえ、美味しそうだね。うん、うん…そう、いいよ」
 上司のラブトークを横で聞くくらいどうということのない三田村だったが、あまりに普段と様変わりした甘く蕩けるような類の表情に、さすがに席を外したほうが良いかとベッドから立ち上がりかけた。
 しかし、むしろそんな三田村の行動に気がついた類に、片手を上げ制止される。
 「三田村、いいよ。…ああ、ごめん、こっちのこと。ん、いるよ」
 止められてしまえば、あえて席を外す理由もなく、本人にも許可を得たので上司と同僚の愛の通話は無視をして書類へと意識を戻した。
 「…うん、しょうがないね。でも、明日は約束しちゃダメだよ?明日は俺とがっつりデート。え?はは、照れることないでしょ?三田村もいい年なんだし、恋人の一人や二人いるんだから俺たちの会話なんて気にしないよ」
 …いえ、恋人は一人です。
 書類に集中しているフリで、聞くともなく類のラブトークを聞きながら、心の中で三田村が突っ込む。
 日頃類という男は、第一の腹心としてそば近く仕えている彼にですら理解しがたいくらいにエキセントリックなところのある男だったが、恋人との会話は案外普通なんだな、と妙な感慨を抱いて、三田村は何食わぬ顔を装っていた。
 「でも、夕食は俺と一緒して?うん、18時頃かな。迎えに行くよ…うん。じゃあ、それくらいに。………なに?」
 電話を切ったらしい類が、いつの間にか注目してしまっていたのだろう三田村と目が合って首を傾げる。
 「いえ、18時までこちらにいらっしゃるおつもりですか?」
 「ダメ?仕事中毒なお前のことだから、どうせ俺がいなくなっても、休むつもりなんてないんでしょ?」
 「…まあ、脳震盪を起こした他は足の骨折だけですし」
 仕事中毒とは失礼な言い草だが、確かに類の言うとおりで、普段どちらかといえば怠け者の彼を奮起させる方に苦労している三田村としては願ったり。
 けれど、ツマラなそうな顔で万年筆を指でクルクル回されたり、いかにもやる気なさげに居眠りされるくらいなら、たとえ短時間でも集中して仕事をして欲しかった。
 そのためには、リフレッシュは重要な時間だと三田村も認めている。
 ありていにいえば、特に差し迫っていることがないかぎり、類に居直られるのはありがた迷惑なのが正直なところ。
 「あれ?もしかして、彼女を呼んでたりする?」
 「……いえ」
 ホンの少しの間に、ニンマリ笑った類の顔が悪い。
 「わかったよ、ごめんごめん。まさか仕事の鬼のお前が、事故ったとはいえ、カノジョを呼び寄せてたなんて気がつかなかった」
 「……」
 否定しない三田村に肩を竦め、席を立つ。
 「ま、残りは月曜日でいっか。順調なんだろ?」
 「…ええ。日本での国内出張もこれで最後ですし、もはや突き進むだけです」
 「日本で…ね。それとも花沢での、というべきか。じゃ、俺、帰るよ。お前は…」
 「月曜日に出社致します」
 確かに足の骨折だけで幸い手術は免れてはいたが、類としては彼の勤勉をありがたいといえばいいのか、半ば呆れればいいのか。
 「…ハァ、俺としてはもう2,3日ゆっくりしてなよ、って言いたいところだけど、お前の場合、俺を野放しにする方がストレスになりそうだしね」
 「……」
 そのとおりだと言いたげな三田村の顔に苦笑して、椅子を立ち上がる。
 と。
 ブー、ブー、ブー。
 「また、俺か…………」
 着信の名前を見て、大きくため息。
 「じゃ、またね、三田村」
 手を振りつつ病室を出る。
 「……俺。そう、高松だよ。……暇じゃないよ。なに?お前は、九州にいるんじゃなかったの、司?」





 「もう一杯行ってみよう!!」
 「…滋さん」
 なぜか真昼間から始まってしまった酒盛り。
 時計を確認してみれば、外の景色にたがわずまだ夕方の17時。
 生真面目に生きてきたつくしにしてみれば、こんな時間から飲んだくれるなど許容の範疇外で。
 流し素麺までは順調?だったのに、と顔がヒクつく。
 『あたしと司が婚約を解消したことも司から聞いてるんだよね?』
 その言葉に思わず固まってしまった。
 別に滋に何を言われたにしろ、部外者であるつくしには関係ないはずであるというのに、司によってされた告白がひどく目の前にいる女性に申し訳ない気がしてしまったのだ。
 …そんなの傲慢だよね。
 だからもちろん、そんなことを口になんかしなかった。
 滋だって謝罪なんてされたくないだろう。
 だが、なんと言えばよいのか口ごもったつくしに、バンバンと背中を叩いた滋の行動は予想外だった。
 『そんな顔しない!腹に一物抱えて、付き合うのってあたしのタチじゃないから言っただけなんだから!もちろん、つくしのせいだとか思ってるわけじゃないし、ただ単に、そういう事情なの、って言いたかっただけ』
 『……うん』
 『それより、ごめんね。昨日、花沢さんの縁談話をしたのは余計だったよね?』
 『あ~』
 こちらはまったくあずかり知らないことだったので、確かに昨日いきなり言われた時には、驚いてなんのフォローもしようがなかったけれど、結果的に見れば類と話し合うきっかけになってよかったと思うので、わだかまりに思うことはなかった。
 『あたしって、けっこう口軽いっていうか、思ったことペロ~ッとしゃべっちゃったり、つい話のノリでよけいなこと言っちゃうみたいで。でも!これは言わないでッて、ちゃんと言われたことは喋らないから、それは信用してねッ』
 そんな流れから、場所を移してカラオケボックスに移動した。
 どんな話になるのかと内心つくしとしては戦々恐々としてしまっていたが、移動の間に滋の興味の対象は移ってしまったようで、ボックスに入った途端マイクを離さず、むしろ気が気ではなかったつくしの方がいつもはソフトドリンクしか注文しないのに、チュウハイを飲み始めたことが現在のこと場面へと繋がってしまっている。
 …どうしよう、車。
 おそらく連絡すれば滋の家のことだ。
 いくらでも車と滋を引取りに来てくれることだろう。
 ただ誤算だったのは、豪快に飲みまくっていた滋が、実はつくしとそう変わらないくらいに酒に強くなかったことで。
 今や大トラと化してしまった彼女をどう言いくるめて、ここで別れようか。
 …明日はデートとしようって、類に言われたけど。
 それ以前に、彼と約束している夕食の前に、滋とどう別れるかが問題だった。
 いつの間にかつくしの膝を枕に、寝入りそうな滋にどうしたものかと頭を悩ませる。
 つくしの膝枕に懐いた滋が、満足げに大きな息を吐いたかと思えば、そのまま黙り込んでしまった。
 もしかしたら寝てしまったのだろうか。
 それなら話は早いのだが…。
 「滋さん?」
 つくしが覗き込むとニッコリと微笑み返してくれて、どうやら寝ていないようだ。
 「あ~あ、この年までなんて、あたしだけだよね、きっと」
 「は?」
 が、滋が寂しげにポツリと呟いた言葉を聞き取れず、つくしは首が傾げる。
 「実はあたし、まだ処女なの。つくしは、もちろん経験あるんだよね?」





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