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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第八章 開花②

昏い夜を抜けて382

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 さらに滋の暴走車に乗ること十数分。
 かなり緑豊かな…ありていにいえば山深い場所に、目的のその場所は見つかった。
 キョロキョロと不慣れさ丸出しの、都会的な美女が顔を右左目を輝かせ、うっかりおいてけぼりをくらいかけたつくしを手招き、ピョンピョンと飛び跳ねている。
 …滋さん。
 さすがにこの年になってしまっては、つくしでもそんなことはやらない。
 けれど、黙って立っていればクールな麗人でも通りそうな滋がそんな仕草を見せると可愛らしくて憎めない。
 いつの間にか、つくしもこの突飛なお嬢様が好きになり始めていた。
 正直、最初の出会いが出会い…元彼の婚約者とその元彼が現在求愛している相手という微妙な関係に尻込みして、忌避していた部分がなかったとは言えない。
 それなのに、まるで十年来の親友であるかのように気兼ねなくつくしに懐いてくる彼女を嫌うことなど、つくしの性格でできるものではなかった。
 「すっごいワクワクする。あたし流しそうめんって初めて!つくしは?」
 「あ~、あたしも初めてです。今の時期の四国は素麺が美味しい、なんて昨日言ってたから、てっきり滋さんはお馴染みなのかと」
 「ん~、素麺は好きなんだけどさ。こ~んな気取ったガラスの器に入れたのに、ゴテゴテ食べれもしない装飾したようなのばっかりで、こういう風流なのは未経験なんだよね」
 嬉しそうにニッコリ笑って、遠く山々を展望するテラスに設置された無垢材の巨大テーブルを眺めて興味津々だ。
 つくしにしてみても初めての経験で、まだ時間が少し早いせいか二人しかいないお客が食べている様を物珍しく眺め、待ち遠しいくらい。
 「へえ、お店の人が流すんじゃなくって、自分たちで流すこともできるんだ」
 店員を兼ねているのだろう女将らしき女性に案内されて、席につく。
 司あたりだと嫌がりそうな粗末な佇まいの家屋だったが、風流と言い現すだけのことはあって滋に不満はないようだ。
 目の前の薬味を見ているうちに、つくしも空腹感が増して、グウ~ッとお腹が鳴ったことにバツが悪くて滋を伺うと、その滋もペロッと舌を出して腹を押さえている。
 「はは、もしかしてつくしもお腹がなっちゃった?」
 「えっと、滋さんも?」
 「うん。あたしもお腹ペコペコ。せっかくだから、あたしたちも自分たちで流してみようよ」
 「いいですね!じゃあ、まずはあたしが流すから、滋さんが食べて?」
 「ええ?いいよ、つくしのお腹の音の方がすっごい大きかったよ?」
 図星をつかれて恥ずかしかったものの、子供ではあるまいに少しの間我慢できないほどではない。
 それよりも、すでに箸をもってウズウズしているような滋の態度が可笑しくて、先にどうぞと念を押す。
 「いいから、いいから。滋さんが先でいいよ。すぐに交代してくれれば大丈夫」
 「うん!じゃあ、よろしく」
 いい年をした女二人がたかだが素麺で歓声をあげて、…でもそれがとても楽しいと尚嬉しくなってくる。
 …なんか、優紀とか香帆と来ても楽しかったと思うけど、滋さんはまた違う楽しさをくれる人だな。
 配膳された素麺のカゴをもって、竹の流し台の上流へと移動する。
 あれほど暑さに参っていたというのに、空調ではなく吹きっさらしの吹き抜ける山の風がことの他心地よく、素麺を流す流し台を流れる清水のせいか、涼しく感じて虫の声さえ夏の風物詩だと楽しむ余裕が出てきた。
 「いいよ~、流して~」
 滋からほどよく離れ、簾で仕切られた場所から、つくしがひとすくい真っ白な素麺を落とすと、しゅるる~っと流れてゆく。
 「わい!…ん~、美味しい!!」
 予想にたがわず嬉しそうな声があがって、
 「もういっちょ!」
 「はいっ」





 「う~ん、お腹いっぱい」
 ポンポンとお腹を叩いて、滋が椅子の背もたれにそり返る。
 それを横目で見るつくしも、滋の勢いについ乗せられ、食べ過ぎてしまっていた。
 「お漬物も美味しかったね」
 「だよね~。いくらなんでも素麺だけじゃ飽きちゃったと思うけど、このお漬物の絶妙な塩加減と、流れてゆく素麺を捕まえる楽しさに食べ過ぎちゃったぁ、あははは」
 「滋さんったら、なかなか変わってくれないから」
 「ごめんごめん」
 楽しい時間に互いの緊張もほぐれ、まるで学生時代のノリのように気安くなっていた。
 「でも、ちょっと二人だと忙しかったね」
 「うん、もっと大人数で来た方がわいわい楽しいかも」
 「よし!じゃあ、次回は司や花沢さんも連れてきちゃう?」
 「……う~ん」
 類と司は幼馴染みの親友だったし、皆まるで知らない仲ではないので不可能な話ではないかもしれなかったが、さすがにこのメンツで楽しい会食になるとは思えない。
 …ていうか、あたし、そこまで面の皮厚くないつもりだし。
 実際、滋はどう思っているのだろう。
 つくしに親しみを感じてくれて、友人になりたいとは申し込まれたが、…元々の関係が関係なのだ。
 しかも、ただ滋の婚約者がつくしの元彼というだけならばともかく、その当の滋と司の婚約が壊れてしまったという。
 けれど、それも司の言葉によればで、当の滋はどう認識しているのだろう。
 気がつけばつくしは滋の顔をジッと見てしまっていた。
 「なに?」
 「えっと」
 「やっぱり、あたしが好みのタイプだった?」
 「……ははは」
 この間も言われたジョークに生ぬるく笑う。
 「ま、それはさすがにないか。あんなラブラブでカッコイイ彼氏がいるんだもんね」
 「…いや、ラブラブ、なんて」
 面と向かって『ラブラブ』だなどと言われるのは気恥ずかしい。
 …て、いうか、あたしそんなに類といちゃついてた?
 そんなつもりがなかっただけによけいに居た堪れなかった。 
 「ラブラブだよ~、ホント、羨ましい。あたしなんて、司に婚約破棄されちゃったし」
 「……」
 ちょうどそのことを考えていたところだったとはいえ、フイうちにつくしが息を呑む。
 「でしょ?時々、つくし、気まずい顔してるものね。あたしと司が婚約を解消したことも司から聞いてるんだよね?」





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