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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第八章 開花②

昏い夜を抜けて381

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 「わおぅ!すっごいイイ天気!!」
 真っ赤なオープンカーに、サングラスをかけたショートカットの中々にグラマラスな美女が、豪快に奇声をあげて急ハンドルを切った。
 ギュルルルルルルルル~。
 たぶん下手くそなわけではないのだろう。
 そうは思う。
 …と、とりあえず今のところ事故ってないし。
 ただ煽られると恐ろしいほどにスピードを上げ、今にもスピンしそうな勢いで急カーブを曲がり、そうかと思えば急ブレーキを踏みまくるドライブテクニックに、すでにつくしは半死半生で…。
 「いやあ、NYや東京に比べて、空がすっごい青くて近いよね!!」
 「……」
 助手席のシートベルトを握り締め、ガックンガックン車の動きに連動して頭をフラれまくったつくしはもう悲鳴を上げる元気もない。
 「……ぎぼち、悪い」
 「ええっ!?」





 遡ること2時間前。
 メモはなかったが、メールで類の一日の予定が送信されていた。
 中身の方は『愛している』どころか思いっきり手抜きな文面で。
 いや、文面と言っても良いものか。
 どうみても三田村が類に当てたスケジュールをそのまんま転送しただけのもの。
 王子様チックな甘い美貌からは予想だにできないが、類の中身は王子様には程遠く、基本三年寝太郎、ものぐさ男。
 見た目があれほど良く、スポーツ万能だったり、天才的頭脳の持ち主だったり、御曹司の生まれでなければ単なるダメンズと呼ばれても言い過ぎではない残念さ。
 と、どれだけ恵まれた男であるのか逆に改めて確認して、つくしはポリポリと鼻の頭を掻くことになってしまった。
 まあ、それはともかくとして、類の方は午後からは空いていると昨日の段階では言っていたが、どうやらそれでも実際に時間が空くのは夕方に近いらしい。
 それならばと、滋に連絡することにした。
 本人が強引についてきたとはいえ、さすがに四国くんだりまでつきあわせたあげく、半ばおいてけぼりにしてしまったことをつくしも多少なりとも気に病んでいたのだ。
 メモに記されていたメアドにメッセージと自分の携番を入れた直後、速攻滋から電話が入り、口を挟むまもなくあれよあれよという間に会う約束を取り付けられ、つくしが泊まっているホテルのエントランスの真ん前に派手な高級車で乗り付けられたというわけ。
 そして現在にいたる――。





 「大丈夫?つくし?」
 「…はあ、まあ」
 滋が自動販売機で買ってきてくれたミネラルウオーターのキャップをひねって、口に含む。
 冷たい水が喉を通ってゆく感触に、喉が渇いてたことを自覚して、真夏の暑さに火照っていた体にも清涼感が行き渡って少しは気分が回復した気がした。
 「ホント、ごめんねぇ~。ハンドル握ると人が変わるっていうか、なんか煽られたり追い抜かれたりすると、カアアッと頭に血が上っちゃってさ」
 「…はあ」
 よく聞く話だ。
 もっとも彼女のそうした悪癖はあまり意外ではなく、人が変わったという気もしないが、確かに短気な気はしない。
 お嬢様のイメージに似合わぬ気さくさと、チャキチャキした威勢の良さが魅力的な女性だ。
 「この辺はこの時期、台風も多くて天気が不安定らしいけど、いい天気で良かったね」
 「滋さん、高松に来たことあるんだ?」
 「んん~ん~、昨日空港に置いていかれてから暇だったし、つくしと遊びたかったからスマホで調べたの」
 「…なるほど」
 「ゴクゴクゴク、ぷっは~~~生き返るぅ」 
 つくしもたいがい色気がない自覚があったが、滋も相当だ。
 黙っていれば出るところも出てスタイル抜群の美女だというのに、片手を腰に当ててドリンク剤を一気飲みする姿は興醒めだった。
 通り過ぎる男性陣が、滋の美貌に注目し、彼女の豪快な?仕草にギョッとして、唖然としているところを何度も目撃する。
 もっともある意味、そうした彼女の飾らないところは潔くも好感が持てた。
 …英徳の浅井たちみたいに裏表ないし、あたしや使用人さんたちにも感じが良くていい人だよね。
 滋のような立場に生まれて、つくしのような庶民や使用人にまで気を使える人は珍しいことは大人になった今ではよくわかる。
 高校生の頃、お金持ちの坊ちゃん、お嬢様たちの高飛車さや傲慢さには呆れたものだが、しかし社会に出ていまではそれも仕方がないこと、社会の縮図の一つだったと理解していた。
 人は意図も容易く自分より弱い立場の者を蔑み虐げる。
 そして、自分より強い立場の者におもねり謙る。
 そうした悪習から一線を画して背を向けることができる人間こそ稀有なのだ。
 あのF4ですら、いやむしろ彼らこそかつてその悪徳の汚泥に浸りきっていた温床だった。
 …道明寺なんてその最たるものだったよね。
 今思えばほとほと呆れ果てた男だったと思うし、そんな男と恋愛をしていた自分の物好きさを疑う。
 そして類もまた、人により見解は違うかもしれなかったが、司に負けず劣らずのとんでも男だった。
 どうして自分は平凡を愛して、ただ小さな幸せを求めているだけのごく普通の女にすぎないのに、こうした男たちとばかり深く関わる巡り合わせなのか。
 自販機の前に設置された鋼鉄製のポールベンチに腰掛け、見るともなく車の行き来を見送る。
 強い日差しに目を細め、滲んできた汗を手の甲で拭ってつくしは溜息をついた。
 それでも吹き抜けた風がわずかに凝おった熱気をさらってくれて、濡れた衣類を冷やして涼ませてくれる。
 「もう少し、上の方までいったらパターゴルフ場があるらしいけど、行ってみる?」
 「…うーん、山の上はもっと暑そうだよね」
 つくし的には遊びに四国まで来たつもりはなかった。
 けれど、滋の押しの強さと、実は『看病』は口実に過ぎずにただつくしを呼び寄せたかっただけらしい類のおかげで暇を持て余す身だったために、このクソ暑い中のドライブに。
 「あ!!」
 つくしの横で、道路脇に乱立した立て看板の広告を眺めていた滋が歓声をあげた。
 何事かと、その視線の先へとつくしも目を向ける。
 「ヨッシャッ―――ッ!!つくし、アレ行こうッ!!アレッ!!」
 「……へ?」





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