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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第八章 開花②

昏い夜を抜けて373

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 「牧野」
 ゲートを出たとたん、聞き慣れた甘いテノールに呼びかけられ、つくしは滋を腕に懐かせたままキョロキョロと周囲を見回す。
 飛行場の白い壁にもたれかかっていた美青年が、顔を隠すように手に持っていた単行本をヒラヒラと振って、つくしへとニッコリ微笑んだ。
 「類…」
 「…わぉ、司とタイプは違うけど、すごいゴージャスな美形」
 呼びかけられた時から、横で呟く滋の声さえつくしの耳には届いていない。
 滋が手を離したのをいいことに、気がつけばつくしはなかば小走りに類へと歩き出していて、けれど長い足のスライドの方がはるかに早く、つくしの真ん前に立った。
 ふわりと柔らかく抱きしめてくる腕の温もりが、どこか夢心地で半信半疑だった彼女に、目の前にいるのが本物の彼だと教えてくれて、無意識に張り詰めていた緊張が緩む。
 「……類、類」
 「よく来てくれたね。疲れただろ?」
 労われて顔を埋めていた広い胸から顔を上げれば、優しく微笑む王子様の美貌が彼女を熱く見つめていて、ホッとしていた気持ちがトキメキに波立ち頬が熱く照れくさい。
 「無事だったんだね」
 「電話で話したろ?俺はかすり傷程度だったって。もしかして、凄い心配させたままだった?」
 つい潤んでしまっていた目に気がつかれてしまったのだろうか。
 気遣わしげな顔で頬に大きな手を当てられ、赤く染まったつくしの顔がさらに茹で上がってしまう。
 恥ずかしいのに、類のビー玉みたいな目から視線を反らせられない。
 普段だったら、こんな乙女チックなシチュエーションにとても耐えられないというのに、事故の報からどんなに心配ないと言われてはいても、やはり心のどこかで彼が心配で気が気でなかった自分をいまさらながらにつくしは自覚した。
 「なんともないでしょ?もし酷い怪我をしてたなら、ちゃんとお前には言うよ」
 「…うん、本当によかった。でも、まだ病院に入院してなきゃいけなかったんじゃないの?」
 「いや、俺は検査だけだったから。それも無事、異常なしってことでさっき退院」
 安堵するやら、困惑させられるやら。
 「そっか。…でも、それなら、あたし、もしかしてこっちまでわざわざ来る必要なかったんじゃない?」
 心配だったけれど、いざ無事を確認すれば、憮然とする気持ちも湧き上がってきた。
 少し違うかもしれなかったが、なんだか騙された気分だ。
 …いかにもまだ入院するから、看病して欲しいみたいなことを言って。もうっ、類ったら。
 もっとも考えてみれば完全看護の大病院に入院していたのだろうから、看病の必要などなかったに違いない。
 …頭に、なんか沸いてたな。
 自省する彼女に小さく含み笑った類を、怪訝に見返す。
 「…なに?」
 「いや、お前の考えてることわかるな、と思ってさ」
 「え?」
 「いや、こっちのこと。…それより、牧野は俺に会いたくなかったの?」
 「…会いたいって、別にそんなに何日も離れていたってわけじゃないよ」
 そもそも元々が日帰りの出張予定だった。
 類自身の検査や三田村の怪我もあるので、どうやら週末と休日はこちらで過ごすようだが、それにしても週明けにはどのみち東京に戻ってくるのだ。
 そう何日ものことじゃない。
 「でも、俺は逢いたかった」
 「……」
 甘く囁きかけられ、つくしが目を瞬かせてジッと見つめ合う。
 「ホンの数日でも、お前と離れていたくなかったんだよ」
 「……海外出張だってあるのに」
 「それはそれ、これはこれ。牧野は俺と一緒に休日を過ごしたくなかった?」
 「そんなことはないけど…」
 そう言われてしまうと、確かに類と一緒にいられない休日はとてつもなく味気なく、寂しいものに思えた。
 別にこれまでの休日も常に一緒に過ごしていたわけではなかったし、むしろ類がマンションを出て行ってしまって以来、一緒に暮らしていた時とは異なり仕事以外でそれほどの接触があったわけではない。
 それなのに、なまじ気持ちを伝え合って温もりを共有してしまったことが、彼を恋しく一緒にいた気持ちを一気に育んでしまったのだろうか。
 「じゃあさ、東京に帰るまでの三日間、ずっと俺と過ごそう?」
 「……あんたは仕事あるでしょ?」
 「牧野は俺の秘書でもあるじゃん」
 「……」
 「俺が仕事中はお前は俺の秘書。でも、仕事から離れたら恋人として一緒にいてよ?ダメ?」
 「……うん」
 「あのぅ」
 本当に嬉しそうに微笑む類の笑顔に見惚れ、つくしがボウッとしていた背後から遠慮がちな声がかかって、条件反射で背後へと振り返る。
 ポリポリとこめかみを掻いてバツが悪そうな滋が、類とつくしの視線を受けて一言。

 「ごめん、二人の世界に入ってるところ悪いんだけど、あたしの存在もそろそろ思い出して欲しいかなあ、なんて?」
 「……」
 「……」
 「……」
 「……」
 「ぎゃっ!!」





 「もしかしなくても、花沢さんですよね?」
 さすがに広いようで狭い社交界。
 大河原財閥のご令嬢の滋は、類を見知っていたようだ。
 つくしがあえて紹介しなくても、滋の方が類の名を言い当て、積極的に話しかける。
 もっとも、滋は司の婚約者だ。
 親友の類にも紹介されたことがあるのかもしれない。
 「…司の婚約者だっけ?大河原財閥の一人娘だよね?」
 「うん。同い年だから、タメ口にするね。初めましてだけど、初めて会った気がしないし」
 「…そう?」
 かつての司のように威嚇するでもないが、職場つながりではない現在はあくまでもプライベートモードなのか、愛想のあの字もなく、類の態度や表情は無愛想だ。
 もっとも、学生時代はこれがデフォルトだった。
 王子様のような甘い美貌に、冷たい表情。
 「滋さん、類のこと知ってたの?」
 「うん、あたし大学出てから花嫁修業だけで、特に仕事してないこともあって、直接には紹介されたことないけどね。狭い社交界だから、司との婚約の前は同世代の異性のことはそれなりに周囲からプッシュされるしさ」
 「…なるほど」
 つくしには理解しがたい世界だが、なんとなく言わんとするところはわかる。
 結婚が家と家の繋がりの証である彼らにとって、結婚する可能性がある相手に関しては幼い頃からそれなりに情報を与えられているのかもしれない。
 「まあ、それがなくっても、あたしも高校は永林学園だったしね。英徳のF4のことはさすがにそれなりに小耳に挟んだこともあるよ」
 「……で?なんで、司の婚約者のあんたが彼女とここにいるわけ?俺は招待した憶えないし、司の姿もどうやら見えないようだけど?」
 類のもっともな指摘に、どう答えたものかと滋と顔を見合わせる。
 「えっとね」
 「もしかして敵情視察?牧野があんたのライバルになり得るか、自ら探りに来たってわけ?」





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ご茶子さんの美男ですねのお話を読んでましたが3月以降更新がないので心配です。。。好きだったので( .. )

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