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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第八章 開花①

昏い夜を抜けて368

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 「道明寺」
 「なんだったら、ガキの頃みたいに、お前のダチも連れてくるか?お前のことだから、まだ、高校ん時のダチとも付き合ってんじゃねぇの?」
 「道明寺」
 「それか…、桜子でもいいか」
 「道明寺」
 「2日あれば、けっこう見て回れるだろ?」
 「…土星のネックレスを返したいの」
 「っ!」 
 優柔不断なところがあるつくしだからこその作戦だった。
 押せば拒めない。
 一度懐に入れてしまった相手を見捨てられない。
 卑怯と承知しつつ、そんな彼女の性格を利用して切り込もうとした自覚が司にはあった。
 それなのに、つくしは言うのだ。
 「類が…好きなの」
 「……」
 「その…あんたにこんなこと言うのはどうかと思うけど、今彼と付き合っている」
 揺るぎない眼差しで。
 迷いなくハッキリとした口調で。
 司へと宣言する。
 あのいつもどこか自信なげだった、自分の気持ちに鈍感だった少女ではなく、強い意志と確固たる想いをもって一人の女へと成長した目の前の女が司を拒む言葉を言い切り断言する。
 「…もう、あの時には戻れないのよ」
 「だから?」
 「え?」
 司の思わぬ返しに、つくしが意味をとらえ損ねて怪訝に問い返す。
 両手を組んで、その手に顎をのせた司の顔は、つくしの宣言に何の動揺も見せず、表情に変化がない。
 いや、ある意味彼女のどんな言葉にもうっすらとした笑みを浮かべたまま、顔色を変えないそのさまこそあきらかな変化だったのかもしれない。
 つくしが知らない顔…。
 能面のような感情の伺えぬ冷笑を浮かべ、つくしを見返す目に浮かんでいるのはいったいなんなのだろうか。
 「だからどうしたって聞いてるんだよ」
 「…どうしたって。それは、あたしはもうあんたの気持ちには応えられない。あの時と同じ気持ちであんたの前に立つことはできないの。だから…」
 「だから、付きまとうなって?」
 「それは…っ」
 それは…なんだと言おうとしているのだろう。
 たとえ言葉をどんな風に言い繕ったとしても、ようはそういうことなのだと思う。
 司の気持ちに応えられないのなら、あの時に戻れないのなら、こうして会うことさえもうするべきではないのだ。
 あの時の気持ちを語ることさえ、今の彼の気持ちを踏みにじることになってしまうのだとすれば、何も言わず、ただ酷い女のまま彼の前から永遠に消え去ることこそ、あの日の…あの雨の夜の決着の付け方なのかもしれなかった。
 「あたしはっ」
 「ぶっ」
 つくしが勢い込んで言葉を継ごうとした途端、突然司が噴きだし、うつむき加減に笑いだした。
 「くくくくっ」
 「………」
 司の笑いの意味がわからず、ただ戸惑ってそんな彼をつくしは見守り続けることしかできない。
 「…お前、相変わらずだな」
 「…え?」
 司が笑っていた顔を上げ、ニヤリと口角を上げる。
 嘲るような嫌なものではなかったけれど、それでもその笑みに含まれる感情が良いものではないことはつくしにも十分に悟ることができた。
 「生真面目で意固地で、融通がつかなくて鈍感」
 「……」
 …何が言いたいの?
 ただつくしの欠点をあげつらねたいいわけではないだろう。
 「そのくせ、ズルい女だよな、お前」
 「…道明寺」
 「それで?はい、そうですか、って俺が諦めるとでも思ってんのか、お前」
 ひとしきり笑い、だがつまらなさそうに鼻を鳴らすと司が立ち上がる。
 「誰が、お前に俺の気持ちに応えてくれと頼んだよ?」 
 「……」
 「誰が頼むかよ。…昔、俺は言ったな?憶えてるか?」
 「なにを?」
 つくしもベンチから腰を上げ立ち上がった。
 長身の男の後ろ姿が、まるで真っ黒な闇のようだ。
 緩やかな風が吹き抜け、彼女の長い髪を揺らす。
 嵐が近づいているのかもしれない。
 かつて彼女を翻弄し、屈服させてしまった嵐が。
 かつて目の前の男と繋いでいた手を吹き散らした嵐が、今度はこの男自身によって作り出されようとしているのか。
 寒くなどないのに、むしろ蒸し暑く不快な汗が流れているのに、ブルリと震えて、つくしが自分の両腕を抱きしめる。
 そんな彼女の仕草に気がついたのだろう。
 ゆっくりと振り返った司が、彼女へとその手を伸ばし、まるで彼女を掴むかのようにその拳を強く握り締めた。
 「お前が逃げるなら、追いかける。地獄だろうがどこだろうが、どこへだって追いかけて捕まえてやる」





 疲労に霞んだ目頭を指先で摘んで、高階はしばし瞑目した。
 ここのところ重ねた無理に無理が祟って、常に疲労が付きまとっている気さえもする。
 それさえも、充実した毎日の結果だというのならば、気力でなんとかカバーもできるだろうが、何とはなしにいま自らが築いたこの地位が不動のものに思えないのはなぜなのだろう。
 …所詮、俺は小心者ということか。
 そんな自虐的な思いさえこみ上げて、マウスを操作し、隠しフォルダの中の画像を呼び出す。
 少し前まではここ彼の私室のノートパソコンの背景になっていた画像で、我ながら未練がましいと思いつつも消すことができなかった。
 たとえパスワードで保護されているにしろ、これからの身の上を思えば少しでも弱味になるようなものを残しておくべきではないとわかっているのに…。
 彼が送った花束を両手いっぱいに抱えて、はにかんで笑う女の笑顔。
 『…こんなのくれなくても良かったのに』
 彼女の声さえも耳に蘇って、あの日の愛しさ、彼女へと感じた温かな感情が呼び起こされる。
 「…ふっ、本当に、女々しいな」
 類に知られれば、鼻で笑われることだろう。
 あの柔らかな美貌の中にあるのは強靭な男の顔で、たとえたった一人の女のために破滅する道を選んだのだとしても、轟然と顔を上げ自分の選択に微塵の迷いさえも見せなのだろう、あの男のある意味潔さと強さが妬ましい。
 「もう一頑張りするか」
 ため息をつき、呼び出した画像を閉じる。
 そして…、ふと思いつきもう一つシークレットつきのフォルダの中に格納された動画を呼び出し、引き出しの中に入れておいたDVDに落とし込む。
 「お前にとっても諸刃の剣だと俺は忠告したぞ」
 あの時、類はなんと返しただろうか。
 記憶を探るが思い出せない。
 これが果たして、彼の武器になり得るか。
 あるいは…。
 もしかしたら、諸刃の剣なのは彼自身にとっても同様のことなのかもしれなかった。





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