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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第八章 開花①

昏い夜を抜けて364

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 このシチュエーションは初めてではなかった。
 つい最近で言えば、ド派手なスポーツカーで乗り付けた総二郎に待ち伏せをされ、周囲の好奇と嫉妬と羨望の目に居た堪れない思いをさせられた。
 総二郎とはまた別種の、彼に勝るとも劣らぬオーラと美貌と威厳。
 彼が誰なのか知らなかったとしても、司が只者ではないことは誰にでもわかっただろう。
 そこにいるだけで、まるで異次元に迷い込んだかのような錯覚を抱かせる特異な存在。
 ただ美しいではなく、ただ威圧的であるというだけではなく、彼がそこにいるだけで注目せずにはいられない。
 …煙草、吸うようになったんだ。
 そんなどうでもいいことが、唐突につくしの脳裏に思い浮かび、無意識に肩から下げたハンドバックをグッと握りしめる。
 …しまったな。持ってくれば良かった。
 数日前、クローゼットの収納ボックスの奥底から探し出した因縁のアクセサリー。
 土星のネックレス。
 それはこの目の前の男から、遥か遠い過去に贈られたものだった。
 「てめぇ、いつまで人を待たせてんだ」
 「はっ!?」
 聞き違いだろうか?
 「この超忙しい俺様が、1時間だぞ。これがビジネスだったら、いったいどれだけの損失になったと思う?」
 高校生の時のように怒鳴りつけられはしなかったが、低い声での恫喝は存外によく通り、つくしの周囲を歩いていた人たちがギョッとその場を飛びのき、無関係を装ってゆく。
 もっとも、実際に無関係なのだから、つくしにしてもどうでもよいことだが、それにしても…。
 「…いや、それおかしいでしょ?いつ、あたしがあんたと待ち合わせしたのよ」
 まったくもって記憶にない。
 第一、この男は、今頃、東京にいないのではなかっただろうか。
 超忙しい…はずの男とは、昨夜も顔を合わせていて、確か今日から1週間九州に出張だと言っていなかったか。
 「…だから、わざわざ会社の前でお前が出てくるのを待っててやったんだろ?上司が不在のくせに、秘書が残業なんてしてんじゃねぇよ」
 「は?何言っちゃってんの?それどういう偏見よ。上司が不在だろうと出張していようと、仕事はあるのよ。…じゃなくって、なんで、あんたがそんなこと知ってるのよ?」
 別に社秘というわけではなかったが、おいそれと他社の副社長に、専務のスケジュールを把握されているなど合点がいかない。
 「…類だって、きっと俺のスケジュールなんて知ってるぜ」
 「ええっ?」
 「ま、そんなことはどうでもいい。お前、飯まだだろ?付き合えよ」
 「…いや、どうでもいいって言われても。むしろ、あんたが東京にまだいることの方が不思議なんですけど?」
 「どっかの間抜け野郎が事故りやがってな。おかげで予定が一部変更になったんだ」
 「へ?事故?」
 どこかで聞いたような事情だ。
 「ああ。そいつに会うわけじゃなかったが、そいつが動かねぇとこっちも九州くんだりまで急いでいく必要がなくなってな。明後日まで延期」
 「…はあ」
 「て、ことで、いくぞ」
 唖然としている間に、カツカツと大股で近づいてきた司が、無造作につくしの手首を掴み、無遠慮に車に引きずってゆこうとする。

 「ちょ、ちょっと待ってよ!行くぞじゃないでしょっ!!」
 反対側の手が眞子に掴まれていたので、一足飛びに連れ込まれることは防げたが、全力で足を突っぱねていなければ、容易に連れ去られてしまいそうな危機感に慌てて制止する。
 「行かないって!!」
 「なんでだよ?」
 「…なんでって」
 そりゃもちろん、いろいろとある。
 けれど、こんなところでハッキリと言えるものでもない。
 と、いうか、周囲の好奇の目が痛かった。
 「つくしちゃん」
 心配そうな…けれど、司の方には警戒もあらわな視線を投げかけた眞子が、つくしの腕をとって後退る。
 そんな眞子にはいちべつも与えず、司の目はつくしだけしか見ていない。
 「話、あんだろ?」
 「えっ!?」
 意外な言葉につくしが目を瞬かせ、逃げようとして懸命に活路を探していたというのに、ジッと司を仰ぎ見る。
 「……っ」
 「それって…」
 「俺になんか話あんだろ?俺も大概忙しいからな」
 らしくもなく、つくしの凝視する視線から司の目がツッと反らされる。
 けれど、司は嘘はつかない男だ。
 かすかに頬を赤らめた相も変わらず美しい司の美貌を眺めながら、どうするべきか迷う。
 だが、確かに司は多忙な男で、彼女が会いたいと思っても本来そうそう面会など叶うはずもない相手なのだ。
 …話すなら今しかないのかもしれない。
 「…わかった。付き合うよ」
 「よし」
 つくしの承諾を得て、司がホッとしたように掴んでいた彼女の手首を離す。
 「…もう、相変わらずバカ力なんだからッ」
 「なんだよ?赤くでもなったか?」
 「そりゃね。もうイイ大人なんだから、少しは力加減くらいしなさいよ」
 「ふん、どれ、見せてみろよ」
 なんとなく、そういう司の顔がエロオヤジっぽく見えたのは気のせいじゃないかもしれない。
 「…けっこうよ」
 「なんだよ?ガキの頃みたいに俺が舐めて…」
 「ワ―――ッ!!ワ――――ッ!!!!」
 司の言葉を遮ろうと大騒ぎしだしたつくしの大声に、司が自分の耳に指を突っ込んで、顔を顰める。
 「おま…、うっせえ」
 「…つくしちゃん」
 「ごめんね、江島さん。今日は飲み会は遠慮させて?」
 困惑したような眞子が、司とつくしを見比べる。
 「それはいいけど…でも」
 「大丈夫、こんなやつでも一応は知り合いだし、そんな変な人じゃないから」
 「…こんなやつとは何だ。だいたい知り合いってそりゃねぇだろ。変な人呼ばわりしやがって、しばくぞ、このアマ」
 その言葉に眞子がまたギョッとするが、つくしは強引にさよならの挨拶をして別れる。
 どのみち、眞子の警護の範囲は社内だけのことなのだ。
 なんだかんだ、堀田が後をつけてくるのだろう。
 ぶつくさと不満げな男の声は無視をして、しぶしぶ手を離す江島へと手を振り、司に向き直る。
 「で?」





 リムジンで走り去るつくしを見送り、携帯を手に直近の履歴を見つつ、眞子はしばし悩んでいた。
 目の端には、慌てて車でリムジンの後を追うつくしのSP・堀田の姿が見える。
 …どうしよう、あれって道明寺司だよね。やっぱり、専務に報告すべき?
 もちろん、すべきなのだろう。
 しかし、つくしに正体がバレてしまった後だ。
 あまりにもあからさまな報告は、なんだか疚しいと感じるのはまだ職務に専念しきれていないのだろうか。
 「ハァ~、やっぱ、こういうところは警察の方が楽だったかな」
 そうは思いつつ、警察だとて綺麗ごとばかりではないから、今彼女はここにいるのだ。
 「……」
 トゥルルルルルルル、トゥルルルルルルル、トゥルルルルルルル。
 『…はい、俺』






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