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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第八章 開花①

昏い夜を抜けて363

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 「あぁ~、疲れたぁ~」
 人目も気にせず大口を開けて伸びをする眞子を、通り過ぎる社員たちが何事かと振り返る。
 きわめて女らしい見かけの女性だったが、意外に大雑把なところがある人物だ。
 「……江島さん、猫被ってたら絶対モテるのに」
 「なになに~、それどういうことかなぁ?」
 ふふふと笑う眞子はそれでもつくしの失礼な感慨に怒るでもなく、掴みどころのない笑顔でつくしを覗き込む。
 初めて出会ったころは、彼女の社内での親友・かなえの方が童顔でふわふわした人物だと勘違いしていたが、眞子の方が実はかなり意外性のある人物だった。
 しっかり者で姉御肌な性格とは裏腹に、ミーハーで女子にはありがちな詮索好きな一面もあり、いかにも女々しているのかと思えば、人前でありのままに振舞う大胆さがある。
 もっとも、やたらと詮索好きだと思っていたのは、正体が知れてみれば、案外類からの指示だったのかもしれない。
 「いいなあ、つくしちゃんはイケメンの彼氏とラブラブで~」
 「……」
 「もうこの際だ!専務との馴れ初めから、愛が燃え上がるまで…を一挙に告白してもらおう~」
 本人の好奇心のあるがままだった可能性も否定できず。
 「さ、遅くなっちゃったな…。スーパーはもう叩き売り終わっちゃったし」
 「ええっ?なにげにスルー?お姉さんが今日は奢っちゃるから、呑んで行こうよ~」
 「…いやぁ」
 ガッシリと腕を組まれて、真っ直ぐ帰らせてもらえなそうな勢いだ。
 ロビーを通り抜ける際、横目でSPの堀田を探すといつもどおりそこに控えて、だが、眞子とは連携をとっていないのか、つくしの視線を感じて会釈をするのみで、いつもと様子はまったく変わらなかった。
 「江島さん、堀田さんと同僚じゃないの?」
 「シッ」
 口元に人差し指をあて、小さくねめつけられる。
 「…あたしはつくしちゃんの同僚」
 「ああ、そうなんだ」
 「基本はね。経歴を買われて引き抜かれたんだよねぇ~、つくしちゃんが出向してくる少し前」
 聞いてみれば、実際に花沢物産の事務職として勤め出したのは、意外なことにつくしがフレッシュラインから花沢物産に出向してから少し後のことで、コネによる中途採用という触れ込みだった。
 
 「実際、事務職はコネの子もけっこういるんだよね。中途採用は珍しいけど」
 「へぇ」
 「もしかしたら、つくしちゃんのために、専務、あたしを引き抜いたのかも?」
 「いやいや~」
 さすがにそれはないだろう。
 つくしも詳しいことは知らないが、どうも社内には他にも類の目や耳になっている人物がいるようだし、眞子の裏話によればそれは社長や高階などの派閥も同様なのだという。
 …一平社員には知られざる、闇の深淵?
 類といる以上、少なからず関わっているというのに、その自覚がつくしにはほとんどない。
 「…だって、以前につくしちゃん、同僚に嫌がらせされてたことあるじゃない?」
 「う~ん」
 あるじゃない?と言われても、なにげに一時期珍しいことではなかったので、眞子が言うのがどのことかわからない。
 「って、いっぱいされてたっけ」
 困ったように言われて、つくしも苦笑する。
 それもこれも、類との関わりのせい。
 英徳時代から連綿と続く、彼らF4と関わることで必ずセットでついてくる負の部分だった。
 美しく、富と権力を兼ね備えた彼らは輝かしく、それだけに必ず嫉妬や羨望がまとわりついてくる。
 時には彼ら自身にその負債が降りかかることもあっただろうが、むしろ彼ら自身よりもその彼らと近しいものにこそ、その敵意は向けられ、災厄を呼び込むことになった。
 光が眩しければ眩しいほどに、目は眩み、闇は濃くなる。
 ただ一人の男を愛しただけなのに。
 そんなつくしの心など子供の戯言と誰も本気にはしてくれないのだ。
 当の類や、司以外には。
 「もしかして、そういうことも報告してた?」
 「…まあ、最初の頃は、遠目で見守るっていうか?警備対象っていうより、観察対象って感じだったかも」
 実際には監視対象だったのだろうと、察する。
 けれど、
 「江島さん、いいの?そんなこと、あたしに話しちゃって…」
 「ん…、ホントはダメなんだろうけど」
 「だよね?」
 ならば、なぜ話してくれるのだろう。
 いくら正体が割れたにしろ、そもそもそれさえしらばっくれることさえできたのではないか。
 つくしが不審に首を傾げる。
 「…実はさ、専務に指示されてたんだよね」
 「え?」
 「もしバレちゃったら、認めてもいいって」
 「それって…」
 「つくしちゃんの知りたいこと話してかまわない。…手の内は晒しちゃっていいよ、ってね?」
 「……」
 つくしの片腕にぶら下がった眞子が、彼女の横顔を人が悪いニヤニヤ笑いでジッと見る。
 「ふふふ、愛されてるね」
 真っ赤になった自分の顔などつくしだとて十分自覚できていて、とてもじゃないが指摘などされたくはない。
 「いいなあ、陰からずっと守ってくれる王子様!…まあ、ちょっと、一歩間違ったらストーカーっぽいけど」
 「ぷっ」
 夢見がちなセリフを言ってるかと思えば、妙に現実的な一言に、思わず噴き出した。
 「専務って見た目淡泊そうだけど、実はすごい情熱家なんだねぇ」
 すごい誤解をされている気もするけれど、かといってそれをどう解けばいいのかつくしにはわからない。
 「…そこらの普通の人や、キモオタとかに粘着されたらすごい怖いし、最悪だけど、専務にだったら全然OKよね!って、いうか、望むところだよ~。ホント、羨ましい。どうやったら、あんな高スペックな男性をゲットできるのか、ぜひ、あたしにも伝授を!」
 頼み込んでくる眞子の目はかなり大マジで。
 どうしたものかと思いつつ。
 …類はどうしたって、粘着質とは程遠いよね。むしろ、粘着質って言ったら。
 なんとはなしに一人の男を連想して、眞子とエントランスの自動ドアを抜けた先…。
 「…え?」
 ダックスフンドのような長大な高級車に寄りかかり、人目もそばだてる美しい男が紫煙を燻らせていた。
 ぷかりと浮かんだ白い煙草の煙が、妙にクローズアップされてつくしの目に映る。
 煙草を片手にスマホをチェックしていた男が、彼女の視線に気が付いたように顔を上げた。
 「道明寺」





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