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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第七章 裏切②

昏い夜を抜けて341

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 ドンッ。
 「きゃっ」
 飛び出してきた女性が抱きつこうとしたのを、チラッと見ただけで司が邪険に突き飛ばす。
 一瞬グッと踏んばりたたらを踏んだものの、勢いを殺せず、女はそのまま後ろ向きに転がってしまった。
 とっさに体はひねったようだったが、固い大理石の上に体をぶつけて、泣いているのか突っ伏したまま蹲ってしまって、唖然と成り行きを見守ってしまっていたつくしが慌てて歩み寄る。
 「だ、大丈夫ですかっ!?」
 「…放っておけ」
 「何言ってんのよ!女の人に何を…」
 冷たい表情の司がつくしへと意識を向けたその瞬間…。
 隙をついた女が、床に転がったまま司へと足蹴りを繰り出す。
 「うっ!?」
 長い足の間に突き入れられた足に足首をはさみ込まれ、ねじるように引き倒されてしまった。
 さすがの司も耐え切れず、勢いよくつんのめって、前屈み床に懐いて呻く。
 「ぐっ…、痛ってぇ」
 「ど、道明寺ッ?!」
 事態についていけないつくしの驚愕の視線をよそに、泣いていたはずの女が仁王立ちに立ち上がって、司へと中指立て威嚇した。
 「思い知ったか!」
 「…この猿女ッ」
 「せっかく遥々NYからついて来てやったって言うのに、なによ!オンナの子にその仕打ち」
 「どこが、女だ。てめぇ、ぶっ殺すぞ」
 スラックスの埃を叩いて立ち上がる司の額、縦横無断に走った青筋が怖い。
 司の憤怒を目の当たりにして、脇にいるつくしの方がビクッと怖気て仰け反ってしまう。
 …うは、この顔、久しぶりに見た。
 しかも、さすがの気迫だ。
 司は学生時代も並々ならぬオーラの持ち主だったけれど、年を得てさらに威圧感を増していて、そんな彼に対するつくしの免疫もいまではすっかり切れてしまっている。
 そして、そんな司よりも凄まれている女に感嘆して、つくしは口をあの字で開けたまま呆然と魅入いった。
 …凄いこの人。
 そんな彼女の視線に気がついたのだろう。
 司へと中指を立てていた女が、つくしを振り返る。
 怪訝に眉根を寄せ、だが、何か思い当たったようで、ポンと手のひらに拳を打ち付けて、素っ頓狂な叫び声を上げて、つくしばかりか司をも驚かせた。
 「あっ!司の携帯の待受の女の人っ」
 「「えっ!?」」
 ハモって、思わず互いに顔を見合わせる。
 先に視線を反らせたのは…なぜかつくしの方で。
 照れ臭そうにわずかに頬を染め、柔らかく微笑む男の美貌に、動悸が高鳴らされる。
 …なに、ドキドキしてんのよ。
 この男の実態を知っているとは言え、見た目だけは極上の美貌の主なのだ。
 そう自分に言い聞かせ、動揺している自分を立て直す。
 「…たく、誰だ、こいつを屋敷に入れたのは」
 溜息をつきつつ、司が視線を走らせた先、タマ退職後の現在、邸内の管理の総責任者である執事長が目を伏せる。
 だが、執事長の立場では女を退けることなどできないのは司もわかっていることなので、「わー、凄い、凄い」などとわけのわからぬ歓声をあげている女を無視して、困惑した顔で立ち尽くしているつくしの腕を再び掴んで歩き出す。
 「あ!待ってよ、司ッ」
 「……」
 「……ちょっと、道明寺ッ」
 二人の女の抗議は完全無視。
 大股歩きでつくしを引きずって、たどり着いた部屋の前、邪険な態度そのままについてきた女の眼前でドアを締めてしまう。
 即座に、鍵を閉めて、女を締め出す。 
 そして、ドンドンッ、ガンガンッとドアを叩いている女へと、司は低い声音で恫喝して黙らせた。
 「てめぇ、それ以上騒ぎ立てるつもりなら、今すぐ邸から叩き出すぞ。俺はこれから昼飯食って、そのまんま会社に戻らなきゃなんねぇ。その間に少しでも顔出してみろ。俺んとこのババアとお前んとこのオヤジの間での話がどうであろうと、この邸には完全に出入り禁止だ。一応、仁義守って、盟約した手前てめぇの厚かましい行動には目を瞑ってきたが、俺にも忍耐の限界つーもんがあるからな!」
 「……」
 納得したのだろうか。
 「…わかった、ごめん、司」
 シュンとした声がドアの向こうから聞こえ、遠ざかる足音が聞こえる。
 つくしが見上げた視線の先、司がフンと鼻を鳴らして、あとはもうドアの外を振り返らず、彼女を居間のソファへと促した。





 「……ハァ」
 キョロキョロと周囲を見回し、久方ぶりに訪れた道明寺邸の威容を眺めながら、つくしは小さく溜息をつく。
 つい司の強引な言動に、引きずられるようにここまで来てしまい、さらに彼の現在の婚約者の強烈な登場の仕方に驚いて、つい自分の立場を忘れ唯々諾々と従ってしまった。
 …さっきの女の人、たぶん、そうなんだよね?
 あえて避けることはしていなかった、司に関する雑誌の記事などで何度か目にした女性。
 F3の会話の中でも何度か出てきたように記憶している。
 興味がない…いや、あえて興味がないふりをしてきたので名前までは聞き覚えていなかったが、ショートカットの溌剌とした美貌に見覚えがある。
 彼女のことはともかくとして、過去の経緯といい、自分がいていい場所だとは思えない。
 今にもそこかしこから司の母親…道明寺楓が飛び出してきて、彼女へと蔑みの眼差しを投げかけ、なぜ、こんなところへいるのかと、弾劾される被害妄想に駆られそうだ。
 もっとも司の方はそうは感じていないのだろう。
 ドアの外の喧騒が遠ざかるとともに、女の登場で不機嫌に歪められていた顔を緩め、つくしへと屈託なく微笑みかけてきた。
 が…。
 彼女が辞去を告げようとつくしが口を開きかけた途端、司の胸元で鳴り響いた携帯電話の音に邪魔をされ、先程まで何か、彼女には理解できない外国語でやり取りを始めてしまっていた。
 そうした姿は、花沢物産専務として活躍している類で見慣れているとは言え、つくしに不思議な感慨をもたらせた。
 …昔とは違う。
 いくら高校生の時のような懐かしさを伴う会話をしようとも、やはり昔の司とは違うのだとヒシヒシと感じさせられた。
 凄い男だとは思う。
 また、F3を見慣れていても、彼が類稀なる美男であり、世間でいう『イイ男』だと見惚れさせられてしまうのも事実。
 しかし、昔のような甘酸っぱい、どこか浮き立つようなトキメキを感じない自分を自覚して、時の流れだけではない自分の中の変化も自覚する。
 …当たり前か。
 あれほど、こだわり続けた男。
 軋るような苦悩と後悔、哀しみと、罪悪感と…その他様々な複雑な感情を抱き続けていた相手。
 今感じているのはたぶん、懐かしさ。
 そして、あの時の自分の惨く、卑怯な行動への謝罪の気持ちだけ。
 「おい、食堂の方に飯、用意させたから移動するぞ。それとも、こっちで食うかよ?」
 「…ごめん、道明寺。食事より、あたし、あんたに話したいことがあるの」





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