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「中・短編」
恋のから騒ぎ…15話完

南の島の休日~あたしの男に手を出すな!⑪

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 「なんじゃ、こりゃ」
 つくしの叫びで引き返し、司は寝室のドアを開け放ったまま呆然としたつくしと顔を見合わせた。
 「…あたし、この光景二回目」
 「あ?」
 キングサイズのダブルベッドの周囲は、わずかに色あいに違いはあるものの、基本真紅のバラ、バラ、バラ。
 いったい、何千本あるんだ。
 あまりの匂いのキツさに頭痛を憶えて、鼻を押さえたつくしはドアを閉めようと手に持ったドアノブに力をこめた。
 「ちょい待て」
 何を発見したのか、司はつくしの手を引き留め、スタスタと薔薇の花の洪水の中への分け入ってゆく。
 コイツ、普段は野獣のくせに似合いすぎ。これじゃあ、マジでメルヘンの王子様じゃない…ちょっと、野性味がありすぎるけど。
 ちょっとムカつきながらも、何か封筒を手にして戻ってきた司の手元を覗き込んだ。
 「なにこれ?」
 立派な刻印が押された、封筒からして普通じゃない高級紙が使われた中身は、英語で書かれた権利書。
 つたない英語能力で読んでみても、どうも不動産系の権利譲渡書類に思える。
 「これって?」
 「この島に付属している小型群島の一つである、ラヒム家所有の別荘の不動産登記書類と、その権利譲渡書類だな」
 「ええっ?」
 不機嫌に眉根を寄せ、司はつくしの手を掴むと寝室のドアを閉め、ピンと指先で封筒を弾いて居間のコーヒーテーブルの上に放置する。
 そのまま居間を通り抜け、もう二室あるうちの寝室のドアを開けて、ベッド脇にある電話に手を伸ばした。
 「…いいから、お前風呂入って来いよ。ルームサービスとっておくから、今日はこっちの部屋で寝ようぜ。臭くってしょうがねぇ。話はメシ食いながらだ」
 自分だって昔、人の家に山ほど薔薇の花を送り付けてきたくせに…、と思いながらもイライラと足踏みしながら、料理を注文する司を横目につくしはシャワールームへ入った。



 結局、ことの詳細は次の日の朝、朝食の席での説明となった。
 最終日ということで、朝からバイキング形式の立食パーティ。
 まだ時間帯も早く、昨日は各々に楽しんだらしい総二郎とあきらはまだ姿を見せていない。
 昨日、シャワールームから出ると、よほど疲れたのか司はベッドの掛布の上で大の字になって眠ってしまっていた。
 下敷きになっていた薄手の掛布を引きずり出して司にかけながら、意外に幼い寝顔を晒して眠る疲れた男の額と頬に唇を落としたのは内緒のことだ。
 隣に潜り込むと、深い眠りにいるはずの司が無意識に抱き込んできて、優しい温もりの中、つくしは安らかな眠りを貪ることができた。
 注文したルームサービスのことはすっかり忘れ、チャイムの音にも気づかずに朝まで眠り込んでいたのだが。
 そして、目覚めて一番に司が行ったことは、同行させていた秘書にコーヒーテーブルの上に置いておいた書類一式とバラの花を送り主に突き返させた。
 「ええ?じゃあ、不動産登記書類とバラって」
 「あのニヤケ王子がよこした、昨日の礼つうことだな」
 司は確かに、ネイト王子の命の恩人ともいえたが、そのお礼に島一つ。
 「島の一つや二つ受け取っても良かったんだけどな。あの軟弱チャラ野郎と関わりもつのは真っ平ごめんだから、さっさと突っ返した」
 そこまでネイトを嫌う司の真意はよくわからなかったが、島一つをあっさりやり取りすることに抵抗を感じない人種に改めて違和感を憶える。
 たびたび、司との価値観の違いは感じさせられてきたが、こうまで違うと笑うしかなかった。
 やっぱ、道明寺はあの王子様と同じ人種なんだよね。
 「でも、あのバラはお前宛だったけどな」
 「え?そうなの?」
 「ああ。昨日、お前がなにくれとなく世話してやったろ?その礼だと」
 「それくらいで?そんな大層なことしていなかったのに。じゃあ、あんたが突っ返しちゃって、失礼だったんじゃないの?」
 「…なんだよ、返したら悪かったのかよ?」
 一々ヤキモチを焼いて、突っかかって来る男が時々ウザイが、愛情の深さを見せてくれた昨日の今日で、つくしも邪険にはしづらい。
 「そんなことないよ。あれだけあると、ホント匂いキツイし。あんたに昔もらって以来、けっこうトラウマになってるし、もうコリゴリ」
 なんじゃそりゃ、と司は首を傾げて、空になったつくしの皿を取り上げた。
 そのまま、通りかかったウェイターに渡し、かわりにジュースのグラスを受け取り、つくしに手渡す。
 「メシ、もうちょっと食うか?」
 「あ、ううん、ありがと。もう、お腹いっぱい」
 「本当か?ケーキなら食えるんじゃねぇ?」
 「うーん、そうだね、甘いものはちょっと食べたいかな。あと、フルーツ」
 OKと、つくしの為にケーキとフルーツを取りにゆく司は、甲斐甲斐しい。
 湿布した足がまだ全快じゃないこともあって、司に任せ、つくしはチビチビとジュースを飲みながら周辺を見るともなしに見回した。
 「…あ」
 『おはよう、つくし』
 ちょうど、入り口から姿を現したダイアンと目があい、ニッコリと微笑みかけられる。
 その美しい笑みは同性でも惚れ惚れするほどだ。
 今日は、ネイトではなく別の男性にエスコートされてたが、つくしを見つけて男性と別れ、つくしの元へと歩み寄ってきた。
 『おはようございます、ダイアンさん。いいんですか?』
 チラッと歩み去ってゆく男性に目を向け、ダイアンに尋ねる。
 『いいのよ、彼はただのお友達。今日の立食パーティは特にパートナー同伴というわけではないから、ちょっと一緒しただけよ。つくしは夜のパーティにも参加する?』
 『ああ、ええ、はい。最終日は、みなさんお揃いになるということですので、道明寺のパートナーとして参加させていただきます』
 『そう、なら、とっても楽しみだわ。本当は、もっと、つくしとたくさんお話してお近づきになりたかったのに、明日にはお二人は帰ってしまわれるのよね?』
 ネイトとダイアンはまだ数日滞在するようだったが、つくしたちは明日、それぞれに帰国することになっていた。
 司はNYへ、つくしとF2は東京へ。
 『…そうだ。お花、ありがとうございました』
 『花?』
 『えっと、バラの花を部屋一杯にいただいて』
 『ああ、あれは私たちのあなたの親切へのお礼の気持ちだったんだけど、あまり気に入ってもらえなかったみたいね』
 『いえ、そんなことはないですっ』
 寂しそうに微笑んだ美女に、焦ってつくしが一生懸命否定する。 
 『でも、ネイトのところへ返却したのでしょ?』
 それを言われるとフォローが辛い。
 『えっと、とても嬉しかったんですけど、あたしたち明日には帰国しますし…。今日は一日パーティ続きだから、せっかくいただいても堪能する時間があまりないから、もったいないかなあ、って』
 かなり苦しい言い訳だが、そういわざる得ない。
 タラりと内心汗をかきつつ、目をキョロキョロさせるつくしに、ダイアンはクスクス笑いを洩らした。
 馬鹿にしているようではなかったが、つくしは頬を羞恥にかすかに紅潮させ、不審げにダイアンを見返す。
 『ああ、ごめんなさい。あなたを笑ったわけではないのよ。ただ、あなたったら、どうしたら私の気を悪くしないか、一生懸命考えてくれているのが丸わかりで可愛いなって。私たちの周りには今までいなかったタイプなの』
 似たようなセリフは司やF3からもさんざん言われなれているので、困惑しつつもつくしは、はあ、と頷くしかない。
 そうこうしているうちに、広間の入口にあの意地悪三人娘が姿を現した。
 先頭に立っていたどうやらリーダー格の女性が、まずダイアンに気が付き、歩み寄ろうとして傍らにいるつくしに気が付く。
 驚いた顔をして立ち止まると、他の二人も気が付いて、ヒソヒソと耳打ちしあう。
 つくしの表情を見て、その三人に気が付いたダイアンが、双方の様子に首を傾げる。
 『どうかした?つくし。…あの子たち??』
 つくしは気をとりなして、一歩ダイアンの後ろに身を引きながら、笑みを浮かべた…ちょっと、引き攣っていたかもしれない。
 『あ、いいえ、なんでも』
 『…そう?そういえば、昨日、つくしたちは街へ出たのよね?ネイトのところに司から電話があったらしいけど、何かあったの?』
 ネイトとダイアンはツーカーの仲だったが、昨日の夜は双方それぞれに楽しみを見出して過ごしていたので、まだ今朝は顔を合わせていなかった。
 『え、いえ。実は、昨日、ちょっと迷子になっちゃいまして…』
 『もしかして、あの子たちと関係ある?』
 俯きかけていた顔を上げたが、ダイアンの視線はつくしでも、例の令嬢たちにでもなく、あさっての方向…つくしのケーキを取りに行っていたはずの司に向けられていた。 
 ひえぇ~。
 あとはもう残り二日過ごせば帰国して、二度と?は合わない人たちだったので、あとは気を付けていればいいと、司が事を荒立てるのを厭って、つくしは加害者を明らかにしなかった。
 一度はパーティに出席していたご令嬢だったと話してしまったが、やっぱり気のせいだった。
 薄暗くて、自分を閉じ込めた相手の顔がわからなかった。憶えてない…。
 じゃあ、嫌味を言ってきた相手を言え、と言われれば、もう済んだことだから、の一点張り。 
 確かに一歩間違えれば犯罪に巻き込まれる大事となったかもしれないが、極寒の地でもあるまいし、廃屋の倉庫に閉じ込められただけで、それほどの悪意があったとも思われない。
 できる限り、司の母や周辺の者たちに司を咎めさせるような事態は起こさせたくない。
 司もつくしの気遣いを汲み取ってくれたのだろう、思いっきり不満な顔をしていたが、とりあえずはそれ以上問い詰めずにいてくれた。
 しかし、その司の視線の先にいるのは…。
 三人の令嬢たちの顔を見据える司の冷ややかな目は、眼光鋭く、とてもじゃないけれど何もしでかさないなんて思えない。
 ダイアンの話を右に左に聞き流しながら、すっかり生返事だ。
 「おっ、はよ、牧野。なんだよ」
 『おはようございます、ミス・ダイアン』
 総二郎とあきらが令嬢たちとは別の入り口から入ってきて、美女を目に急ぎ足で歩み寄ってくる。
 「おはよう、西門さん、美作さん」
 『おはようございます、皆さん』
 社交的なF2と如才ないダイアンが微笑みを交し合い、談笑するのを横目に、つくしはいつの間にか自分のもとへと戻って、彼女にケーキの皿を渡す司の顔が気になってしかたがなかった。
 …なんか、ビシバシやばい雰囲気が伝わってくるんですけど。
 チラチラ見るつくしの視線に答える司の眼差しは、どこまでも甘く優しかった。



 朝食に続き、昼食、アフターヌーンティと続き、三々五々にバカンスに散っていた招待客たちがホテルに戻ってきた。
 司はさすがに、島に滞在中ずっとバカンスとはいかず、各界の有力者が集まったこの時を機会に、精力的に動き回っていた。
 つくしも、司に余計な心配をかけないように外出したりせず、食事はF2と、あとは部屋でのんびりしたり、昼寝したりして穏やかな時間を過ごした。
 …こんな食っちゃ寝を続けてたら、とんでもなくブクブク太りそう。
 鶏がらと言われているくせに、たった一日ダラダラと過ごしただけで、なんとなく落ち着かないのは身に染みた貧乏性ゆえにか。
 さすがに、夕刻にも近い時間になってくると、部屋でジッとしているのも辛くなってきた。
 アフターヌーンティ以来、あきらと総二郎もそれぞれの時間を過ごしているのか姿を見かけない。
 せっかくなので、ホテル内の散策でもしようかとつくしは、迷子にならない程度に周辺探索に出発した。
 あれ?あれって、ネイト王子とダイアンさん。
 色とりどりの南国の花と、馴染みないエキゾチックなカリブの石像が美しいパティオの片隅で、この美しい庭の装飾の一部のごとき美しい一対の男女が身を寄せ合って話し込んでいる。
 時々微笑みあう二人の様子は、彼等が恋仲だといわれても不思議はないほどに親密でお似合いだった。
 『…司が…』
 司の名前に、つくしは思わず、柱の陰に身を滑らせた。
 風に乗って、とぎれとぎれに言葉が運ばれてくる。
 『…に、もらった…だからね。象でもイチコロだよ?』
 『いいの?』
 『…相手に、指を咥えていても仕方がない。君はどうする?』
 『ふ~ん、いいわ。…な…も素敵だけど、私は、…も、可愛くて…だもの。でも、後で私も味見…ね?』
 ふと視線に気が付いたのか、ダイアンがこちらを見ようとしたので、つくしは急いで柱の後ろに隠れた。
 やだ、私ったら、まるで立ち聞きしてたみたい。
 ドキドキする胸に手を当てながら、自分の行動が立ち聞きそのものだったことに気が付いて、つくしは思わず周囲を見回す。
 誰もいなかったことに安堵の溜息を一つ付き、だが、その胸のドキドキが実は自分の不審な行動によるものだけでなく、美男美女二人の会話の内容にもあったことに気が付いた。
 なんだろ、すごく、嫌な感じ。
 その嫌な感じが何に起因するのかわからなくて、いつまでも気持ちが悪い。
 「お、牧野、どこ行ってたんだよ?そろそろ、夜のパーティの仕度にかかんねぇと、マズイだろ?」
 呼ばれて前を見るとあきらが、つくしを探しにきていた。
 背後を振り返ると、すでにネイトとダイアンの姿はない。
 「んだよ?」
 「ううん、なんでもないの。ごめん、探させて」
 頭を一つ振ると、つくしは余計な疑念を振り払い、今日のパーティの準備に取り掛かった。




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ふにゃろば様^^

こんにちは^^
きっと、もう『触らぬ神に祟りなし』だと骨身にしみてくれることでしょうw?

ふふふ、でも、二人があまりにつくしちゃんを気に入っちゃうと、司君嫌がりそう。
違う意味でもw

そうですね、来週は『夢で逢えたら』再スタートになりそうです^^
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