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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第七章 裏切②

昏い夜を抜けて339

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 ブー、ブー、ブー。
 取締役たちと一通り挨拶を取り交わし、一部の人間とはそのまま打ち合わせへ向かう算段を行う。
 第一秘書・三田村の報告に耳を傾けながら、胸元でなる携帯電話のバイブの音に類は気がついた。
 波乱の株主総会を終え、一足先に会場を後にしようと立ち上がった父や彰の表情は硬い。
 チラッと類を見るその目が探るようで、警戒心も顕なのに、内心類は少し可笑しかった。
 …俺のこと一体何だと思ってるんだろう。
 まさか、彼らの上に起こる全ての障害は彼のせいだとでも?
 侮られるわけにはいかなかったが、彼らの彼への猜疑と敵意が滑稽で…、同時に虚しくほろ苦い。
 以前には感じなかった感情。
 これもおそらく、あのお人好しの女の影響なのだろう。
 「…専務?」
 やはり携帯のバイブの音に気がついていた三田村が自分の懐を探って、自分が発信源ではないことに気がつき、類へと注意を促す。
 「ああ、悪い」
 一言断って携帯をチェックすると、つくしにつけているSPの堀田からだった。
 彼女に何事かあったのだろうか。
 焦りに内心動揺しながら、その場を移動して受信をタップする。
 「……俺」
 『堀田です。総会中、申し訳ございません』
 「いや、もう終わったところ。そっちは…外出中だっけ?それとも、会社?」
 困惑しているようではあったが、堀田の声が動揺していないことに気がつき、類がホッと息をつく。
 おそらく何か不測の事態が起きて、指示を求めて電話してきたのだろうことはわかる。
 けれど、声の調子からつくしの身に危険が迫っているとか、怪我をする事態に陥ったとかそういうことではないことがわかって安堵した。
 …総二郎に会ってるんだっけ。
 類に知られたくないことでもあり、堀田を一時的にでも遠ざけようとして、つくしとの間で押し問答にでもなってしまっているのかもしれない。
 社内でSPを連れ歩くのを嫌がるつくしの為に、就業中堀田には社のロビーで待機させ、別に秘書に潜り込ませている眞子がつくしの警備にあたっているのだが、意図せずしてそのことが半ば彼女をスパイしていることになってしまっている。
 …牧野には、嫌がられるだろうけど。
 当然、眞子や堀田を通じて、つくしが今日、半休を取って総二郎と会っていることは彼らから報告を受けていたが、そもそもつくし本人からも許可を求められ、報告されていた。
 類は上司なのだ。
 そこに他の理由付けがなかったことはいかにも彼女らしかったが、当然、いくら堀田や眞子をつけているにせよ、彼らの存在を過剰に意識させないためにも、一応はその理由を尋ねている。
 「総二郎がまさか引き止めでもして、何か強引なことになってるとか?」
 つくしのことは信じている。
 けれど、相手は総二郎だ。
 友人としてつくしに信用されていることもあるが、しかし百戦錬磨なあの男の手八丁口八丁に彼女が太刀打ちできるものだろうか。
 丸め込まれているのではないかと、わずかに心配がもたげる。
 『…いえ、西門様とは正午前にお別れになられました』
 「ふぅん?一緒にランチするようなこと言ってたけど」
 …じゃあ、まだ、お昼食べてないかな。
 午後からは、他の取締役たちとの会合の約束がある。
 けれど急げばつくしと一緒に昼食を取れるかと、腕時計を確認して、離れたところで難しい顔をしている三田村を覗き見る。
 『道明寺副社長が…』
 「………は?司??」
 思わぬ名前に、一瞬、類が絶句した。
 『牧野様は現在、道明寺副社長のリムジンに同乗されておりまして…。追跡しようとしたところ、道明寺家のSPによって阻止されてしまいました。申し訳ございません』





 「…いいかげん、ブスくれんのやめろよ」
 秘書に渡された書類を読み進めながら、司がつくしへと声を掛ける。
 強引に車に連れ込んだものの、発車してしばらくの間は、『車を停めろ!』、『仕事がある!』、『この誘拐魔!』とずっとつくしは悪態をついて、車を降りようとしていた。
 だが、ガンとして司が要求を受け入れず、我が道を通してしまったためさすがの彼女も諦めたのか、そっぽを向いて窓の外を眺めたまま、すっかりだんまりを決め込むようになってしまっていた。
 …さすがに、無理やりすぎたか。
 たぶん、日を改めた方が良かったのだろう。
 けれど、数年ぶりに目にして、声を聞き、気配を感じた彼女の存在に、司自身も顔に出していなかったがかなり舞い上がっていたのだ。
 すごく綺麗になったと思う。
 彼女には意地を張って、憎まれ口を叩いてしまった。
 けれど…。
 別れた時には肩くらいだった髪が伸びて、出会った時同様に長く真っ直ぐでしなやかな黒髪が背を覆っている。
 高校時代にはふっくらとして丸みを帯びていた横顔は、すっきりとしたフェイスラインになっていて、薄化粧に生えるアイラインやほの赤い口紅が色っぽい。
 華奢な四肢はそのままに、上品でセンスのいいワンピースに包まれた肢体は女らしく丸みを帯びて、元気いっぱいといった感じだった子供子供したところが抜けて、落ちてきた髪を耳に掛ける仕草さえ女らしかった。
 また、ふんわりと香る匂いはシャンプーの清涼な香りだけで、司が普段接する化粧と香水臭い上流階級の女たちとは全然違う。
 大人になったつくしは、司の目にどんな女たちよりはるかに好ましく魅力的な『大人の女』に成長していた。
 「……なによ」
 「あ?」
 「人のことジロジロ見て」
 どうやら、いつの間にか凝視してしまっていたらしく、つくしも居た堪れなかったのだろう。
 恥ずかしそうに目元に薄らと掃いたわずかな赤味からさえも、目が離せない自分に司は苦笑した。
 …ガキかよ、俺は。
 「機嫌治ったのか?」
 「…機嫌って」
 「悪かったよ、急だったのは認める」
 司の素直な謝罪に、つくしが目を瞬かせ、だが、ふーーっと息を吐いて小さく笑った。
 「…あんたもやっぱり大人になったね。昔は、謝るなんてことできない男だったのに」
 …お前にだけだ。
 そう思いつつ、少しも集中できなかった手の中の書類を投げ出し、やっとこちらを見たつくしへと向き直って、『今』の彼女を内心でたっぷりと堪能する。
 「お前とはゆっくりと話したいと思ったから誘った。昼飯まだなんだろ?久しぶりなんだ、募る話もある。飯くらい付き合えよ?」
 「…うん。あたしも…あんたに話したいことあったんだけど」
 迷ったように目を彷徨わせたつくしだったが、
 「でも、ホント、ごめん。あたし、半休で出てきてたんだけど、午後から仕事なんだ。またの機会じゃダメかな?」
 伺うような上目使いに、司は意図的に視線を反らし、懐から携帯電話を取り出す。
 「…お前、確か、今、類んとこで秘書やってるんだろ?」
 「え?あ…うん、よく知ってるね」
 つくしは知らなかったけれど、彼女のここのところの身辺は司もある程度調査させていたし、桜子を通じてかなり詳しく知っていた。
 「まあな、そこはな」
 「…美作さんとか、西門さんから?」
 「そんなところだ」
 司は詳しくは語らない。
 しかし、それでつくしはあっさり納得して頷く。
 「類には俺から断ってやるよ。帰りは送ってやるから付き合え」
 「え…でも」
 迷うつくしの返事を待たず、さっさと司は類の番号をタップし、呼び出した。
 プルルルルルル、プルルルルルル…。
 「ちょっと!道明寺」
 『……はい』





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