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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第七章 裏切②

昏い夜を抜けて336

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 ガタン、バタン。ザワザワザワ。
 親子の語らいの緊張感が極まった頃、疎らだった段下の株主席はほとんど埋め尽くされ、総会開幕の準備が整って、中央の席に今回の総会を最後に勇退が決定している取締役副社長が司会進行役として席に着いた。
 馨や類の隣の席の取締役たちも続々と到着し、会釈されるにいたって、ごく個人的な会話は自然口を噤まれ、それぞれに久しぶりに顔を合わせた同僚たちとの旧交を温め合う。
 ふと、類が視線を流した先、大株主用に用意された座席の一つが空席になっているのを見ているのに高階が気がついた。
 あらかじめ秘書に用意させておいた大株主の資料を手元に引き寄せる。
 …なるほど。
 T&Tコーポレーション。
 さきほど馨が話題に載せた新しい大株主で、いくら花沢物産の株主総会とはいえ、名義は会社だったのでおそらくCEO(最高経営責任者)やCOO(最高執行責任者) 級の最高幹部が出席することはあるまいが、現在の社長のアレクシス・バルマーはどうやら起業を行った人物ではなく、近年その能力を買われてその地位へとヘッドハンティングされた人物らしい。
 馨などは類の息がかかった会社なのではないか、あるいは高階の?と疑念をもっていたらしいが、それは高階にしても言えることで。
 よもや会社の第一位の大株主である馨が何かを画策するのにダミー会社を必要とするとは思えないが、類の可能性は大いにありえる。
 窮地にあるはずの類の鷹揚な態度もその疑念を後押しする根拠ともなり得たが、下手に動けば類自身が否定したように、インサイダーを疑われ逆に窮地に陥る材料ともなり得るのに、そんなあからさまな陽動を行うものだろうか?
 …それに資金はどうする。
 …第一目的は?
 たかだか8位の大株主になったところで、1位の父親の意を覆せるはずもなかったし、趨勢の高階を退けることなどできようはずもない。
 「…以上、監査報告を終わります」 
 いつの間にか、総会は開幕し、議題は進んで議決権の行使にについて。
 司会者役の目配せを受け、そろそろ自分の出番が間近であることを思い出した高階は、謎の大株主から意識を反らした。
 が…。
 ザワザワザワッ。ワッ―――――ッ。
 株主総会の雰囲気にそぐわぬ一際大きな歓声が会場の外であがった。
 完全防音というわけではなかったが、会場内はかなり分厚い壁に囲まれ、毎回注目度が高く、部外者である報道陣も詰めかける花沢物産の株主総会とはいえ異様な出来事だ。
 「…なにごとだ?」
 眉根を寄せた馨が、周囲の取締役たちへと視線を向ける。
 けれど、誰もその事態を把握している人間はいないらしく、当然、視線を向けられた高階にしても答えられない。
 フッと空気が緩む気配に、意図なく高階が隣へと顔を向ける。
 テーブルに片肘をつき、顎杖をついていた彼が目を煌めかせ、唇の端に笑みを浮かべているのを怪訝に見咎める。
 閉められていたドアが開けられ、遅れていた株主が顔を表した。
 「…来た」
 「類?」
 「ど、道明寺副社長だッ」
 会場の一番後ろ…株主席から上がった声に、ギョッと高階と馨が視線を会場入口へと視線を戻す。
 クルクルの特徴的な髪型、日本人離れした長身、威圧的なオーラ、そしてローマ神像もかくやという完璧な美貌に彼の正体を疑問に持つ者などいなかっただろう。
 シニカルな冷笑を浮かべ、周囲の騒動など一顧だにしていなかった顔が、まるで視線を感じたかのように壇上に座るたった一人へと真っ直ぐに向けられた。
 「…類」
 「司…」
 交わる視線と視線。
 今、二人には互い以外の何者も目には入っていなかった。





 総二郎と別れ、つくしはカフェを出た。
 カフェとはいえ、音に聞こえた超一流ホテル、ザ・メイプルのカフェ。
 ちょっとした軽食のサンドイッチはもちろんのこと、ここのグラタンやドリアはどこのレストランにも負けない味だ。
 「…類だったら、フルーツグラタンを食べるところなんだろうけど」
 総二郎が後にしたカフェに一人残るには、周囲の視線が痛すぎた。
 込み入った話をする前に、彼が人払いをしていたので、話の内容までは聞き取れてはいなかったと思うが、女性客やら従業員の視線が興味津々なのは気のせいではないだろう。
 日頃から他人の視線やら思惑などどこ吹く風のナイロン製ザイルでできた神経をもつ総二郎やら、類とはわけが違うのだ。
 とてもじゃないけれど、その場に一人残るのは辛すぎる。
 「どうしようかな、時間はまだあるけど」
 ちょうど、今からだとあちらこちらの会社の昼休みに入る頃だろうから、下手に外に出て食事をしようとしたら、混雑に巻き込まれるかもしれない。
 …うーん、半休だからそこんとこ考えて移動しないと、遅刻っちゃうよな。
 弁当か何か買って会社で食べるべきか、あるいはやはりメイプル内で食事を済ませるべきだろうか。
 さすがに会社の社食を利用するのは忙しなさすぎるだろう。
 決めあぐねて、あっという間にエントランスの出口へ。
 ザワザワザワッ。
 来る時には気がつかなかった報道陣が詰めかけていた。
 「…すごい騒ぎ」
 花沢物産は世界に支社をもつ名だたる一流企業だ。
 専務のルイルイ王子こと類の人気効果もあって、もちろん注目度も高い。
 それなりに報道陣が注目していてもおかしくはないのだが、まだ類の東南アジア統括への移動やら高階の取締役副社長への就任の情報は公表されていないのだから、それほど詰めかけるような注目材料はないはずだというのに凄いものだった。
 …あ、そうか。もしかしなくても、社長とか帰ってらっしゃってるんだ。
 時計を確認すると、もう12時を回っている。
 株主総会は10時半から開始だったから、そろそろ総会も終盤、下手をすると総会を終えた人達と出くわすハメになるだろう。
 別段、類の父親と確執があるわけではない。
 少なくても以前顔を合わせた時には、敵意は向けられなかった。
 けれど、過去、楓から受けた仕打ちのみならず、類の母・志保子の拒絶反応は記憶にも新しい。
 とてもではないが、類の父親に自分が気に入られているとは思えなかったし、これから先も歓迎されるなどありえないのはわかっている。
 この先…どう類とつくし、二人の未来を考えてゆくか具体的なものはまだ何もなかった。
 けれど、想いを伝え合い、変わってきている類を思えばこのままの関係…というわけにはいかないことは明らかで。
 「…ハァ」
 総二郎には類を『好きだ、彼を選ぶ』と言い切ったものの、さすがにそれでも類の両親と戦う気概など、つくしにもまだできていない。
 高校生の時を思えば、大人にもなったし、経験がないわけではないだけに憂鬱に襲われそうだ。
 「出よう」
 「……おや?もしや、牧野さんではありませんか?」





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