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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第七章 裏切②

昏い夜を抜けて335

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 「ふ、…まあ、一人くらい、俺を本気で心配してくれる女がいてくれてもいいさ」
 「…西門さん?」
 薄らと笑みを浮かべた総二郎の心のうちは、つくしには測り難い。
 けれど、伏し目がちの真面目な顔が、けっして彼女の言葉が総二郎の心をすり抜けてしまったわけではないことを、教えてくれていた。
 「ま、俺はすげぇ幸せな男だってことで。で?お前は?まさか、優紀ちゃんの為だけに、俺を受け入れないってわけじゃねぇんだろ?」
 お見通しだろうとは思っていた。
 それでももしかしたら、優紀が彼を好きでなかったなら、いまだ迷っていたかもしれない。
 そう思わないでもなかった。
 …ううん、それはない。
 だが、つくしが誰を想っていているのか知っている総二郎を退けるのなら、今のつくしにとってその理由は優紀でしかありえなかった。
 たとえ総二郎自身が彼女との関係をどう捉えていようと、彼に告げたとおり…総二郎の手を取るのならば、彼を一番に愛している女でなければならないのだ。
 「…もちろん、優紀の為だけじゃないよ」
 真っ直ぐに総二郎を見返す。
 「優紀はあたしの親友。でも、あんたもあたしにとって、すごく大事な友達」
 虚をつかれたように総二郎が目を瞬かせ、次の瞬間にはふっと目元が緩んで、柔和に笑み崩れた。
 彼にそんな顔ができるなどと、長い付き合いのつくしでさえ思いもよらなかった清涼な表情。
 「…まいったな」
 「……」

 「この俺がたかが‘友達’呼ばわりで嬉しくなっちまうなんて…」
 「たかが、じゃないよ!」
 茶化されたと思った彼女が気色ばむのに、片手を上げ、クスクス笑う総二郎の頬が微かに赤味を帯びているのに気がついて、つくしは口を噤む。
 「…わかってるよ。俺にとってもお前は大事なダチだ。知ってるよな?」
 「うん」
 疑うべくもなく、即答する。 
 知っていた。
 総二郎が彼女を大事な仲間だと思ってくれていて、大切にされていたことなどずっと以前から。
 「だから、大事なダチだから、あえてお前に聞く」
 「……」
 「類を選ぶつもりなのか?」
 「うん」
 即答だった。
 予測していたと言うのに、その揺るぎない…彼がずっと昔に彼女に見た強さを再び見出して、一瞬だけ息を呑んで言葉を詰まらせる。
 だが、それを悟らせるまもなく、もう一度、総二郎は念を押した。
 「…マジで?」
 「そうだよ」
 「お前のそれは、ストックホルム症候群なんじゃねぇのか?」
 ストックホルム症候群。
 生き残るために、脅迫者を愛してしまうという自己保身本能。
 けれど…。
 「…違うよ、たぶんね」
 「たぶんなのかよ」
 「だって、それを言ったら、昔あたしが道明寺を好きだったのだって、そうだったってことになっちゃうんじゃないの?」
 「……なるほど」
 確かに、あの閉鎖された英徳学園の中で、司は傍若無人な暴君だった。
 彼の意に染まぬ者は学園を追放され、あるいは虐待される運命で、誰も彼もが彼に付き従い、その意を汲もうと平伏した…ただひとりの少女を除いて。
 その少女が、複雑な…だが、何かを吹っ切った笑みを浮かべ、ハッキリと言い切る。
 「ただ好きなの。理由なんてなんでもいいの。ただ抱きしめてあげたいの。そして、抱きしめられたい」
 「……」
 真っ直ぐな目だな…と思う。
 彼らF4に敢然と立ち向かって、真っ直ぐに睨み据えてきた、ひとりのちっぽけな…だが、彼らの誰よりも強かった彼女を彷彿とさせ、総二郎は寂しく微笑んだ。

 彼女の強さを取り戻したかった。
 そのための力になりたかった。
 あきらならばきっと、その彼の気持ちこそが『恋』だったのだと言い当ててしまうのかもしれない。
 「いいさ。お前がそれでいいのなら」
 「…西門さん」
 「司が帰って来るぞ?」
 驚かない彼女の顔に、つくしがとっくにその事実を知っていたことを悟る。
 …まさか、類が言ったのか?
 いや、おそらく桜子あたりだろうと思う。
 だが、くじけてしまっていた彼女がここまで立ち直ったのだ。
 類がそんな強く眩しい彼女の影響を受けていても、なんら不思議なことはないのだろう。
 言わずもがな、そう思いながらも尋ねようと口を開きかける。
 もはや彼女が迷うことがないように。
 彼女が本当に望む男が誰かを確かめるために。
 司が帰ってきてもなお、類を選ぶのか、と。
 だが…。
 ガタン。
 椅子から立ち上がる。
 「…西門さん?」
 「……フラれ男は退散するさ」
 「……」
 「悪いな、牧野。昼飯、お前一人で食って帰れよ」
 これ以上は、やはり余計なお節介だろう。
 たとえ友でも、誰であろうと、恋愛は当事者のもので、心配をすることはできても干渉することなどできるはずもない。
 …野暮ってもんだよな。
 総二郎が、テーブルの上の伝票を手に取る。
 「言っておくから、好きなもん食ってけよ」
 「ありがとう、でも、いいよ。そういうの嫌なの知ってるでしょ?」
 「……ああ」
 慌ててハンドバックを探ったその手に握られた千円札に苦笑して、ねじ込まれるままに受け取った。
 …この俺に、割り勘なんてさせる女は、お前くらいなもんだぜ、牧野。
 毎回割り勘だ、なんだと口争いをして、それでも強引に奢れば、つくしは代わりになにかしら土産だ、なんだと持参した。
 男に奢られるのなんか当たり前。
 女に金を使うのなんか当たり前。
 そんな彼らの常識を、一人覆す女が小面憎くも、小気味いい。
 「またな、…次会う時は、もういつも通りのダチだ」
 「うん」
 「それでも、俺もお前が好きだったぜ」
 「……っ」
 驚いて目を瞬かせる小動物めいた女の顔が楽しく、可愛いなんていまさらだ。
 もう振り向かない。
 自分を振って違う男を選んだ女に、惨めったらしく縋るのは彼の…西門総二郎の流儀ではないだろう。
 …だから。
 本当にこれで最後だ。
 彼女に心を揺らして、彼女の心を手に入れた友を羨むのは…。
 「…類、司は手強いぜ」
 人形じみて冷たいばかりだった顔が穏やかに凪いで、透明な微笑を浮かべ彼女への『求愛』を語った親友を思い浮かべる。
 『…だって、お前は、牧野のために家を捨てられる?』
 とっさに頷けなかったあの時に、すでに勝負はついていたのかもしれない。
 『俺はできるよ。牧野の為に、じゃないけどね。牧野が欲しい自分の為に、家や他の何かを捨てることなんて、俺にとっては全然難しいことじゃないんだよ』
 うそぶく男の顔は、満ち足りて、長く虚ろで膿んでいた面影はどこにも見えなかった。
 反論する総二郎に、相対する類は確固たる自信と確信に満ちていた。
 『俺はもうガキじゃない。高校生だった司にできなかったことだって、今の俺にはなんでもできる』
 「逆だったか」
 同じ女を愛して、日本に戻ってきただろう今一人の親友へと、心の中で語りかける。
 …司、類は手強いぜ。お前に牧野は取り戻せるか?
 どちらにせよ、類も司も彼の親友だった。
 そして、つくしもまた大切な仲間なのだ。





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残酷な傲慢な女

学生時代に司に酷いことされたのは確かですけど
2度もレイプしては、第三者にカメラでその現場を撮らせて
脅迫して付き合うように強いるようなことを道明寺がしてましたっけ?
道明寺司と花沢類を比べるのは酷すぎじゃないの?つくしちゃん( ̄▽ ̄;)
昔助けられた初恋の人だったらレイプされても簡単に許せて愛せるってか。
あきらや総二郎とは違って、意外と道明寺から逆につくしを振って欲しい。
司が女々しく描かれないことを祈るばかりです。
ほとんど登場もなかったこともありますし、「類つく」だからといって
せめて最後くらいカッコよくあって欲しい道明寺。
だって「つかつく」でさえ類がカッコ良く書かれてることが多いんだし。

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NoTitle

私も柿ピーさんと同意見。
道明寺にバッサリ切られちゃえばいいのにって思う。

第三者にカメラで撮影って完全な犯罪。
そういうのってつくしは一番嫌うと思うんだけどな。
道明寺の場合はつくしに対する愛情表現が下手だっただけ。
いくら二次小説とはいえ、設定に無理がありすぎかなと思うし
誰がハッピーになるんだろうと思う。

てか、これ本当にハッピーエンド?

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司 カッコいい!!

アラビア語まで、話せるなんて すごい!!!

話の展開がビッグで 早く続きが読みたいです!!

すご~く続きが早くみたいです!

司と つくしと 類が どうなっていくのか
知りたくて、ワクワクドキドキしながら
読んでます!

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