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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第七章 裏切②

昏い夜を抜けて334

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 「は?一番に愛せないって、そんなこと、最初から」
 「…あの子はあんたを大切に思ってる。親友のあの子が大切に想っているあんたをあの子から奪ってゆくなら、あんたを誰よりも愛して幸せにできる女じゃないといけないの」
 「……」
 つくしにだとて、めちゃくちゃな論理だとわかっている。
 そのめちゃくちゃな論理を総二郎に押し付けようとしているということも。
 「優紀ちゃんは、俺の恋人じゃない」
 「それでも…。優紀はあたしの親友で、あんたもあたしにとって、大切な友達だから」
 「……」
 「……」 
 つくしの真剣な目が、困惑したような顔の総二郎からけっして視線を外さず、二人の間を沈黙が横たわる。
 先に視線を外したのは総二郎で、癇症に組んだ片足を揺らしながら、落ち着きなく前髪をかきあげる。 
 そんな彼の珍しい姿が、どれだけ彼をイラつかせているのかなんて、鈍感なつくしにだって伝わっていた。
 それでも、それは、もはや彼女にとって確固たる信念であり、曲げられない事実なのだ。
 「わけかんねー」
 「…そうだね、そうかもしれない。でも、あんたもそうやって、いつまであの子から逃げ続けるつもりなの?」
 総二郎の膝の揺れがピタリと止る。
 ゆっくりとあげた顔が、いつものフザけたニヤケ笑いも、トボけた表情も浮かべていなくて、綺麗なだけに無表情がゾッとするほど冷たく思えた。
 「あんたがあの子を傷つけたくないと思っているのは、あたしも知ってるよ。たぶん、友情からあたしと付き合えるなら、あの子とだって付き合えたはずなんだ」
 「…だいぶ違うだろうよ」
 「どうして?あの子があんたのことを好きだから?」
 優紀なら、それでもチャレンジしただろう。
 愛されていないのに縋るような女じゃない。
 けれど、そこにチャンスを提示されて、躊躇するような女でもなかった。
 彼女はつくしなどよりずっと強いのだ。
 そして、総二郎がけっして優紀を愛することがないなどと、誰に断言できるというのだろうか。
 気がつけば、そこかしこに、愛があるのだ。
 そして、優紀は愛されてしかるべき美質をもつ女だった。
 「なんでチャンスをあげてくれないの?」
 「…俺は、ダメなんだよ」 
 「他に好きな人がいるの?」
 いるわけがなかった。
 もし、いるのなら、さすがの総二郎も、友人のつくしを相手に、『恋愛ではなく友情と信頼でパートナーになろう』などとは言えるはずもなかった。
 「もしかして、初恋の人だとかいう?」
 「…更?まさか。いったいいつの話だよ」
 「それなら、なんで」

 つくしは追求を緩めてくれない。
 けっして他の友人たちは踏み込まなかった彼の深淵へと、土足で踏み込もうとする彼女を厭いながらも、彼女の中へと同じく土足で踏み込んだ自覚のある総二郎は、自分だけ拒絶することはできなかった。
 「…お前みたいな女はそうはいない」
 「……」
 「お前は強い女だよ。…もちろん、弱いところもあるだろうさ。けど、昔自分でも言ってたよな?お前は雑草だって」
 踏まれても踏まれても立ち上がる雑草。
 今の自分をとてもそううそぶくことはできなかったけれど、あえてその総二郎の誤解をつくしは訂正しようとは思わなかった。
 強い自分でいたい。
 雑草のように逞しく。
 そう今尚、願い続けていたから、せめて昔を知る彼にはそう自分に幻想を抱いていて欲しかったのかもしれない。
 「けど、優紀ちゃんは違う。…いや、たいていの女にとって、俺の家や環境、俺自身のエゴに付き合いきれない。潰されちまうのがわかる」
 「…わかる?違うでしょ?それはあんたの思い込み。それにたとえ、思い込みじゃないにしても、それはあんたには関係ないことじゃない」
 「は?」
 つくしの言いたいことがわからない。
 人の機微に鋭い総二郎が、つくしの意を汲みそこねて、眉根を寄せる。
 「選ぶのは優紀。あんたの家が怖くて逃げ出すのも、立ち向かうのも、それは優紀が選ぶことだよ。あんたはあの子を言い訳にして、自分が傷つきたくないだけだよね?」
 「……っ」
 自分でも自覚していた。
 苦しくなれば逃げ出してしまう自分。
 総二郎は自分の為に、愛する女が傷つくことが怖かった。
 傷ついけてしまうような女を愛することが怖かったのだ。
 「お前ならッ」 
 「……」
 「お前なら…、俺を殴るだろ?」
 つくしが真っ直ぐに総二郎を見返す。
 そしてまた、総二郎も顔を歪めながらも、真っ直ぐにつくしを見返した。
 「俺が逃げ出せば、お前は俺を殴って引き戻す。でも、優紀ちゃんは耐えてしまうだろ?俺にはそれがダメなんだ。耐えられない」
 総二郎の屈託の本当の理由。
 おそらく、本当に優紀を愛せないわけではないのだと思う。
 彼女が好きだからこそ、傷つけたくなかった。
 「馬鹿だね、西門さん」
 「……」
 それでもつくしは知っている。
 「あの子はそんなに弱くない。あんたが逃げたら、あの子はさっさとあんたを捨てて自分の道をゆくよ」
 自分のためではなく、総二郎の為に。
 耐えられない彼を赦して。
 「だからあんたは、あの子とちゃんと向き合ってやって」
 「…牧野」
 「愛してあげてなんて、そんな傲慢なことあたしにだって、言えるはずがない。でも、あの子をフるんだったら、せめてあんたは幸せになる努力をしてあげてよ。じゃないとあの子、あんたの孤独と弱さを想って、あんたから卒業することができないの。だって、優紀はすごく優しい子だから」
 そしてそれは、総二郎も知っていた。
 優紀は優しい女なのだと、彼女が彼を救ってくれた高校生の時からずっとわかっていたことだったのだ。
 「あんたには迷惑な話かも…しれないけどさ」





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