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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第七章 裏切②

昏い夜を抜けて332

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 久しぶりに訪れたメイプルの威容は、少女の日とは別の感慨をつくしに抱かせる。
 とはいえ、あえてここ数年の間、ずっと避けていたこともあって、どこか記憶も遠かった。
 …ま、あの時は夜だったし。
 思わず仰け反り、ぼうっと口を開けて眺める。
 ドンッ。
 「あ、すいません」
 「いえ」
 後ろから来たスーツ姿の男性にブツかられてしまった。
 謝罪されたものの、こんな道の真ん中に立っているのだ。
 つくしの方が非常識も良いところだろう。
 …けっこうスーツ姿の人がいるなあ。花沢物産の株主総会の出席者かな。
 そうでなくても、いくつもイベントホールを有する巨大ホテルだ。
 他にも催し物があるのかもしれなかったし、政財界のパーティなども頻繁に利用されるの場所だったから、国際色豊かに、人通りが多いのも当然のことだった。。
 それにしても、うっかり社内の人間に出くわしたりしたら、本来なら勤務中のこんな時間に気まずいものがある。
 失念していたが、著名な男である総二郎と二人っきりで会っているところを目撃されるのもできるだけ忌避したいところだ。
 疚しいことなどないはずなのに、そそくさとホテルへと入りカフェを探す。
 「…ハア、こんなだったっけ」
 あの時は、総二郎と優紀を追いかけるのに夢中で、彼女に内部を観察する余裕などなかった。
 帰りは帰りで、楓の出現に戦々恐々で、今思ってもやはりとんでもない波乱の連続だったのだと思い起こす。
 …て、あの時も西門さんかぁ、まったく。
 そう思いつつ、キョロキョロ視線を彷徨わせると、吹き抜けになっているホールの上階、バルコニーに寄りかかりヒラヒラと手を振る総二郎に気がついた。
 「あ、いた」
 つくしが気がついたことに、総二郎も気がついたのだろう。
 遠目だったがニヤリと笑って、場所を移動している。
 2F程度、エレベーターを使うほどではない。
 階段を上ると、すぐにカフェの入口を見つけられて、つくしは店内へと足を踏み入れた。
 「…いらっしゃいませ」
 「あ、すいません、連れが先に来てますので、大丈夫です」
 案内しようとするウェイトレスを断って、グルリと見回せば、奥まった席に座った総二郎がテーブルに顎肘をついて、こちらを見ているのがすぐに見当たった。
 「おはよう、ごめん、待った?」
 時間は11時5分前。
 けれど、総二郎のコーヒーカップはすでに1/3ほどに減ってしまっている。
 「おう、そうでもない。とりあえず、座れよ」 
 「うん」
 彼女が向かい側に腰を下ろしてそう間も空けずに、水を持ったウェイトレスがやってきて、つくしがアイスティを、総二郎がコーヒーのおかわりを注文する。
 チラッと総二郎を盗み見たウェイトレスの頬がほんとりと赤い。
 よくよく気にしてみなくても、周囲の女性客たちの視線も痛かった。
 いつもながら、存在自体がド派手な男だったけれど、ふと気がついていれば、さんざん夕食や酒をご馳走になって夜に会うことは珍しくはなかったが、こうして朝に会うのは初めてのことかもしれない。
 「…なんだ?」 
 「え、あ~、ずいぶん、早かったみたいだね?もしかして、今日、ここに泊まったの?」
 「……なんだよ?女と泊まったとでも思ってるのかよ」
 憮然と返され、そんなつもりではなかったつくしの方が、焦って否定する。
 「いや、ごめん、詮索するつもりじゃなかったんだけど…」
 「否定になってないし…」 
 「ははは」
 「昨日、夜にここで講演会やったんだよ。夜遅くまで後援会の接待受けたりしてたし」
 「そうなんだ」
 ついバツが悪くて視線を彷徨わせると、カフェにもダークスーツのビジンスマンの姿がちらほらと目に付いた。
 「…スーツの人多いね」
 「ホテルの朝なんてこんなもんだろ」
 「そうなんだ。あんまりホテルに泊まった経験とかないから、知らなかった」
 「お前、半休って言ってたけど、この後、仕事?」
 「あ、うん。そう」
 「へえ?けっこうセンスいいの着てるじゃん。てっきりお前のことだから、ダークスーツか、リクルートスーツみたいに色気のないやつしか持ってないのかと思ってた」
 「……まあね」
 実は少し前までのつくしだったら図星だった。
 けれど、秘書になってからは、それなりに身だしなみにも気を使うようになっていたし、彼女のクローゼットの中身は大半、類が揃えたものだったのだ。
 「もしかして、類のプレゼント?」
 「支給品だよ」
 役員秘書である以上、体裁も必要で…いくら給料が上がったとは言え、すぐには体裁を揃えられなかった彼女の妥協だった。 
 ウェスト切り替えのUネックワンピース。
 ノースリーブのその服は、つくしの色白さを際立たせ、すっきりしたシルエットがよく似合っている。
 ロイヤルネイビーのそのワンピースにジャケットを羽織れば十分ビジネスシーンに対応可能だろう。
 「ジャケットは?」
 「駅のロッカーに置いてきた」
 「…お前な」
 「しょうがないでしょ、歩きだったんだもん」
 車で送迎のお嬢様と一緒にして欲しくない。
 「迎えに行ってやれば良かったな」 
 「いいよ、忙しいのわかってて、約束を取り付けたのはあたしの方だし」
 「……で?」
 唐突に本題を問いかけられ、つくしが息を呑む。
 だが、ちょうどウェイトレスが注文した飲み物を持ってきて、話が中断する。
 「悪いけど、少しの間、水や注文の追加とりにくるの遠慮してくれるかな」
 「あ、はい」
 総二郎に声をかけられ、あきらかに相手は舞い上がっている。
 そしてさり際、つくしには不愉快な視線を投げてゆくのも珍しくはないことだ。
 メイプルのように社員教育が徹底されたところでも、F4と関わるかぎり逃れられない宿命らしい。
 「…なんだよ?」
 「いや、相変わらずだな、って思って」
 「類といたって同じことだろ?」
 「まあ、それはそうだけど」
 「俺をフる理由は、平凡な幸せを欲しいとか、そう言うお前お得意のいいわけじゃねぇよな?」
 つくしは、ハッと総二郎を仰ぎ見る。
 「西門さん」





 「久しぶりだな」
 「…本当ですね」
 テレビ電話腰にはつい数日前にも言葉を交わしていた。
 けれど、こうして直に顔を合わせるのはどれくらいぶりのことだろう。
 ましてや、類ばかりか、高階までも同席した公の席。
 …俺を吊るし上げる席じゃないのが、せめてもの温情ってところ?
 そんな類の冷え冷えとした思いを考慮することもなく、秘書の持ってきた書類を受け取り、挨拶もそこそこに父親が目を通し出す。
 類の横に座った高階が、耳打ちする。
 「…吊るし上げる為の場所じゃないのが不思議だ、くらいに思ってるだろ?」
 「よくわかったじゃない。なんで、お前、提案しなかったの?」
 「……」
 高階にしても慣れたものだが、飄々と聞いてくる類の豪胆さに呆れてモノが言えない。
 いや、豪胆なのではない。
 単純に自分の進退などに興味がないだけだろう。
 それでも、つくしという要素が加わってからの類には、唯々諾々と今の地位を失えない理由ができているはずだった。
 いまのところ、高階に遅れを取っているはずなのにこの余裕はなぜなのか。
 …もともと、こういう奴だしな。
 不思議ではないことが、妙だった。
 「T&Tカンパニー…よもやお前の息がかかっているわけではあるまいな?類」





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