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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第七章 裏切②

昏い夜を抜けて328

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 『もう二度と戻れない』
 それは普遍の真実。
 そんな簡単なことがわかるまで、いったいどれくらいの月日と、そしてたくさんの大切な人たちを傷つけてきたことだろうか。
 そして、そんな彼らが教えて、与えてくれたさまざまなことを無にしないために、彼女自身ももう後ろを振り返るばかりでなく、前に進まなければならないと自分の中の類への気持ちへと耳を澄ませた。
 そこにあるのは…。
 ただ一つだけ。
 シンプルで、それだけに難しかった答え。
 やっと自分自身でも今、素直に認められるその感情に、つくしは涙ぐんでしまいそうな情動をグッと抑えて、
 「…あんたが好き」
 「っ」
 「あんたがどんなに卑劣で、卑怯で、冷酷な男でも、あたしはあんたが…」
 …好き。
 最後まで言い切る前に、抱きしめられていた。
 何度となくこの胸に抱きしめられて、恐怖、ときめき、嫌悪、哀しみ、その他もろもろの感情を抱いたが、……ただ温もりだけを感じることができなかった、過去。
 肉体の温もりでなく、心の感じる温もり。
 体は近いのに、心が遠くて。
 寂しくて、寒くて、渇いて渇いて…。
 近づけば近づくほどに、孤独が身に沁みた。
 けれど、今は…。
 「好き。俺も牧野が好き」
 「…花沢類」
 「牧野だけ。あんたが赦してくれても、赦してくれなくても、ただあんただけが欲しい」
 じんわりと目頭が熱くなってきたのはなぜだろう。
 子供のような拙い告白がこんなに切ないのはなぜ?
 多くの恋人たちが肩を寄せ合い、語らう中、二人…煌びやかなネオンの輝きを放ち続ける夜景には目もくれず、ただ身を寄せ合い互いの温もりと互いへの愛しさだけを感じていつまでも抱きしめ合っていた。





 「……もう、恥ずかしいっ」
 我にかえってみれば衆人環視の中。
 ほとんどの人たちは自分たちの事情で忙しく、彼ら二人のことなど気にしている風でもなかったが、それでも間近にいた人達にとっては十分興味深いことだったのだろう。
 ふと我に帰って、視線を向けた先…ニマニマ、ニヤニヤ、囁き合いながらこちらを見ている何組かの目に合い、顔から火が出る思いだった。
 と、なれば、もうこんなところにいられるか、と急いで退散。
 類と手を繋ぎ、エレベーターの中、降下する間さえ、周囲の人たちが自分たちを見ている気がする。
 ドッと吐き出された人ごみにまぎれ、二人もエレベーターを降りる。
 足早にズンズン歩くつくしの横に並んだ類の顔は平然としていて、なんだか一人テンパっているのがバカバカしく思えた。
 「どうしたの?もう疲れた?」
 「……」
 「食事に行く?それともまだそんなに遅くない時間だし、海でも見に行く?」
 芝浦ふ頭は目と鼻の先だ。
 ある意味デートスポットの定番だろう。
 「パパラッチ、大丈夫だったかな」
 よりによって東京タワーの展望台でのラブシーンだ。
 しかし、
 
 「うん、プロはいなかったみたいだけど、写メでけっこう撮られたみたいだね」
 「え?!」
 インターネットが普及している世の中だ。
 誰でもすぐにYouTubeやニコニコ動画などにアップできる。
 青くなるつくしに、困ったように微笑み返し、
 「…まあ、仕方ないね。すぐにそれどころじゃなくなるだろうし」
 「は?」
 「こっちのこと。あ、タクシー来たよ?停めて乗ってゆく?それとも散歩したい?」
 つくしならドアtoドアより散歩を好むだろうと、わかっていて類が彼女へと選択を委ねてくれる。
 少し考え、つくしが首を振る。
 「…もう、帰ろう」
 「まだ、ご飯食べてないよ?」
 「うちで簡単に食べるよ。あんたも疲れてるんだろうから、早く帰ってお邸でご飯食べなよ」
 今さっき互いの気持ちを確かめ合ったばかりのはずなのに、ケンモホロロなつくしの言葉に、目を瞬かせ類が苦笑する。
 つくしはもともとこういう女だ。
 だが、おそらくそうした性格だけのことだけではなく、まだ、彼女なりの屈託を抱えているのだろう。
 …それはそうか。
 互いの因縁を考えれば当然のことだ。
 だが、類のそんな考えを読んだかのようなタイミングで、立ち止まったつくしが、類の顔を見上げ、ジッとその目を見つめてくる。
 「…ねぇ、あたしを信じてくれる?」
 「なに?」
 真っ直ぐな眼差し。
 強くて、澄んで、信念に満ちたつくしの目の輝きに、類は目を細めた。
 「あんたはあたしを待つと言ってくれた。今は、あんたを好きだという以外、他に何も言うべき言葉を持たないあたしだけど、あんたはそんなあたしを待つことができる?」
 それは何を指しているのだろうか。
 彼女の言葉の意味は?
 もうすぐやってくるかもしれない別離を前に、好きだと言ってくれた彼女は、どう未来をとらえているのだろう。
 「俺が赦せないから、俺に言うべき言葉がないの?」
 「…あんたを怖かった。恨んだ。でも、憎むことはできなかった。そして、あたしの中であんたを赦せないことなんて何一つないんだって、あたしは気がついたの」
 類がつくしを助けてくれたあの瞬間から、彼を憎むことなどできないということはもう決まっていたことなの違いない。
 彼にどんなひどいことをされたとしても、彼女の中で、類を赦せないことなど何一つないのだ。
 「じゃあ…」
 「…道明寺に会いたい」
 つくしの口からこぼれた名前に、類が目を見張る。
 「道明寺に会いたいの。今のあいつに、会いたい」





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