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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第七章 裏切①

昏い夜を抜けて317

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 言いあてられた言葉につくしは息を呑む。
 優紀の顔はどこまでも優しく、けっしてつくしを咎めているわけではなかっただろうけれど、それでも彼女は疚しかった。
 自分の弱さが他人を傷つけて…逃げて、逃げて、ここまで来てしまった自覚があるのに、いまだ自分の意気地のなさを克服できずに、類を思い切ることも、総二郎を拒むことも、さりとて彼らの誰を選ぶことさえできないでいる。
 「西門さんが魅力的じゃないなんてことないよ」
 「まあ、それはそうだろうけど、あたしがそういう意味で言ってるんじゃないってもちろん、つくしにもわかってるよね?」
 優紀の眼差しを、受け止めきれずにつくしが顔を背ける。
 どんな男たちの視線にもたじろがなかった彼女も、優紀の慈愛に満ちた…だが、つくしの心の奥底を透かし見るような目が怖かった。
 「…優紀、ごめん」
 顔を背けたまま、ポツリと呟く。
 両手で口元を多い、拝むように組んだ手の中にゆっくりと息を吐き出す。
 ほんのりと香った、自分の吐息の中のアルコールに再び酔ってしまいそうな酩酊。
 …本当に酔い潰れてしまうことができていれば。
 そんな怯懦を自覚して、つくしは胸を暗澹とさせる。
 「何を謝ることがあるの?」
 「……」
 「西門さんが、あたしではなくあんたを好きになったこと?」
 「西門さんは、あたしのことなんて…」
 …女として見ていない、そう言い募ろうとしたつくしを遮って、優紀が続ける。
 「…愛情のカタチはいろいろあるんだよ」
 「優紀」
 「西門さんの気持ちがあんたにあるのはあんたのせいじゃない。そして、あたしを愛してくれないのも西門さんの責任なんかじゃないし、間違ってもあんたのせいなんかじゃないのを、あたしは知っている」
 「……」
 「なのに、あんただけがいつもわかっていないんだね」
 そう言う優紀の顔は、初めてつくしを詰るように歪んで、つくしから顔を背け目を瞑った。
 その表情が、いつもの悲しそうな顔…などではなく、本当に彼女が哀しんで、そして憤っているのだとつくしは初めて気がついた。
 優しくて、穏やかで、ひっそりと微笑んで、いつもつくしを励まし、赦してくれていた親友。
 「あんたは、傲慢だよ」
 「…傲慢?」
 思わぬ言葉に、つくしは呆然と鸚鵡返しに呟くことしかできない。
 「傲慢で、自分勝手で、…そしてひどく残酷な人」
 「あたし、が?」
 傲慢。
 自分勝手だと自分を責めた日もなくはなかったけれど、この幼い頃から彼女を支えてくれた親友にそう称されることほどショックなことはなかった。
 息を呑むつくしを、優紀が再び振り返って、ジッと彼女の目を見つめ、ゆっくりと語りだす。
 自分の気持ちが伝わるように。
 過去の傷をいつまでも抱えて、彼女らしくなく怯えて縮こまってしまった友を癒せるようにと。
 「元々、人を好きになるって気持ちは身勝手なのは当たり前なんだよ。そりゃあ、誰もが幸せになれたら、ホント、素敵なことだと思う」
 「……」
 「でも、実際は、ただ好きでいるだけでも、時には、他の誰かを傷つけることだってあるのは、あんたももう知ってるよね?」
 高校生時代、ただ静だけを見つめていた類を見つめていたつくしが、静ゆえに苦しんでいた彼を見て泣いたように。
 そんなつくしを恋いて、何度となく傷つけられることになってしまった司がいたように。
 そして今、つくしを生涯の伴侶として求める総二郎を、横から見守り続けることしかできない優紀がいるように。
 いつも恋は残酷だった。
 甘ければ甘いだけ、そのギャップは深く昏く…。
 「あんたは思い違いをしている。今も…あの時も」
 「あの時?」
 「そう、道明寺さんをあんたも好きだったのに、あたしたちの為にその恋を諦めた時のこと」
 「……っ」
 「あの時のあんたは間違っていた」
 涙が…、もう過去のことで泣くことなどあるわけもないと思っていたのに、だが、あの時自分が最善だと思っていた行動を咎められ、その渦中の一人であった優紀に「間違っていた」と切り捨てられる苦痛に目元が緩んだ。
 恩に着せるつもりなどなかった。
 元々は彼女と司の恋が生み出した歪みで、優紀には非どころか、迷惑ばかりかけたことはわかっていたのだから。
 でも…それでも、優紀にあの時の彼女の決断を否定されてしまえば身の置き所がない。
 …何のために。
 何のために、司を傷つけなければならなかったのか。
 何のために、彼を裏切り、哀しみと罪ゆえの苦痛を堪えて、この数年間を生きてこなければならなかったのか、と。
 「あんたは、あたしや和也くん、そしてあたしたちの家族を守ってくれた。それを感謝しこそすれ、恨む筋合いなんかない」
 「それはっ!」
 「黙って聞いてっ!」
 優紀らしくない怒声にビクッとつくしが肩を揺らした。
 「でも、それでも!それでも、あんたを恨まずにはいられなかった。どうして、あたしたちをこんなに苦しめるのか、って」
 「!?」
 「あんたと道明寺さんを引き裂いて、あんたがどんなにか苦しんだかわかって、あたしたちが本当にのうのうと生きてなんかいられたと思う?」 
 「……優紀」
 「あたしたちの前から消えたあんたをずっと、ずっとあたしたちは忘れられなかった。あんたの涙を、哀しみを、苦しみを…あんたのことを愛していたあたしたちが本当に無視できると思ったなんて…あんたは本当にエゴイストだよ」

 「……」
 強い眼差しでつくしを見つめていた優紀の目が潤んで、涙がその頬を伝い落ちる。
 「あんたが心配で…、あんたに申し訳なくて…、ずっとずっと、あんたに会いたかったけど苦しかった。…あたしは英徳にはいなかったけど、和也くんから聞く道明寺さんの様子に…いつもごめんなさい、あたしたちのせいで、ってずっとずっと心の中で謝り続けていたように思う」
 「…あたしが、あんたを苦しめたの?あんたと和也くんを哀しませたの?」
 つくしの目からも滂沱の涙が流れる。
 互いの目の中に、罪悪感と、苦痛と、悲哀と、同情と愛情と、その他もろもろの複雑な感情を見出して…。
 ただひたすらに互いの顔を見つめ合い、数年間の心の淀をあらわに過去を掘り起こした。
 乗り越えなければ。
 いま、すべてを吐き出し、互いへのわだかまりを晒さなければ、もう二度と、あの幼い日…互いにあった信頼を取り戻すことなどできはしないのだ。
 「あんたを憎んだ。なんで、あたしをこんなに苦しめるんだって、ずっと辛かった」





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