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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第七章 裏切①

昏い夜を抜けて314

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 好戦的な総二郎とは異なり、あきらはどこまでも平静だった。
 そしてあきらの言う言葉も、類には当に今さらのことなのだろう。
 「赦せるよ、あいつはそういう女だからね」
 「…チッ、傲慢な奴だな、お前ってやつは、類」
 総二郎が舌打ちを打って、あきらが苦笑する。
 「バカみたいにお人好しで、裏切られても騙されても、牧野は変わらない」
 「…強い女だよな」 
 「だな。しぶとくて、逞しくて…雑草みたいに打たれ強い女だぜ」
 しみじみ頷きあう親友二人に、類は同意しない。
 ただ反論もしなかった。
 「それで?お前は延々と、牧野に赦してもらえるのを待ってるところなのか?」
 あきらの問いかけに、類が首を傾げる。
 「さあ」
 「「はあ?」」
 気のない返事に、総二郎とあきらが怪訝に顔を顰める。
 「内緒」
 「…内緒って」
 「おい」 
 類はふっと相好を崩して、今度は自分でバーテンダーに酒のおかわりを頼む。
 「マティーニ。俺も明日仕事だし、けっこう飲んだから少し口当たり良くしてもらおうかな」
 頷くバーテンダーに微笑み、大きく息を吐き出す。
 「類…」
 「類!」
 「なんでわざわざライバルに話さないといけないの?」
 流し見られた視線に、総二郎が嘲るような笑みを浮かべあえて挑発する。
 「…俺が怖いのか?」
 「お前は怖くないよ、総二郎」
 間髪入れずにあっさりと返され、総二郎が鼻を鳴らす。
 「言ってくれる。昔ならいざ知らず、今はお前より確実に俺の方が牧野には信頼されてるぞ」
 「そうかな?」
 「……おいおいおい」 
 半ばジャレ合いだと思いつつ、ウェイターの手ではなくバーテンダー手づから酒を持ってきた気配に、あきらが仲裁に入る。
 総二郎も類もいったん口を噤み、類が差し出されたグラスを目の高さに掲げる。
 「うん、綺麗だ」
 「ステアいたしました」
 「へぇ?シェイクにしなかったんだ」
 通常酒の角を取るためにはシェイクする…いわゆるボンド・マティーニの作り方がよく知られているが、あえてステアしたという酒を口にして類が満足げに頷いた。
 「うん、ホント、美味い」
 「マイナス20℃からステアして温度を高めていますので、飲み口がまろやかで口当たりが優しくなっております」
 「こんな美味い酒だしてくれるのに、一杯も飲めずに帰ることになるなんて牧野可哀想。総二郎のせいだね」
 「まったくだな」
 あきらにまで同意され、総二郎が憮然と自分も酒のおかわりを頼む。
 「俺も同じのくれ」
 「…かしこまりました」
 バーテンダーが立ち去るのを確かめ、会話を再開する。
 「あきらにはバリバリ反応してて、俺は役不足だってか?」
 「だってお前、本気じゃないじゃん」
 「…なんだ、それ」
 





 「…あんたが、花沢さんと」 
 優紀にはかつてなんでも話してきた。
 ただ一度、司の母親に脅され、司を捨て彼女たちの家族を救った例外を除けば。
 それでも、類の愛人をしていたことを告白するのは勇気が必要だった。
 …だけど、本当のことだ。
 今更何を隠すことがあるだろう。
 そして、この友はそんなことでつくしを蔑むような女性ではなかった。
 複雑な顔を見せながらその目にあるのは思慮深く、つくしへの心配だけで。
 「それであんたは、花沢さんのこと赦せないの?」
 「…わからない」
 「……好きなんでしょ?」
 好き…。
 一言で語るには本当に複雑なものが含まれ、つくし自身でさえわからなくなる時がある。
 時々、ふとした瞬間にいままで類が彼女に架してきた仕打ちに対する憤りが湧き上がることもあった。
 いくら優しくされ、掻き口説かれてもわだかまりが拭えない。
 けれど、彼を嫌いになれたことがこれまで一度だろうとあっただろうか。
 自分の類へ抱いてきた幻想の崩壊に苦しめられながらも、それでも彼に与えられたもの…救いとか、感謝とか、高校時代の、本当に類自身でさえそれほど重要視していないだろうホンのひと時の出来事を、まるで宝物のように抱いてきた自分をつくしは滑稽に思うことがあった。
 どうして、こんなにもひどいことをされながら、彼を憎んだり恨んだりできないのかと。
 それでも、過去の類のなしてくれたことだけではなく、時折覗く優しい彼の顔や柔らかさに引込まれた。
 固く閉じられた壁の中に蹲って、無関心な冷たさで鎧った隙間に僅かに覗く、彼の温もりに。
 「好きなんじゃないの?」
 「…たぶん、好き、なんだと思う」
 何度となく心で思っても、昔からその言葉を口に出すことがつくしは苦手だった。
 類を好きだということは、どこか甘酸っぱく胸の奥底がキュンと鳴って…そしてどこかほろ苦い罪悪感と自嘲を彼女にもたらした。
 そんな彼女を見透かしているのか、それともただ、昔のことをいろいろと思い出したのか。
 つくしの返事に、優紀があっさりと頷く。
 「あんたの初恋の人だものね」
 「…そうだったね」
 高校時代どれだけ彼のことを優紀に話したことがあっただろうか。
 おそらくつくしよりも先に、その淡い想いに気がついたのは優紀だったに違いない。
 「花沢さんってどんな人?」
 「…どんな人なんだろう?」
 つくしの意外な返事に、優紀が不思議そうに首を傾げる。
 「昔からあの人はあたしにとって謎だらけで、何を考えているのかわからなくて、まるで気紛れに懐いてくるノラ猫みたいだった」
 野良猫というには語弊があるか。
 けれど彼に幻想を抱いてる頃でさえ、類のパーソナリティはつくしには理解しがたかった。
 まるで別世界の住人のようにどこか非現実的で、雲の上に座す男だった。
 茫洋と空を眺め、あるいは美しい寝顔を晒して眠る姿ばかりが思い浮かぶ。
 時折見せてくれる笑顔がすごく眩しかったのだ。
 それがたとえ静ゆえに浮かぶ笑顔であろうと、またはつくしをおかしいと面白がる笑みであろうと、ただ笑ってくれるのが嬉しかった。
 お金で買えない価値あるものがあるとしたら、彼の笑顔だと思った少女の日。
 「…優しいと思う時もある」
 「うん」
 「でも、たぶんそれは類の一部分でしかなくって、ひどい男だし、冷たい男だと何度となく思った」
 「それなのに、好きなの」
 「好き」





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~ Comment ~

西田の右腕

それなら 司はいったい何だったの?
今頃になってそれってどうなの?
司はつくしを想い、無理強いせず、深い関係にならなかったというのに・・・。
結局 初恋の相手に何しても勝てなかったただのマヌケな司になってるよ。
さっさと無理やりにでも抱けばいいってこと?
この物語のつくしという女性が本当によく分からない・・・
司があまりにも可哀想だし、ダチというわりに他の親友は誰ひとり司を思う奴なんていやしない。むしろちょっかいだしてるしね。
こんなダチ?司も真剣に選んだほうがよくないの?と素直に思いました。
類xつくだろうと、司だけこんなマヌケぷりな描き方してますが
司のことが嫌いなのでしょうか?
他の物語でも記憶がないからというだけでゲスみたいな性格にしてますし・・・。

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