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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第七章 裏切①

昏い夜を抜けて313

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 次の日は休みの優紀や午後出だという経営者の桜子はともかく、次の日もガッツリ仕事があるつくしは酒は控えてお茶だけを出していた。
 けれど、なんとはなしに素面で話すのも…という話題に転じて、冷蔵庫の中に入っていた梅酒で飲み直すことになり、どこか遠慮が残っていたつくしと優紀だったが、いつのまにかわだかまりもほぐれ出し…つくしが総二郎と顔を出す前にはすでにかなり酒が入っていた桜子がまず最初にリタイヤを申し出てた。
 そして、たくさんある客間の一つへと足を向けつつ、
 「…すいません、一足お先に失礼いたします。先輩方もそろそろお肌の曲がり角には気をつけられたほうがいいですよ」
余計な一言。
 彼女の毒舌はいつものことだったけれど、少し心配顔だったのは、もしかしたら彼女なりの気遣いだったのかもしれない。
 …何気にけっこう世話焼きなんだよね、あの子も。
 見るともなしにつくしが桜子の後ろ姿を見送っていると、ふうと優紀がため息をついてソファの背もたれに身を投げ出した。
 顔を見てみるとけっこう優紀もできあがっているようで、仕事帰りから会合に出席してそれなりに飲んでいたというから、疲労もあるのかもしれない。
 「…優紀もそろそろ寝る?」
 「あ、うん。つくしは明日仕事なんだもんね」
 「まあ」
 総二郎に誘われた時にはそれを言い訳にしていたし、社会人である以上明日の仕事の心配はしないわけにはいかない。
 けれど、こうして久しぶりに気の置けない時間をかつての親友と過ごし、得がたい時間を楽しんでいる今夜を終わらせてしまうのが、つくしは惜しかった。
 …今なら、聞けるかも知れない。
 「あのさ、優紀、西…」
 「どうして電話くれなかったの?」
 「え?」
 言葉が被り、思わず互いに口ごもる。
 目で譲り合い、ふっと笑った優紀の顔は寂しげだった。
 「なんか、あたしたち、ずっと上滑りっていうか…昔よりずっと他人行儀のままだよね」
 「……っ!」
 そんなつもりはなかったけれど、やはりつくしの無意識の遠慮を優紀も感じ取っていたのだろうか。
 たとえあんなこと…司との交際で迷惑をかけた過去があったにしても、今、つくしが優紀に誇れる生き方をしていれたのなら胸を張って再び昔どうりの付き合いをしたいと頼むことができたかもしれない。
 …それもいいわけかな。
 「あたし、ずっとつくしからの電話を待っていた。…西門さんのお邸で顔を合わせるたびに、うちに遊びにおいでよとか、一緒にまた昔みたいに出かけたりしようって誘おうって決心するんだけど、言えなかった」
 「…優紀?」
 「昔みたいにあんたの足枷になっちゃうんじゃないか、とか。いろいろ考えちゃって、他力本願だとは思ったけど、実は桜子さんに今回誘われてこの機会を逃したら、もうつくしとは昔みたいな関係には戻れないと思って、一も二もなく飛びついたの」
 「……」
 「花沢さんとお付き合いしてるの?」 
 「…それは」
 「それとも、西門さんと?」
 息を呑む。
 けして、優紀の顔は詰るようでもなく、そこにはなんの含みも感じられなかったけれど、高校生の時に垣間見た切げな眼差しを今尚総二郎に向けていた彼女の顔を思い起こす。
 「この前、いろいろ自分たちの身の上を教えあったけど、実はまだ話していないことがあったんだよね?」
 確信だった。
 そうだ。
 自分もまた類との関係を優紀には話せなかった。
 ちょうど彼女と再会した頃、妊娠した婚約者のいる類との関係に悩み、自分の行く道に惑っていた時だった。
 類への愛を自覚し、だが彼の気持ちを知りたいと思う以前に互いのいびつな関係ゆえに周囲に及ぼしていた愛憎に打ちひしがれていた。
 大それたことなんて望んでいない。
 ただ平凡に。
 普通の幸せを。
 ただそれだけを願っていただけなのに、頑なに人の心の闇や自分自身の欲望から目を背けようとすればするほど雁字搦めに囚われた…類の闇に。
 そして、過去…似たような状況ゆえに、優紀ばかりか彼女の家族にかけた多大な迷惑の記憶は今を持ってもつくしの心に慙愧の念を色濃く残していた。
 また親しく彼女と付き合えば、再びあの日の悪夢に巻き込んでしまう可能性を否定できなかったのだ。
 …あたしはまた懲りもせずに。
 身の丈に合わない男を愛してしまった。
 けっして望んだことではなかったけれど、彼女の手には負えない大きな力の前へと立ち向かわねければならない事態に瀕した。 
 けれど、もうあの頃の雑草の根性など持ち合わせていない。
 再び愛した人々に迷惑を振りまき、苦しめる結果をもたらしてっしまうことになってしまったら、いったいどうやって詫びればいいのか。
 「…まさか、花沢さんと暮らしてるだなんて思ってなかった」
 「もう類はいないの」
 「それって…」 
 「あたしと類の関係は、…一言では言い表すのは難しいけど、普通の恋人とか、そういうのとは違ったの」





 「…牧野次第、ね」
 先ほどあきらが飲み干したウィスキーのグラスの氷が溶けて、カランと音を立てた。
 「お前、今までの経緯がありながら、まさか牧野がこの先お前についてくるとか、本気で思ってるんじゃねぇだろうな?」
 総二郎のキツい眼差しを真っ向から受ける類の目は、どこまでも静かだった。
 いつの日にか見せた、冷たく冴え冴えとした無表情ではなく、どこか儚げで自嘲を含んだ小さな笑み。
 「…どうだろう。でも、彼女は俺のことが好きだよ」
 「ハッ、スゲェ自信だな」
 そのとおりなのは総二郎もあきらも知っていた。
 だが、それをわざわざ恋敵に教えてやるほど親切でもない。
 もっとも、そんなことを二人に教えてもらわなければわからない類でもなかった。
 そしてそれを互いに知っていての茶番。
 けれど、ただの茶番などではなかった。
 互いに愛し方は異なっていたが、その中心にいるのはそれぞれの形で大切に思っている女。
 「お前たちがどこまで知ってる…知っているつもりでいるかは知らない。けど、お前たちは当事者じゃない。牧野と俺にしかわからない時間が確かにあるし、どういうふうに始まったにしろ、人の気持ちは通り一辺倒に生まれたり殺せたりするものじゃない」

 「……お前はそうでも、牧野はそうあっさりとお前のした仕打ちを赦せるもんじゃねぇだろう?」





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