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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第七章 裏切①

昏い夜を抜けて312

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 「奪う…っていうことは、先輩が花沢さんのもの、っていうのを前提にした言葉ですよね」
 まるで言葉遊びのようだ。
 けれど、改めて桜子に指摘され、自分がその類の認識を自然に受け入れていたことを自覚する。
 『あんたも俺のこと好きじゃん』
 確かに類はそう言っていた。
 そして、それを否定できないのに、頑なに彼を突っぱね続ける自分を思う。
 …赦せないとか。
 …赦せるとか。
 あるいは、
 …ともにいることなどできるはずがないとか。
 様々な思いにちぢに乱され、いったい自分が何を望んでいるのかさえつくしはよくわからなかった。
 もう嵐に見舞われるのは嫌だと平穏な生活を望み、その結果他人を傷つけ、もう逃げないと誓ったはずなのに、またしても自分は総二郎の示してくれた安易で楽な道に揺れ動いている。
 『俺が守ってやる。信頼と友情で築く絆は永遠』
 その言葉が、思わぬ程に彼女の心に響いた。
 …西門さんに、恋していない。でも。
 友として信頼していた。
 友として彼が好きだ。
 類や司に対するように恋し愛せる自信はなかったが、総二郎は一人の男性としても十二分に魅力的でむしろつくしにはもったいないくらい。
 そして、その彼自身が、つくしに恋愛を求めているのではなく、今のままで互いを守っていこうという提案をしてくれているのだ。
 「先輩、フランスに行かれるんですか?」
 温かな紅茶を啜り、静かな眼差しでつくしを見守っていた桜子がゆっくりと切り出す。
 「桜子」
 「花沢さんについて行かれるおつもりですか?」
 一応フランス留学の話は桜子にも通してあったのだが、まだどういう選択をするつもりか話していなかった。
 いや、つくし自身もまだ決めかねていたのだ。
 桜子もいいかげん彼女の決意を聞きたかったのだろう。
 桜子には何かと相談にのってもらい、また世話になっていた。
 いつまでも黙っているのでは、不義理にあたる。
 だが、類の進退は社秘。
 いくら親友の二人が相手でも、つくしの勝手で彼の事情を口外するわけにはいかず、また自分でもよくわかっていない事柄をうまく説明などできるはずもない。
 だから、言えることだけを。
 「…類と一緒に行くとか、そういうのじゃなくって、あたしのフランス行きの話は、完全に仕事の都合だよ」
 「社費留学でしたよね?」
 「…うん、身に余ることだけどね」
 実際のところは、類や周辺の思惑からことが始まったのだろうが、一つのチャンスには違いない。
 特に類が東南アジアに去るのだとすれば、純粋に自らのスキルアップにも繋がるし、きっと良い経験にもなる。
 「9月からスタートでしたっけ?」
 「…そういうスケジュールみたいだね」
 「じゃあ、そろそろあちらに引っ越されることになるんですか?」
 「ん~」
 曖昧な受け答えしかできないつくしに、桜子が眉根を寄せ懸念を口にする。
 「まさか先輩、どうされるおつもりなのか、まだ決められていないとか言わないですよね?」
 「実は…まだ」 
 「もう、相変わらずなんだから」 
 面目ない話で、呆れたように言われても反論できない。
 「つくし、海外に行くの?」
 桜子とつくしの会話の行方を黙って聞いていた優紀が、寝耳も水、驚き顔も顕につくしに向き直った。
 「…えっと、そうなるかもしれない、かな」
 「その話、だいぶ前からありましたよね。まさか、まだ決められていなかったとは」
 「あたしにもいろいろ事情があるのよ」
 この数ヶ月…いや、類と再会して一年近くの間に様々なことがあった。
 そしてまるで司と出会ってからの一年と同様、まるで激しい嵐に巻き込まれたかのように激変する毎日を懸命に過ごしてゆくことに精一杯で、とてもそんな未来のことまで考える余裕がなかったのだ。
 現に状況も刻一刻と変わり、内密に…とフランス留学の話を高階から聞いた時点から類との関係、いや気持ちさえも大きく変わってしまった。
 そして、類の現在の立場。
 「私からすれば簡単なことだと思いますけどね」 
 「……」
 「仕事上の出世とかそういうのはともかくとして…ようは、花沢さんについていきたいのか。それとも、袂を分かちたいのか。…ある意味、花沢さんにとって日本とフランスであろうと、それこそ地球の裏側同士に離れ離れになっても、距離的なものはあまり問題はないでしょう」
 まさにそのとおり。
 総二郎も語っていたが、彼らにとって海外とは言ってもつくしや優紀のような庶民とは敷居が異なる。
 「それでも、それこそが先輩の決断…花沢さんとの関係をどう先輩が選んでゆくかの意思表示。ましてや、現在の状況であればなおさらのこと、これからのお二人の関係を大きく変えるきっかけになることでしょうね」





 「…東南アジア、ってマジか」
 「類」
 いくらなんでも総二郎とあきらでも驚いたのか、なかなか二の句を継げなかったが、類の方は飄々としたものだ。
 別段それで凹んでいる風もなく、今左遷されたと口にしたのが嘘のように、
 「これ、本当に美味いや。惜しいな、しばらく東京から離れることになりそうなのに」
とあっけらかんとしていた。
 「花沢物産の後継者のお前を左遷できるってことは、お前がよほどのヘマをやったんじゃなければ、…彰、高階かよ」
 さすがに耳目を気にして、総二郎が声を潜める。
 花沢家の醜聞は大概伏せられていたし、類も親友とはいえ彼ら二人にもあえて話していなかったのだ。
 もっとも単純に拘りがなかっただけのことで、聞かれれば話したかもしれなかった。
 しかし、総二郎たちの方が憚ってタブーにしていた。
 それでも知っていたのは蛇の道は蛇。
 もしかしたら、そういう各家の裏に通じている桜子なども知っている事実なのかもしれない。
 「高階…って、お前の母方の従兄弟の高階彰か?」
 むしろ、あきらの方はそれほど通じていなかったのか怪訝な顔だ。
 「たしか、お袋さんの兄貴の子だろ?高階家の跡取りなのに、お前んとこに下から入ってたよな?」
 「跡取り…ってわけでもない。高階のお祖父様はあれで実力主義だから。直系の男は…まあ表向き彰と俺だけだけど、お祖父様も兄弟多いし、そこらへんはいろいろとね」
 あきらの家は母親がああいう女性のせいか、わりにまともと言って良かった。
 けれど上流階級の人々には、金がうなっているだけに各家いろいろな事情がある。
 それを知らないあきらではなかったので、苦虫を潰したような総二郎の顔にとりあえずはそれ以上の追求を控えた。
 「ま、ある意味俺のヘマだったとも言えるかもね」
 「…黙って、去る気か?」
 「それが問題かな。退くべきか退かざるべきか」
 禅問答のような答えだが、この男は虫も殺さぬような顔をしていながら一筋縄ではいかない食わせ物なのは二人ともよくわかっている。
 「なにか仕掛けてんのかよ?」
 「…まあ、流されてるだけじゃ、結局自分の意思を通せるものでもないし」
 曖昧な口調での肯定に、否定はしないが類が二人に詳しく話すつもりはないのは明白だった。
 「どちらにせよ、牧野待ちかな。彼女がどうしたいのか。どういう選択をするのか。それによって俺の取る道も変わることになるよ」





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