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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第七章 裏切①

昏い夜を抜けて311

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 「え?」
 「今度は短期の出張ではありません。日本支社長として、少なくても数年単位でこちらに腰を落ち着けられるようですね」
 「…道明寺が」
 呟いたつくしの声はひそやかで、それだけでは彼女の心情は伺い知れない。
 複雑ではあっただろうが、以前のような痛々しいほどの空元気も、また忌避もなく、ただ視線を伏せた横顔には穏やかさがあった。
 …先輩。
 「それって、近々なんだ?」
 「ええ、今月中もしくは来月頭には、赴任されるはずです」
 おそらくその情報を受けての総二郎の宣戦布告なのだと、桜子は読んでいた。
 つくしからある程度のことは聞いていたし、実は総二郎とも会話を交わす機会はそれなりにある。
 総二郎本人は、つくしとの間は極めて理性的な熟慮の末…友情と自分の結婚観によるものだと言い張っているが、桜子はそうは思っていなかった。
 …先輩と連れ立って店に入ってきた時の顔。
 目を瞑ってすっかり寝る体勢に入っていた類が、どう反応するか実はヒヤヒヤしていた。
 司などとは違い直情型ではない類は、桜子には読み難い相手。
 嫉妬は時に恋愛を深めるエッセンスになるが、これまでの彼の行動からして一筋縄ではいかない男なのは確かだ。
 つくしの幸福のために。
 半ば友というよりも、ほとんどつくし崇拝者に近い…もしかしたら同性でなければ、類や司などよりよほど熱烈な求愛者になったであろう桜子だったから、常に念頭にあるのはつくしにとっての最善。
 総二郎は一見屈折していて、本音を晒さない。
 けれど、桜子から見れば、ねじれくれまくった自分や類などよりよほど真っ直ぐで、直情型な彼はわかりやすかった。
 「つくしがあれほど忘れられなかった人だものね」
 だから、その言葉を呟いたのは自分だったのかと、瞬間桜子は自分を疑い、その言葉の主へと視線を向けた。
 優紀がひっそりとつくしへと微笑みかける。
 「…優紀?」
 「西門さん、自分の立場をしっかりと宣言したかったんだよ。道明寺さんが帰ってらっしゃる前に…花沢さんとあんた。そして、あたしにも」





 「司、帰ってくるんだろ?」
 総二郎の確認に頷いたのは、意外にもあきらではなく類だった。
 珍しく体を起こして、話す姿勢になっている。
 「らしいね。そろそろ電話かかってくるんじゃないの?」
 「…お前は入れ違いでフランスか?」
 あきらの問いに、類が少し首を傾げ否定も肯定もせずに、酒を口に含む。
 「次、マティーニね、俺」
 空のグラスを差し出され、うっかり受け取ってしまったが、そんな自分に気がつきあきらが顔を引き攣らせる。
 「…俺はバーテンでもウェイターでもねぇよ」
 「まあまあ、俺はマルガリータ」
 総二郎にまでふんぞり返って指示され、ガクッと肩を落としつつも、さすがに自分で作り出したりはしない。
 手を挙げ、ウェイターを呼ぶあきらを横目に、
 「類、お前、牧野も連れてフランスへゆくつもりか?」
と総二郎が類へと直球で問いかけた。
 「フランス?」 
 「ああ。あいつ、俺んとこ辞めさせてくれって言ってきたぞ」
 「ふぅん、単純にお前のアタックが嫌だったんじゃないの?」
 「……言ってくれるじゃねぇか」
 「たぶん、まだ迷ってるんでしょ。日本に残るか、フランスに行くか」
 その中に、類についてくる選択肢は果たしてつくしの中にあるのだろうか。
 アンニュイな顔で総二郎と会話を交わしている類へと視線を走らせたあきらが、首を傾げた。
 「なんか、お前、ずいぶん毒気の抜けた顔してるな」
 「そう?」
 「ああ、ここ数年、お前、司ばりに荒んでただろ?」
 すべてお見通しの幼馴染みに、類が薄らと笑みを浮かべる。
 「別に暴れたりしてないよ」
 「まあな。外に出ない分だけ、司よりタチ悪いし」
 その被害の大半を被ったのは、つくしだろう。
 彼らのスタンスではなかったから、総二郎もあきらも口には出さなかったが、類と司、この二人の幼馴染みの荒廃を心配していないわけではなかったのだ。
 …こいつらにしてみればよけいなお世話ってところだろうがな。
 「牧野をフランスに連れてゆくのは、司に奪わせないためか?」
 「ん~、どうだろうねぇ。司がその気なら、日本だろうとフランスだろうと関係ないでしょ?」
 「そりゃそうだろうけど」
 けれど、長年NYに本拠地を置いてきた司が、この時期、日本に帰ってくることにどんな意味があるのだろうかと、総二郎もあきらも考えずにはいられない。
 当然、類だとてそれを考えていないはずがないのだ。
 「第一、俺、フランス行くわけじゃないし」
 「「はあ!?」」
 司の思惑について考えこんでいたあきらと総二郎が、突然の爆弾発言に、キョトンと目を瞬かせる。
 何気なく口にされた言葉が、気のせいだったのかと、二人が思い始めた頃、ようやく酒が来て、類がクイッと口に含んでにっこりと微笑む。
 「うん、美味い!さすが。評判になるだけあるね」
 賞賛されたバーテンダーがおそらく噂のカリスマ・バーテンダーなのだろう。
 年の変わらぬ青年である類の笑みを受けて、薄暗い照明越しにも嬉しそうに微笑んでいるのが見えた。
 …こいつのエンジェルスマイルにやられるのは、牧野だけじゃねぇんだよな、そういえば。
 中身を知っている二人にしてみれば真っ黒な腹としっぽが見えるばかりだが、学生時代と異なり黒さを増した類は、意図的にそんな自分の笑みをビジネスで活用することも珍しくなかった。
 「俺の次の赴任予定地、東南アジアに変更。再来月あたりから、左遷人事で飛ばされるみたいだね」





 明日も仕事。
 平日の夜、早々に家に帰って寝るはずが、いつの間にか強引に桜子に押しかけられ、明日休みの優紀とともに女子会と称してつくしのマンション(実際は類の持ち物だが)に二人を泊めることとなってしまった。
 当初、桜子の邸に誘われたのだが、誰が待っているわけではなかったものの、現在つくしは犬を飼っていて急な外泊はできない身の上。
 「うわぁ、素敵ねぇ」
 「さすが、花沢さんのマンションですねぇ。1フロア丸々ですか?」
 「…うん。ここの棟自体も、類の持ち物だって」
 キョロキョロと物珍しげに見回す桜子と優紀をソファに座らせ、お茶を淹れる。
 類とつくしには甘えたなベベは、やはり日本系の血が混じっているのか、吠えかかったりしなかったが、どこか警戒を浮かべた目で二人を伺うばかりで、愛想をする優紀にも近づこうとはしない。
 「花沢さん、思いっきり俺のもの宣言でしたね」
 「…は?なにが??」
 お茶をだし、自分の分もテーブルに置いて腰を下ろそうとした途端、キラリと目を輝かせた桜子が唐突に切り出す。
 「西門さんにおっしゃってたじゃないですか。先輩を奪うつもりなら誰が相手でも容赦しないって。でも、それって、ある意味すでに先輩を手に入れてる宣言も同然ですよ」





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