FC2ブログ

「昏い夜を抜けて…全483話完」
第七章 裏切①

昏い夜を抜けて308

 ←アネモネ102 →アネモネ103
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 「美味いメシに、綺麗な夜景と…あとは、海辺を車でカッ飛ばして、雰囲気のあるバーで1杯。で、…次は~」
 今通り過ぎた景色から顔を戻して、呆れた顔でつくしが総二郎を振り返える。
 「ホテルなんかに連れ込まないでよ。と、いうか、あんたのデートコースって、いかにもなコテコテよね」
 「馬鹿だな、つくしちゃん。そのコテコテこそデートコースの王道。どの女を誘ってもまず外さないもんなんだよ」
 「…あそ」
 まあ、確かに総二郎には三回ルールなるものがある。
 普通の恋人同士だったらそうもいかないだろうが、よくも知らないもの同士、それならばコテコテコースで十分なのかもしれない。
 「意外に、女たらしって独創性ないのね」
 「この甘いマスクとトークさえあれば、そんなもんいらねぇからな」
 「…さようですか」
 本人が言って許されるのが一番ムカつくところだが、そんなことは今更なので、つくしもあえては言わない。
 「で、どうする?」 
 「あたし、明日も仕事だからもう帰るよ」
 「じゃあ、1杯飲んでやめにしておくか」
 「ちょっと!」
 聞いておいてなにげに人の話を聞かないのはわかっていたが、それでも言わずにはいられないのも、それこそつくしのデフォルトだ。
 「ハァ~、あんたいったい何がしたいのよ」
 「だからデート?」
 「あたしがそういうので靡かないのは知ってるでしょ?」
 「美味いメシに、綺麗な夜景、雰囲気あるデートコース嫌い?つくしちゃん」
 「……嫌いじゃないけどさ」
 それで総二郎を好きになるかといえばまた別問題だが、彼に連れて行かれる食事はいつも美味しかった。
 それでなくも、食べることが大好きなのだ。
 つくしだとて乙女心は持ち合わせているので、美しい夜景もドライブも嫌いじゃない。
 …さらに、フェロモン系超絶美形付き?
 「ま、さすがにお前をホテルまで連れ込めるとは思ってねぇけど、いくら恋愛じゃねぇつーたって、俺もサービス精神は忘れてねぇよ」
 「なによ、それ」
 「女釣ろうとしてんのに、努力もなく座して待とうとは思ってないってこと」
 「もうっ」
 窓から入る空調ではない潮の香りの自然風が心地よい。
 革張りのシートは座り心地が良くって、難しいことさえ考えなければこうしている時間は殊の他楽しかった。
 「それに、俺もけっこう楽しいし…」
 密やかな声は小さすぎて、気のせいかとも思う。
 つくしが目を瞬かせジッと総二郎を見つめると、横目で視線を流してきた総二郎の目尻が細まってそっと眼差しが緩む。
 目尻によった笑い皺さえも、どうかすると整いすぎて冷たく見えがちな美貌に柔らかさを作り、艶めいた眼差しがゾクリとつくしの背筋に震えを起こさせる。
 隣にいるのが気の置けない長年の友人から、魅力的な『異性』に変わる瞬間だ。
 …ヤバイ、絶対ヤバイ。
 何がやばいのかハッキリとは自覚できないままに、自分の恋愛偏差値の低さで総二郎と二人っきりでいることの危うさを思う。
 気がついたらこの男のベッドに連れ込まれていた…ありえそうで笑えない予想に、ドキマギと視線を泳がせ、どう無事に帰宅するかをつくしは頭で算段し始めた。
 「えっとさ」
 「お、ついたぞ」
 「は?」
 そうこうしているうちに気がつけば、郊外から街中。
 F4と付き合っているとお馴染みの界隈へと戻っていた。
 「あのさ、マジであたし…」
 「ホテルでもないし、駅前にしてやっただろ?ま、帰りも送ってくから関係ないけど」
 「…って、それじゃあ、あんた飲めないじゃん」
 ほとんど衝撃を感じさせないスムーズな運転で、車がエントランスに滑り込む。
 駐車場に行かないのかと思っていると、あらかじめ連絡してあったのか、スーツ姿の男性が近づいてきて、頭を下げるのを見やって総二郎が運転席を降りた。
 つくしも急いでシートベルトを外し降りようとドアに手をかけるまでもなく、総二郎の手により助手席のドアが開けられる。
 乗る時のようにウィングを自動で開けてではなく、手づから開けてくれるのは、これも総二郎の演出の一つだろうとは思ったがもちろん悪い気はしない。
 「あ、ありがとう」
 小さく笑って手を差し出してくれるのに迷いつつ、彼らのエスコートには慣れてもいる。
 わざわざ突っぱねることもなかろうと、諦めて手を借りた。
 …手を貸してくれなきゃ降りられないお嬢様じゃないつーの。
 「じゃ、頼むわ」
 出迎えた男性に鍵を放り投げ、総二郎がつくしの腰に手を置き店内へと向かう。
 堂々としたエスコートについ自然に歩き出してしまったが、それはそれで密着度が気になった。
 「…あのさ」
 「腰抱かれたくらいでオタオタすんなよ。エスコートしてるだけだろ」
 それはそうかもしれなかったけれど、つくしの世界では男性にエスコートされる機会などそうそうなかったし、あるいはあっても類か、せいぜい以前に付き合っていた司くらいにしかされた経験がない。
 …美作さんだって、ここまでベタって張り付かなかったよ。
 確かにオタオタするほどではないのかもしれなかったが、困惑する。
 よりによって、いくら長年の友人とはいえ女たらしと警戒してきた総二郎だったし、あまつさえ最近では口説かれている相手なのだ。
 「へえ、けっこういいじゃん」
 「…なに?あんたも初めてなの?」
 「ああ。先月オープンしたばかりらしいぜ、ここ。なんでもフランスの5ツ星ホテルのバーでチーフを勤めていたバーテンダーがオーナーだっていう触れ込み。そのオーナーが若くして世界的なカクテルコンペティションにも優勝した経験もあるってことだから、俺らの間でもちょっとした噂になってたんだよな」
 「そうなんだ」
 つくし的には元々お酒にもそれほど強いわけではなく、嫌いなわけでもないけれど、造詣が深いわけでもない。 
 美味しければチョーヤの梅酒でも全然構わなかったが、曲りなりとも食品業界に勤めているのだ、これも一つの経験かと好奇心を抱く。
 店内を一歩入ると落ち着いた雰囲気の内装が、ほの暗い間接照明に照らされて、琥珀色に浮き上がり、しめやかなジャズが大人の雰囲気を醸し出していた。
 さっそく応対に出た店員に、
 「…西門。ツレが先に来てると思うけど?」
 「お待ちしておりました」
 その言葉に、え?と総二郎の顔を見上げる。
 誰か他の人間が来ているなど聞いていなかった。
 「ねえ、誰と…」
 「遅いですよ!夜更かしは美容の大敵だっていうのに。呼び出しておいて、ホストが遅刻ってどういうことですか!?」

 「は?桜子?」
 驚くつくしをよそにホールから出迎えに出てきた桜子の背後、苦笑するあきらの顔が覗く。
 「え?み、美作さん?」
 「よ、久しぶり。俺らだけじゃないぜ」
 広いホールの内部、数人の人影しかない。
 だが…。
 「花沢さんと…、優紀さんもいらしてますよ」





◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ





ブログランキング・にほんブログ村へ 💛 
いつも応援ありがとうございます^^!

web拍手 by FC2






関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【アネモネ102】へ
  • 【アネモネ103】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【アネモネ102】へ
  • 【アネモネ103】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク