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「アネモネ…全171話完+α」
第四章 Glass Heart

アネモネ170

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 泣きそうな顔が司を見て、懸命に唇を噛み締めていた。
 「…代表?」
 呼び止める西田の声が耳に入らない。
 つくしの他には、もはや誰も司の目には入らなかった。
 人々の間をすり抜け、突き飛ばすようにつくしのもとへと司が駆け抜けてゆく。
 「つくしッ!!」
 わあああっ、という人々の怒号が飛び交い、虚を疲れた警備員たちの間をすり抜け、司がつくしの腕を掴み引き寄せ抱き竦めた。
 驚いて棒立ちになったつくしの耳へと、司が唇を寄せ囁く。
 つくしの目が大きく見開かれ…。





 「お、そろそろ司がNYに旅立った頃じゃね?」
 出されたコーヒーを応接テーブルに置いたあきらが、時報を告げた背後の壁かけ時計を確認して類へと振り返る。
 「ん、そうだね。これで、またしばらく、日本も静かになるんじゃない?」
 「まったくだ」
 良きにつけ悪きにつけ、司は台風の目のようなものだった。
 …それでも、牧野が一緒じゃねぇからな。
 複雑な思いに溜息をついて、目の前の男をジッと見つめた。
 「…なに?人妻やめて、俺に惚れちゃった?あきら」
 「そういう冗談よせ。うちのお袋や妹たちが喜ぶだろ」
 「はは、何、小母さんたち腐女子なんだ」
 業界用語?をあっけらかんと使ってカラカラ笑う幼馴染みは、昔からあきらには理解し難かった。
 「お前、本当にいいのか?」
 「なにが?」 
 「牧野、承諾しなかったんだろ?お前についてフランスに行くの」
 さすがに複雑な笑みを浮かべたものの、やはりこだわりなく肩を竦めてあっさりと頷く。 
 「ま、しょうがないよ」
 「しょうがないって」
 「司を忘れたくないし、忘れるつもりもないから、俺のプロポーズは受けられないって、キッパリ断られちゃったんだもん。いずれ幸せにはなるつもりだけど、今はゆっくりと思い出を抱いていたいんだってさ。そう言われたら、しつこくするわけにもいかないでしょ?俺嫌われたくないし」
 …もん、てなあ。
 いい年をした男が使う言葉でもないだろうに、似合うところがまた怖い。
 それはともかくとして…。
 「別にいつまでも待ち続けるスタンスだったんじゃねぇの?お前」
 「まあね」
 ため息をついて、類が立ち上がる。
 「なんだかんだ言って、牧野にとって俺も司も十把一絡げなんだよね。俺の顔を見ると司を思い出すんでしょ」
 「…ああ、まあ、そりゃあそうかもな。会いたくないって?」
 「まさか、そんなこと言わないよ、牧野は。じゃなくって、むしろ俺を見ると司への気持ちを再確認しちゃうみたいだからさ」
 「……」
 何と言ったらよいのやら、困ってしまってあきらが黙り込む。
 「しばらく、距離を置くよ。時間もかな。俺的には司のことを忘れて、っていうわけじゃないんだけど、やっぱり今すぐはいろいろ無理でしょ?」
 「まあ、牧野も不器用な奴だしな」
 「て、ことで、行ってくるね」
 ひらひらと類が手を振り踵を返す。
 「おう、そろそろオーストリアの外相と司の2大スクープネタで沸いてた連中もいなくなってんだろ」
 そのために、司たちとはわざわざ飛行機の時間をズラしての日本出国なのだ。
 類も司ほどではなかったが、何かと週刊誌ネタにされやすい人間なので、できるだけ報道陣は敬遠したいのが本音だった。
 …オーストリア外相か。
 つくしが次の警備対象者である外相の奥方のSPとして、空港まで出迎えに出向いているはずだった。
 まさかね、そう思う端からもしかして、とも思う。
 12年を得てしても、再び出逢った二人。
 願わくば…。
 どうかもう一度、彼女の本当の笑顔が見れますように。
 たとえ自分の腕の中に抱きしめることができないのだとしても、ただ、彼女の幸せそうな笑顔をいつかもう一度見たい。
 類の本当の望みは、それだけだった。
 「…だって、俺にとってそれが愛ってやつだもん」






 大勢の人間が行き交う空港で、気がついたら、追いかけていた。
 去ってゆく後ろ姿に、追いかけずにはいられなかった。
 立場も、状況も、すべてが遠のき…。
 彼女に触れた瞬間、まるで喉を塞がれ、耳を塞がれ、目を塞がれていたかのように、苦しかった呼吸が、ずっと聞こえていたノイズが、灰色の世界が、鮮やかに切り替わった。
 驚くつくしを抱きすくめて、逃げられないように囲い込んだ。
 周りの雑音など何も耳に入らなかった。
 それはずっと十数年前…彼女と出会った頃からの必然で。
 戸惑ったように彼を見上げた耳元へと唇を寄せて、掻き口説く。
 「愛してる」
 「え?」
 キョトンとした顔が、何を言っているのかと、彼を見つめて、たた瞬きその言葉の意味を理解できずにただ棒立ちに立ち尽くして。
 「なに?道明寺?いま、なんて?」
 「…お前がいねぇと、幸せになんてなれねぇんだ」
 「……」
 指先に触れた頬の温もり。
 呆然と彼を見つめる黒い瞳の輝き。
 両手で彼女の頬を包み込み、その目を覗き込む。
 もう彼女しか見えない。
 …俺しか見ることは許さねぇ。
 「色がなくなった、味がしなくなった。うるせぇ音ばかりで、気が狂いそうだった」
 「道明寺」
 甘やかな吐息が鼻腔をくすぐる。
 柔らかな声音が彼の心に染み入った。
 ただ、彼女が彼の名を呼ぶだけで、手足に血が通う。
 体に温もりが宿る。
 「お前がいねぇと俺は何一つ楽しくねぇんだ。俺の手に入らないものは何一つないのに、この世の全ての快楽を知っても、俺は幸せになれない」
 幸せが欲しいんじゃない。
 この女を手に入れることが『幸せ』だというのなら、その幸せが欲しい。
 けれど他にどんな幸せがあるのだとしても、彼女が手に入らないのならそんなものはいらない。
 ただ欲しいものはひとつだけ。
 「俺から逃げられると思うなよ、俺はしつこいんだ。お前が逃げるなら、地獄まで追いかけるからな」
 つくしの目が見開かれ、潤んだ目から涙が零れ落ちる。
 ゴクリと唾を飲み込んだつくしの唇が震えだして、小さな喘ぐような嗚咽が溢れ出した。
 『…あんたが好き』
 そう聞こえた気がした。
 けれど、たとえそうでなくても司には関係なかった。
 彼女が自分をどう思っているかではなく、
 ―――彼女を欲しい。
 ただ、それだけで。





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ぎゃー!!!拍手連ポチです(笑)

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NoTitle

こんな展開になるなんて、思いもつかなかったですぅ。さすが司くん。ついにやりました。全国ネットでの愛の告白。えっ~~と、これはもう明日の一面トップ間違いなしですね。カメラ回している大勢の報道陣、今年度最大のスクープがとれてよかったですね。派手な男はなにをやっても様になるぅ。オーストラリア外相さんがかすんでいるかも。

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泣いちゃった(;_;)

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