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「アネモネ…全171話完+α」
第四章 Glass Heart

アネモネ169

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 「…すごいな、今日は2大有名人が顔合わせするのか」
 「はは、顔合わせって言ったって、会談の予定があるわけじゃないし、そもそも畑違いだろ?すれ違うことさえもよほどの偶然がなけりゃないさ」
 それぞれの取材陣が顔を合わせては、狙いを定めるターゲットの訪れを今か今かと待ち構えている。
 片や経済誌、片や政治面の記者たちだ。
 そうした取材陣や、一般客の合間に、耳にはインターコム、桜田門のバッチを身につけたSPやら、制服警官の姿もそこかしこに見える。
 「…ドイツだか、オーストリアの外相が来日するんだったか」
 「ええ、間が悪いことにちょうど、代表が乗られる機と入れ違いのようです」
 「ふん、むしろうるせぇハイエナどもが分散していいだろうよ」
 司は西田に言いながら、腕時計を確認する。
 多少早いが、グズグズして取り囲まれるのも面倒だ。
 空港のVIPルームから一歩出ると、人々の喧騒が耳につき、寝不足の頭には特に煩く感じて司は顔を顰める。
 だが、それ以上に採光窓から入り込む陽の光が、妙に目を射る気がしてイラついた。
 …たく、ここのところイヤにババァの移動とバッティングするぜ。
 自家用ジェットを会長の楓が独占していて、ここのところヨーロッパに詰めているため、一般航空機を利用するハメになったのだ。
 だがそこには、道明寺HDの幹部たちの思惑も透けて見える。
 良きにしろ悪きにしろ、昔から何かと話題に事欠かず、宣伝効果も高い司をより露出しようという意図があるのではないかと、司も疑っていた。
 …この俺を客寄せパンダに使おうってか。
 今までは牙と爪をある程度隠して動いていた。
 けれどそろそろ潮時かも知れない。
 いつまでも楓の風下に立つのもいいかげん飽き飽きしていたところなのだ。
 老害はさっさと排除するべきだと、改めて思い決める。
 …なにが、『老兵は死なず、ただ消えゆくのみ』、だ。
 したり顔で彼に物申した財閥幹部の顔を思い起こし内心で唾棄してやり嘲笑う。
 わああぁっと歓声が上がり、もう発見されたのかと顔を顰めれば、どうやら噂のオーストリア外相がこちらより一歩早く到着したようで、取材陣が詰め寄せ、警備との間で一悶着となっていた。
 「…運が良かったな、こりゃ」
 「騒ぎに巻き込まれないように迂回致しますか?」
 西田の提案に、少し考えて、
 「いや、真横を通ってやろうぜ。…連中がオーストリア野郎と俺のどっちをとるか試すのも一興だろ?」
 「…代表」
 ふふんと笑う司の確信犯的稚気に、頭痛を覚えたのか額を抑えたものの、案外騒ぎの混乱の横を通り過ぎた方が取材陣の目を眩ませられるというのも一理あると思い直したのか、西田は反対しない。
 「つーことで行くか」
 コンコースを歩きながら、見るともなしに窓の外へと視線を向ける。
 青空の下、確かあの日…最後につくしと成田付近のホテルに泊まって見下ろした景色を思い出す。
 …嫌に、感動してやがったな。
 すごい、綺麗だと見惚れていた。
 今思うとそのはしゃぎ方は、明らかにいつもの彼女とはまた違う空気をまとっていたように思う。
 嬉しそうに笑ったと思ったら、妙に切ない目で彼を見て、寂しそうに微笑んでいたのはきっと気のせいなんかじゃなかったのだろう。
 たぶん、あの時にはもうすでに彼との別れを意識していたのに違いない。
 …ふ、あの女にとって、俺とNYに行くなどという選択肢はまったくなかったわけだ。
 自分に惚れていると思っていたのは自惚れだったのか。
 彼を見る目が、彼に触れる手が、彼の名を呼ぶ声が愛しさに満ちていると思っていたのは独りよがりだったとでもいうのか。
結局、つくしは彼を彼自身の名前で呼ぶことすらしなかった。
 …何を今更。
 もう過ぎ去ったことだ。
 そう何度も自分に言い聞かせた。
 彼女の面影をさがすたびそう自分を自嘲し、なのに彼女を探すことをやめられない。
 ザワザワ。
 人ごみを抜けて。
 チラホラと彼を振り返る人々の驚愕に満ちた眼差しなど、物ともせず、ただ前だけを見つめて。
 ワ―――ッ!!
 人々の歓声がドッと上がる。
 司の横にいる西田や、周囲を固めるボディガードたちが緊張を高め、周囲を見回した。
 「来たぞ!!外相にインタビューだっ!!」
 一斉に動き出す人波。
 押し寄せる人々を押しとどめる警備員たちの怒号が行き交う。
 ふと、停止する思考。
 時間が凝縮して、まるで司とその視線の先以外の全てが止まってしまっているような錯覚に陥る。
 …どんなに人の波に埋もれていようとも、俺はあいつを見つけられる―――。
 デ・ジャブ?
 身に覚えもないはずの過去の日の光景が脳裏に思い浮かぶ。
 あれは、いつのことだ。
 人ごみの中、人と人の間を縫うようにして、つくしが彼へと真っ直ぐに歩み寄った。
 ごく平凡な女なのに、人の間に埋もれてしまうほどに小さな女のつくしを司はいつもどんな遠くからでも見つけることができたのだ。
 司の視線が一点に集約する。
 彼が見守る中、ボディガートたちとSPたちの集団とともにこちらへとやってくる。
 司より25cm低い身長。
 華奢でしなやかな肢体は誰よりも強靭で美しかった。
 ふあふわのショートの髪が縁った童顔の顔が俯いて見えない。
 生真面目で堅い表情の横顔に、彼へと恥ずかしそうに微笑んだ女の面影を探して、司は目を細めた。
 …見ろ。
 …俺を見ろ。
 無意識の願い。
 もしかしたら、口に出してしまっていたのかもしれなかった。
 一瞬の邂逅。
 横を歩く同僚らしい人物の言葉に耳を傾け、ただ警備対象者だけを見ていた女の視線が、司へ…。
 確に、その眼は司を映して、一瞬だけ目を見開いたのに。
 愛しさも、懐かしさも…ホンの1ヶ月前に彼へと向けた慈しみさえもなく。
 ただただ彼女らしくない冷たい無表情が司の上を撫でて、そのままあっという間に反らされてゆく。
 目が合った瞬間、司の中だけには確かな磁力が発生したと言うのに、何事もなかったかのように去ってゆく小さなその背には何の感情もないのか?
 「…アホが」
 「は?」
 気がつけば、横を歩く西田が、司を怪訝に見つめていた。
 「…いや、なんでもない」
 「そうですか、どうやら数人の報道陣はこちらに気がついたようですが、まずは外相の方を優先したようですから、今のうちに搭乗してしまいましょう」
 西田に促され頷きながら、司は今消えた白昼夢を追うように、もう一度だけ振り返る。
 だが…、つくしが見ていた。
 彼を無視して知らん顔をしていた女が万感の想いを湛えて見つめていた。 





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あ、あれ?

やっぱり、予想通り最後の最後まで司の記憶は戻らない様子・・・
う~ん・・・
司には、記憶を取り戻した上で懺悔と後悔で苦しんで欲しかった←鬼ですかね

だってだって!
「お前としか考えられないから待つわ」と言ってたくせに(原作だけど)記憶を失ったら、他の女とやりまくったあげく、見せつけるように傷つけまくり。

う~ん・・すぐに始まる番外編に期待しつつ、実は本編の続きではなく、つくしがSPとして司と過ごしていた頃のアレコレだったりして。なんて不安も・・・
不安が杞憂に終わり、その後の二人を読めますように(切望!!)

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まったく記憶がないんだから仕方がないと思う。
確かにつくしをキズつけたことには変わりないけど。
記憶にないので約束も覚えてるはずもなく、派手に女遊びしようと
つくしを忘れたことは、司のせいではないよ。
もう12年前の頃の司ではないと、29歳のつくしもそれは承知しているんじゃないかな。
でも記憶を取り戻した司なら
きっと忘れたことでさえも自分の責任だと考えるだろうね。
忘れさえしなかったらキズつけることもなかったはずだとね。

記憶喪失云々でもなく、
これまでの信頼を裏切り蹂躙する行為をする方がもっと最悪だと思うよ。
相手との信頼感が高いほど裏切られたショックが大きく、
ストレス障害になるケースが高い。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)にならない方が不自然かな。

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