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「アネモネ…全171話完+α」
第四章 Glass Heart

アネモネ166

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 『週明けには、NYに帰るんだろ?』
 そんなあきらの誘いに乗ったのは、おそらく単なる気まぐれだった。
 ガキじゃない。
 ここ12年にしては、異様に多い頻度で顔を合わせていた幼馴染みたちだったが、今生の別れというわけでもなるまいに、日本の再び離れるからといってわざわざ今更別れの挨拶を交わすのも鬱陶しい話だ。
 けれど、どのみち日本での業務も大方やり尽くし、元々怪我を快癒させるという名目の為に延長した日本滞在。
 司はろくに眠れぬ夜を持て余していた。
 「お、来たな」
 先に到着していたらしい総二郎が、手を上げる横へと、司が腰を下ろす。
 「…何飲む?」
 「スコッチ…ストレートで」
 「ストレートぉ?まだ、明日は仕事だろうよ」
 さすがの学生時代とは異なる。
 F4全員ザルの口で、特に司はアルコールに強く、学生時代から酒を水のように嗜んでいたが、それにしてもやはり平日の酒は次の日に残る。
 先日の飲み会でも、司は主にロックか水割りで飲んでいたのを鑑みれば、おそらく総二郎やあきらと同じようなスタンスで飲んでいたのだろう。
 だが…。
 「かまうなよ。最近、眠りが浅くて、睡眠薬替わりで飲んでる」
 実際には主治医に睡眠薬を処方させて、その睡眠薬を酒で流し込んでいたのだが、それを言うとお節介なあきらあたりが煩そうなので口にはしない。
 「…てか、なんかお前ずいぶん、顔色悪いな」
 つい一ヶ月半くらい前、入院中の司を見舞った時には、重症の怪我で臥せっていたはずなのに、その時の彼よりはるかに今の方が窶れているのが明らかで、総二郎とあきらが顔を見合わせる。
 「ふん、いつものことだ。で、類はどうした?」
 今日は男だけだったが、類も含め、4人で集まる最後の機会だと言っていたはずだったのに、類だけがまだ顔を見せていなかった。
 「ああ、そろそろ来るんじゃないか?あいつもフランス渡航で、いまこっちの仕事が押してるからな。むしろ、帰国するお前より、転勤する奴のほうがいまテンパってんじゃねぇのかな」
 「よく今日の飲み、来ることに応じたよな」
 「本当だぜ」
 総二郎も驚いているが、実際誘ったあきらの方が驚いていた。
 元々類は付き合いがいい方ではない。
 さすがに司のように何年も不義理をするということはなかったが、元々社交的な総二郎やあきらとは異なるのだ。
 むしろ案外そういう部分ではドライというか現金というか、つくしを引っ張り出してきた方が早い。 
 とはいえ、職業柄そのつくしを引っ張り出してくるのが容易ではなかったから、どっちもどっちと言えたかもしれなかったが。
 黙ってグラスを傾けている司を見て、互いに目配せしあい、結局総二郎が口火を切った。
 「そういえば、司、牧野、警視庁に戻ったんだってな」
 さりげなくあきらが周囲の酒の瓶やグラスを遠ざけるのは、もはや習性のようなもの。
 しかし、さすがに、それくらいのことでいい大人になった司が暴れだすこともない。
 …いや、大人になったからなのか?
 澱んで生気のなかった目が瞬いて、総二郎とあきらに視線を流し、司はグッと手の中のグラスの中身を喉に流し込んだ。
 「ああ、3ヶ月の約束だったからな」
 「…お前のことだから、そんなんブッちぎって、総監あたりにねじ込むもんだと思ってたぜ」
 「何のために?」
 「何のためって…」 
 総二郎もあきらも、つくしが警視庁に戻ったことは他の友人たちから聞いていた。
 だが、それが司とつくし、二人にとってどういう意味があることなのかまでは聞いていない。
 だが、なんとなく、不穏な空気は感じ取っていた。
 そして、今日久方ぶりに顔を合わせた司の顔に確信する。
 …元に戻ってやがる。
 いや、それ以上だ。
 総二郎は一ヶ月前に、司がつくしを連れ歩いていたところを見かけていた。
 その時には総二郎も仕事の途中で、優紀を連れていた為あえて二人に声をかけなかったが、優紀がつくしの顔を幸せそうだと評した以上に、司の顔にそれを見ていた。
 満ち足りて安らいだ穏やかな顔…。
 そんな司の顔を、幼馴染とは言え総二郎もあきらもほとんど見たことがなかった。
 ホンの一時…まさに司がつくしに出会った高校時代、そしてここ三ヶ月の間のことだけで、常に司には飢餓も顕な危うさがあった。
 人が望んでも持ち得ないさまざまなものを手に持ち、望むもので手に入らないものなど何一つないはずなのに、いつも顔は飢えて虚ろに陰っていた。
 …もしかして、牧野と?
 「なあ、司…もしかして」
 意を決してあきらが確認しようと、口を開く。
 「…悪い、遅れた」





 「…ふぅ」
 いかにも疲れた体で息を吐いた類が、手に持ったジャケットの上着を投げ出し、ソファの背もたれに身を投げ出す。
 「お疲れ。ほれ」
 渡されたグリーン・フィールズ(※抹茶ミルクっぽいカクテル)を嬉しそうに目を細めてゴクゴクと飲み干す。
 それを嫌そうに見やった総二郎が、
 「…ガブ飲みすんなよ」
 「いいじゃん、俺、これでフランス渡航の日までオフだし」
 「マジかよ?」
 「そのために頑張ったんだもん。海外渡航前日、当日までバタバタやるなんて、司じゃあるまいし、俺はごめんだよ」
 揶揄された司がフンと馬鹿にしたように鼻を鳴らす。
 元々つくしのことに関しては類に対しバリバリの対抗心を燃やしてた彼だったが、それ以外のことでは類に何を言われたとしてもそれほどカンをたてる性分ではなかった。
 というか、他の人間ならばいざ知らず、友人同士の戯言には冷ややかに返すくらいのことで、元々それほど熱いタイプではなかったのだ。
 ただ、つくしだけ。
 彼の情熱も、素直な感情の発露も、優しさも、すべてつくしだけ。
 彼女の存在だけが司を変えていたのだ。
 「お前も、週明けにフランスなんだろ?」
 「司も週明けに帰るんだって?すごい偶然だね。まあ、日本とNYより、パリとNYとの方が時間的にも距離的にも近いか」
 近いとは言え、フライト時間が15時間が7時間になる程度のことだが、たとえそれが1時間に短縮されようと、学生時代とは異なり世界中を飛び回って忙しい彼らが会うことなどそうそうないだろう。
 「まあ、元々大学卒業してすぐにフランス転勤は打診されてたしね」
 「よくも日本に居続けたものだな」
 あきらも一度はイギリスに赴任していた。 
 もちろん、類が日本に居続けたのには本人の強い意思が関与している。
 おそらくそうそう容易いことではなかっただろう。
 周囲からの圧力もそうだし、本人の地固めにもよろしくない選択だったのは間違いない。
 だが…。
 「いたい理由があったからね」
 「…類」
 「おい、類」
 司と類が揃う以上、ある程度の覚悟はあったが、なにも集まってそうそう不穏な空気に持ち込むこともあるまいと、総二郎とあきらがそれぞれに仲裁に入るべく腰を浮かすが、当の本人たちはどこ吹く風でそんな二人の気遣いを完全無視で睨み合う。
 いや、睨んでいるのは司だけだ。
 相変わらず類の目はどこまでも透明で、まるでそれが司など意にも介していないのだと言っているように司には思えて、妙な劣等感を抱いて苛立つ。
 …劣等感?
 こいつに俺が?
 類に大してだけは湧き上がる不可解な対抗意識と馴染まぬ劣等感などという感情に司自身が不審を感じて顔を顰めた。
 「フランスに行くなら、牧野にも一緒に来てもらいたかったからさ」





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