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「アネモネ…全171話完+α」
第四章 Glass Heart

アネモネ163

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 警視庁での報告は簡単に済ませ、今日は久しぶりの登庁ということで顔出しだけの半休。
 ホクホク顔の警視総監のタヌキ顔にため息をつく。
 司を誘拐させてしまったことは国家威信的にはマイナスだったが、あれほど警察の介入をいとっていた司が、つくしを受け入れ、あまつさえ気に入って連れ歩いていたことが計算高い総監にとっていずれ某かの見返りになることは想像に固くない。
 …なんか、やる気なくなっちゃうな。
 世の中が正義だけでできているわけではないのは、大人になればつくしにだってもちろんわかってはいた。
 ポツリと頬に落ちた冷たい感触に、空模様がいつの間にか厚く黒い雲に覆われているのに気がついた。
 「…青空だったのに」
 成田のホテルで見上げた空。
 まだ、思い出にするには早すぎて、朝方まで貪られたカラダの奥深くズクリと疼いて、胸が軋んだ。
 欲しがられて、欲しがって。
 干涸らびてしまうのではないかと思うほどに、互いの体液を出し切り混じりあった。
 けれど熱いのはカラダだけ。
 混ざり合うのは互いの体液と誤解と勘違いだけで、そこには何の実も生みもしない交わり。
 …何思い出してるのよ。まだ、別れたばかりなのに、今からこんなことでどうするのよ。
 喉に熱い塊がこみ上げてゴクリと唾を飲み込み、滲んでしまいそうな涙を瞬きで押さえ込む。
 何度こうしただろう。
 もう未練なんてないと踏み出した爽やかな朝はなんだったのか。
 「どうしよう、傘買おうかな」
 「…牧野!」
 ひとりごちて、踏み出しかけた足を止め、声の方向を振り返る。
 変わらぬ優しい美貌の王子様・花沢類が、思いっきり路駐禁止のスペースに高級車を停め、片手を小さく振って彼女に向かいニッコリと微笑んだ。





 「もう信じられない。どこの世間に警視庁の前で思いっきり、路駐禁止場所に車停めてる人がいるっ!?」
 「別に怒られなかったよ?」
 飄々として言うが、普段そんな人間がそうそういないために、わざわざ目と鼻の先で取締をやる人間がいないだけ。
 当然気がつかれれば、それそこに忠告は受けるのだろうが、運が良かっただけのこと。
 …もしかしたら、この食わせ物の笑顔で、煙に巻いて無意識に婦警をたらしこんだりするのかもしれないけどね。
 そんな懸念も蘇る。
 総二郎やあきらほどの確信犯ではなかったけれど、大人になった類はそんな彼らよりさらにタチが悪くなったと思うのも穿ち過ぎではない気がする。
 「でも、どうしたの?」
 「ん…、雨だったし、そろそろ3ヶ月だなあ、って思って」
 「そろそろ3ヶ月って…」
 そんなアバウトな予測でこうもうドンピシャのタイミングで現れるはずがない。
 おそらく、以前言っていた、それなりのツテを利用したのだろう。
 総監のつくしを下にも置かない態度を思い出し、それは司との縁繋ぎに一役買った彼女への評価だけでなく、もしかしたら『花沢』との縁故も慮ってのおもねりだったのではと思い立つ。
 …ホント、大人って。





 促され、腰を下ろした数ヶ月ぶりの類の車の助手席。
 通りすがる女性たちの視線が痛い。
 それは司の時も同じだったが、となりに乗る人が違うとこんなにも気持ちが違うものなのだろうか。
 司の隣に乗った時は口喧嘩ばかりで、それでもどこかウキウキと気分が浮き立って、落ち着かなくってドキドキした。
 けれど、類の隣はこんなにも安心する。
 傷つけられることのない安心。
 わかってもらえる安らぎと。
 …あたしの魂の一部の人。
 「で?NYについていかないの?」
 「……」
 いつもながらの不意打ち。
 けれど、きっと尋ねられるとだろうとわかっていた。
 揶揄るようではなかった。
 ただ事実を尋ねるだけ、透明な眼差しは何もかもを見透かしているようで。
 「ついて行くはずないじゃん」
 「……」
 「ついて行けるはずなんてない。もう子供じゃないもん。あいつのあたしへの執着が、恋でもなく愛でもないのをわかっていて、ついていけるほどあたし、強くないよ。もう誰にも守ってもらわなくても大丈夫なんて言えない。愛してるって抱きしめてくれて、ずっと一緒にいたいって言ってくれる人とじゃなきゃ、一緒になんて頑張れないよ」
 手の中の大切なものは簡単にすり抜けてゆくものだから。
 たかが司の気紛れを縁に戦うことなんてできなかった。
 たった短期間の関わりでさえも、こんなに胸が痛いのに、これ以上傍にいたらもっともっと弱い女に成り下がっていただろう。
 …辛いのは今だけだ。
 幸せな恋の結末をもう迎えたのだから。
 ずっと胸の奥に燻り続けた中途半端に途切れていた恋。
 「…恋の埋葬は終わった?」
 恋の埋葬。
 まさにそのとおりで。
 「しばらくは…それでも泣いちゃうだろうけど」





 必死で前を向くつくしの目を、ハンドルを片手に前を向いたままの類の手が覆って、優しく拭う。
 その仕草で、つくしは自分が涙していたのを知った。
 子供のように泣いてしまうなんて、ここ数年なかったことだ。
それなのに、司と再会して何度こうして泣いただろうか。
 思い起こしてみると、昔からつくしはあまり泣かない子供だった。
 どんなに辛くても、悲しくても、前を向いてただ必死に歩き続けた。
 それなのに、彼に出逢って、彼と関わると、泣きたいことがたくさん訪れた。
 司は彼女に恋を教え、人を愛すること教え、そして我慢できないほどの哀しみを与えた。
 彼に逢いたい。
 彼といたい。
 彼が好きだと、思うたびに。
 ハラハラと溢れる涙が、この胸の痛みを洗い流してくれることを祈って。
 ひんやりと冷たい手のひらの感触が、ここ最近彼女の傍にあった熱い手の持ち主ではないことをよけいに感じさせる。
 「…大丈夫だよ」
 ゆったりと柔らかな声によけいに泣かされて。
 「泣きたいだけ、泣きな。あんたは我慢するから、辛いのがなくならないんだよ。いつも必要以上に頑張りすぎて、疲れちゃうんだ」
 抱き寄せられた逞しい肩にすがって、つくしは一生分の涙なんじゃないかというほど、泣いて泣いて…、脳裏に広がる司の姿をそれでも大切に抱き続けた。





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