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「アネモネ…全171話完+α」
第四章 Glass Heart

アネモネ162

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 つくしは呆気に取られて二の句が告げなかった。
 …いま、何言ったこいつ?
 正直、脳が思考を停止してしまって、理解できていないというのが一番正しい。
 「それでいいんだろ?つまんねーブラフかましてんじゃねぇよ、朝の忙しい時によ」
 肩を竦めてさっさと居間に戻っていこうとする司に、つくしが焦って声をかける。
 「ちょっと待ちなさいよ!」
 「あ?」
 振り返る司は、さっきまでの怒気はどうしたかというほどに、すでに平静を取り戻していて。
 「結婚って、誰と誰が?」
 「誰と誰ってお前と俺だろ?」
 どうやら聞き違いではないらしい。
 だが、どこからそんな話が出てきたのか、つくしにはわけがわからなかった。
 「そ、そんなのできるわけないでしょ?」
 「なんでだよ」
 「なんでって…」
 もちろん、いろいろ理由はある。
 だが、そもそも司とつくしは『結婚』なんて言葉が出てくる間柄ではないし、第一、司には列記とした親も認めた…親どころか会社ぐるみで世間も認めた婚約者がいるのだ。
 「あんたには、婚約者がいるでしょ?それなのに、あたしと結婚とか、意味がわからないんですけど?」
 「だから、アリッサとは別れてやる、破談にするって言ってんだよ」
 「……」
 「ま、うちのババアやら社のやつらもうるせぇだろうし、あっちもそうすんなりとは応諾しねぇだろうから、しばらくはバタバタするだろうが、少しくらい待てるだろ?」





 「…望んでない」
 もう話は終わったつもりだった司は、つくしの言葉に首を傾げた。
 「あんたに婚約者と別れて欲しいとか、あたしと結婚して欲しいとか、全然望んでないから」
 「なんだと?」
 一度は収まっていた司の怒気が噴き出し、こめかみにミミズ腫れのような青筋が浮かび上がる。
 「いつあたしが、あんたに結婚してって、頼んだのよ?」 
 「意地張ってんじゃねぇよ!!どこの世間に、俺との結婚を拒む女がいるッ!?」
 「…自惚れないでよッ」
 自惚れても仕方がないのはつくしもわかっている。
 だが、その自惚れの中に自分を入れられるのは業腹だった。
 …こいつ、まだ、あたしが自分のステータスにひれ伏すような女だと思ってたってわけなのね。
 悔しいやら憤ろしいやら、哀しいやら…その中でもおそらく哀しみが一番多い。
 理解されていなかった哀しみ。
 けれど…。
 「…金や俺の地位、権力、そういったものに興味ない、っていうのは信じられねぇけど、信じてやるよ」
 憮然とした顔は、それでも口だけではないらしく、フてくされてへの字に曲がっていた。
 だが、それでいてどこか嬉しそうでもあり、複雑な色を帯びている。
 昔から、誰よりも金満主義者的な男でありながら、自分を一人の男として見て欲しがっていた男だったから。
 そして、そんな風に彼を見る人間が少ないのもわかっていた。 
 だからこの男は自分に執着するのだろうと思う。
 まるでこの男は子供と同じだった。
 無邪気で残酷で物知らずな子供。
 欲しいと思ったら、相手の気持ちも何も慮ることなく自分の思うままにしようとダダをこねる。
 「でも、お前、俺に惚れてるじゃねぇか」
 「……」
 「結局、なんだかんだ言って、お前は俺に未練タラタラなんだよ。未練があるくせに、とるにたらねぇ何の力もない庶民のくせにプライドが高い」
 そうかもしれないとは、つくしにも自覚がある。
 司に未練タラタラで、何の力もないくせにプライドが高い。
 「だから愛人ていう立場が嫌なんだ。それで、俺を突っぱねてやがる。俺を舐めんなよ?前にも言っただろ?」
 「「俺は欲しいものは必ず手に入れる」」
 司とつくしの声がハモる。
 自分の言葉に被せらた揶揄に司が不機嫌に鼻を鳴らす。
 「わかってんじゃねぇーか」 
 だが、つくしは可笑しかった。
 可笑しくて、虚ろで、あまりにバカバカしい。
 結婚してどうするというのだ?
 結婚してもらってどうする?
 愛してもくれない男にすがって、一人敵だらけの中、戦う勇気も気概もありはしない。
犬猫が好き。
遊び友達が好き。
幼い子供が何かに執着するような、一瞬の花火のような感情に付き合えるほど強くはなかった。
 何のために、そんな不毛を選ばないとならないというのだろう。

 愛は望んでも、頼んでも手に入るものではない。
 たとえ司に頼んだとしても、彼だとて望んでつくしを愛することなどできないのだ。
 気がつけば愛しく思っている。
なにごとにも代え難く、ただ側にいてほしい。
 それが恋なのだとつくしは知っていた。
 かつて彼女が司を恋したように。
 今の彼を愛してしまったように。
 だから、キッパリと言い切る。
 「望みを言うわ」
 「……」 
 司とつくしの視線が絡む。
 「これっきりにしてちょうだい」
 「はあ?」
 「もう、あんたとは二度と会わない。道明寺司としての約束を守ってちょうだい。じゃあ」
 踵を返すつくしの後ろ姿を呆然と見送って、気がつけば、司は叫んでいた。
 「類のもとへ行くつもりかッ!?」
 答えなくても良かっただろう。
 実際、何を言ったとしても司が納得するように説明できるとも思えない。
 だから、一言だけ。
 「…遠くからあんたの幸せを祈ってる」





 気がつけば、司は一人、広いスウィートルームに佇んでた。 
 最後まで司の申し出を一顧だにしなかった女の言葉が脳裏に谺する。 
 『…遠くからあんたの幸せを祈ってる』
 女の欺瞞が、偽善ぶりが可笑しい。
 何が遠くからだ。
 他人の幸せなんぞ祈ってもいったい何になるというのだ。
 そう嘲りがこみ上げるのに、指の先が震えて笑い声が上手く出せなかった。
 ふと顔を上げると、あれほど鮮やかに見えていた窓の外の青空が灰色に変わっていた。
 光に満ち溢れていた朝の光景。
 優しい空気。
 それらが一瞬にして色を失い、冷たい静けさに取って変わる。
 …馬鹿な。
 たった一人のちっぽけな女がいなくなっただけのことだ。
 そう思うのに。
 頬を熱い何かが伝い落ちて、ポツリポツリと肉厚の絨毯に見えない染みを作った。
 「…なんだこりゃ」
 今度こそ笑えた。
 それが、涙だと、絶望だと、司はけっして自分に認めるわけにはいかなかった。





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うおーーーーーーー

こんなに長く感じる三時間はない…
楽しみ過ぎるのと、終わってしまう淋しさと…

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