FC2ブログ

「アネモネ…全171話完+α」
第四章 Glass Heart

アネモネ154

 ←昏い夜を抜けて378 →昏い夜を抜けて379
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 電話する司に肩に顎を乗せられ、ホールド状態のつくしがそろそろ怠くなってきた頃、
 「…ああ、わかった。仕方ねぇな」
やっと通話を終えた司に、乗っていた顎を外され、ホッと力を抜く。
 「何?西田さんから?」
 「ああ、NYの方でトラぶったらしくて、明後日から1週間ほどあっちに戻ることになった」
 「……明後日」
 ぼんやりと呟く。
 「て、ことでお前も明後日からNY」
 「……、そのまま戻ればいいのに」
 体調不良を理由に、日本滞在を一ヶ月伸ばしたのではなかっただろうか。
 「いいぜ?お前も移住すっか?」
 「……」
 つくしが答えないのはいつものことで、司にしても別に今すぐ彼女を説き伏せるつもりはないので、あっさりと流す。
 司の中で、つくしを『うん』と言わせる秘策はもう固まっていた。
 …承知しないはずがねぇ。
 ここのところ彼女は、司への気持ちを隠さなくなっていた。
 口では邪険にしていても、つくしが自分を好いてることなんてとっくにわかってる。
 …意地張りやがって。
 彼女の確かな愛情を感じて、司は慢心していた。
 その余裕が、彼女への以前にはなかった思いやりじみた行動や態度だったし、自分ではそうと気がついていなかったが顕著に周囲の人間にもわかるほど表情や雰囲気にも出ていたのだ。
 心が満たされること。
 誰かといることを喜びに感じること。
 愛すること。
そして愛されること。
 それらすべてに、まだ司は手探りだった。
 「まあ、あっちはババァが出張ってるしな。下手に戻ると、フルで使われるから、しばらくは骨休めつーことで、日本にいる方がいいんだよ」
 …それでいいのか道明寺財閥。
 そうは言いつつ、そんな理由も半分は本当で半分は嘘なのだろう。
 基本見ざる聞かざるを貫いているつくしだったが、これだけ司に密着して過ごしていると、道明寺財閥内部のこともかなり深く見えてくるものがある。
 一見、道明寺楓会長以下一丸となって前進し続けているかに見える道明寺HDだったが、司を筆頭とする新勢力と、楓に従う旧勢力との間で水面下の戦いがあるのだ。
 そうした諸々の要素を鑑みて、あえて重傷ではあっても、日本に引きこもっていなければならないほどの重篤な状態ではない司が、あえて留まる理由があるのだろうと察する。
 だがそれはあくまでも道明寺財閥内の事情であって、外部の人間であるつくしにはなんの関わりもない。
 だからそれ以上は追求しようとはせず、いいかげん司の拘束から逃れようとつくしは身を捩った。 
 「あんたはともかく、あたしももうお風呂入ってさっさと寝ちゃいたいから、手、離してよ」 
 「…いいぜ、俺も入るし、そんなに疲れてるなら俺が抱いて連れてってやろうか?」
 「は?」 
 子供じゃあるまいし、なんでそんなことをされなきゃならないのかと、うんざり聞き返してやる。
 だが、ニヤニヤ笑う司にはそんなイヤミなど通じはしないし、ようはここ二日ほどのパターン…風呂に押し入ろうとして鍵をかけられるのを防ぐためだというのは見え透いていた。
 第一、疲れている一番の理由は当の司のせい。
 …普通、肋骨折ってて、普段よりHが激しくなるってありなわけ?
 「バーカ、お前は生物の本能つーもんを知らないのか」
 「はあ?なによ、それ」
 口に出していたつもりはなかったが、どうやらいつの癖が出ていたらしい。
 グイッと腹を両手で抱き寄せられ、開けていた空間を再びぴったりとくっつけ埋められてしまう。
 「男は死ぬ間際までヤることできんだよ。むしろ、そういう時ほど性欲高まるつーの?まあ、生物の子孫繁栄の法則なんか俺には関係ねぇけど、ようはアドレナリンだかドーパミンだか、そういうのの効果で痛みなんて感じねぇんだよな」
 「……なるほど」
 そういう意味では確に、司にとって痛みなど障害になりそうもない。
 それに付き合わされるつくしの方が、いい迷惑な話だが。
 「それよりお前、昨日も魘されてたぞ」
 「……」
 自覚があったけれど、一緒に寝ている司にもやはり気がつかれてたのかと溜息をつく。
 そんな時、わざわざ声をかけられたりはしなかったが、体に回った腕や手が、いっそう強く抱き込んでくれて安心をくれた。
 …寝たふりしてくれてたのか。
 野獣のくせに、そういう時司の気遣いは柔らかく優しい。
 「…奴らに誘拐された時のことを思い出すのか?」
 「まあ…それはね」
 レイプは未遂だったし、酷い暴行をされたわけではもなかったが、それでも激しいセクハラを受け、さんざん高校生時代リンチもどきの経験をさせられたつくしにとっても衝撃的な事件だったのだ。
 …情けない。
 そんな気持ちが、つくしの気持ちを重くさせる。
 俯くつくしの頭を顎の下に入れこみヨシヨシと撫でる男の慰めるような仕草が、むしろ逆効果に彼女を泣きたくさせた。
 「PTSD(※心的外傷語ストレス障害)は誰にでもなり得る障害なんだ。屈強な男が成り得ることもあるし、むしろ心が弱い奴より強い人間にその傾向が多い」
 「…道明寺」
 「お前、意外に完璧主義者だからな」
 「そんなことはないと思うけど」
 「そうなんだよ、まだ短い付き合いの俺だってそう思うんだ、お前にだって自覚あんだろ?」
 どうだろうか。
 気がつけば頼りない家族を抱えて、自分が強くなければ、全て上手くこなさなくては…と思っていた気がする。
 司とのことがあり、彼と再会して、その葛藤の中でも常に自分を律していたいと、そうでなければ崩れてしまいそうな恐怖と、身も世もなく泣きすがって司に依存してしまいそうだと、いつも気を張っていた彼女の本質の一端を司に悟られていたことに、つくしは驚いていた。
 …そういえば、こいつって意外というか、意外じゃないというか、そういうところは鋭かったものね。
 人や物事の本質を本能的にとらえて、時に彼女を感心させることが昔からよくあったと思い起こす。
 「一度医者に診せてみろよ?俺が世界一の名医を呼んでやる」
 安心しろと笑う彼の言葉は冗談なんかじゃないのだろう。
 けれど、それに甘えるつもりはなかったし、そんな機会はもうないのだ。
 「…うん、ありがとう」
 彼女らしくない儚げな笑みと従順さが、時折司に形のない不安を感じさせる。
 …バカバカしい。
 「俺が守ってやるし?」
 「…あんたが?」
 それじゃあ、本末転倒だろうとつくしがクスクスと笑った。
 「いくら鍛えたって所詮は女は女なんだよ。…まあ、例の時は、お前には世話になったしお前のおかげで生きていられるつーのは、認めるけどよ」
 司が事件で彼女が果たした役割を評価するような言葉を口にするのは、初めてでつくしが驚いて司の顔をジッと仰ぎ見る。
 それが照れくさいのか、視線を反らした美しい横顔が少し紅潮していた。
 「お前が発信機飲み込むような機転を効かせなかったら、俺たちは早期に発見されなかっただろうし、そもそもお前、俺がリンチされて殺されそうだった時、自分への危険も顧みずに俺を庇っただろ?」
 「……」
 てっきりもう意識はないのではないかと思っていた。
 痛い、と零しながら力を込める司の胸に素直に身を寄せ目を瞑る。
 「他にもいろいろと。監視の奴らを怪我人の俺がボコれたのも、お前の捨て身の演技のおかげだし、正直、大人しくヤられてろと命じた俺をお前が信じると思わなかったぜ」
 信じていたわけではなかったと思う。
 ただ覚悟していただけ。
 たとえ強姦されるハメになっても、少しでも司と自分の命が助かるチャンスがあるのなら。
 それで自分がどんなにボロボロになっても、彼を助けられるなら、と。
 我ながら笑ってしまう自己犠牲精神であり欺瞞だったが、けれどそのためにこそこの12年間があったのだ。
 そして、今この時の満足がある。
 「ありがとな」





 …ありがとう。
 そう言いたいのは、自分の方だ。
 …忘れられない恋をありがとう。
 …命懸けで誰かを愛するという気持ちをありがとう。
 …最後にもう一度だけ会いたい、それだけだったのに、こうした甘く切ない時間をありがとう、と。
 今つくしは、自分の恋の結末の幸福さに酔いしれ、胸の奥底で燻り続ける痛みさえも愛しいと、大切に握り締めた。





◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ





↓ランキングの協力もよろしくです♪
にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ 💛 
いつも応援ありがとうございます^^!

web拍手 by FC2






関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【昏い夜を抜けて378】へ
  • 【昏い夜を抜けて379】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

アネモネ

アネモネ、終わりが見えてきましたね。
残りの話数を考えると、司が記憶を取り戻した後はサラッとfinかなぁ?と不安・・・
でも、番外編があるんですね。
番外編でその後の二人が読めるのが楽しみです。
こ茶子さんの書くお話は、割りとシリアスから抜けるとサクッと終了で、その後の二人の幸せが気になる場合が多いんですが、今回は読めるんだぁ~☆と嬉しいです。 ありがとうございます!

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【昏い夜を抜けて378】へ
  • 【昏い夜を抜けて379】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク