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「アネモネ…全171話完+α」
第四章 Glass Heart

アネモネ153

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 「…ふぅ~」
 大きく息を吐いて、部屋に戻った司が脱いだジャケットを無造作にソファへと放り投げる。
 後ろから入ったつくしが、それを拾ってハンガーにかけるのはいつもの光景だ。
 ドカッとソファへと腰掛け、髪をかきあげる司の顔色はわずかに悪い。
 額に滲んだ汗は、初夏の陽気のせいもあるが、おそらくそれだけではないのだろう。
 「シャワー浴びてきちゃったら?今日は、けっこう暑かったから汗かいてるでしょ?」
 「…かったりぃ。帰ってきたばかりなんだから少しくらい休ませろ」
 部屋隅のミニバーからミネラルウォーターを取り出してきて、氷を入れたグラスに注いで、そのうちの一つを司へと差し出す。
 「飲ませて?」
 甘えてくるのはいつものことだが、当然却下。
 バシッとクルクルの頭を叩かれて、「痛ぇ」とボヤく司の機嫌はそれでも悪くならずに、自分の隣をポンポンと叩く。
 だが、つくしはその誘いには乗らず、あえて人一人分のスペースを開けて座ったのに、腰を下ろした途端に、横倒しに寝転がってきた司に頭を膝の上に乗せられてしまう。
 「…ハァ、あんたねぇ」
 「疲れてんだから、癒せよ」
 「あんたと一緒に行動してるあたしだって、疲れてるとか思わないわけ?」
 「お前は元々肉体労働者だろ?」
 「……だから?」
 「ホワイトカラーの俺様とは、元々使うところが違うんだから、それくらいで文句言うんじゃねぇよ」
 …どういう理屈よ。
 行儀悪く寝転がったまま飲み干したグラスを渡されて、溜息をついて受け取った指先をスルリと撫でられ、さらに深く溜息が出た。
 疲れたのなんなの言っているが、むしろ肉体労働職のつくしよりもよほど司の方が体力がある。
 昔からバカみたいに体力のある男だったけれど、超人的な回復力も健在で、肋骨の骨折2週間目にして、すでに平常通りの生活をこなしていた。
 …それでも、やっぱり疲れやすくはあるんだろうな。
 それならそれで、普段より緩いスケジュールなのだから休養を心がければいいというのに、相変わらずの夜の生活だ。 
 「…なに、ジト目で見てんだよ」
 「別に…」
 「感じ悪い奴だな。なんだよ、もしかして、今日の夜のことを心配してんのか?」
 そのとおりだったが、間違いなく司が示唆しているのは真逆のことなのはつくしも承知している。
 無意識のうちに司の髪を撫でていたつくしの手をとって、手の甲に口づけを落として指先を口に含む動作に、昨日の情事が脳裏に蘇り焦って、つくしは慌てて自分の手を取り返すのを可笑しいと司が笑う。
 「くくく、感じちまった?」
 「感じてなんかいないわよ!…て、いうか、あたし、さっき頼まれてゴキブリの死骸をつまんだまま、手、洗ってないから」
 「……」
 「……」
 もちろん、冗談だ。
 お坊ちゃまに『ゴキブリ』は通じないかと思ったものの、どうやらわかったらしく、ギョッと黙り込まれて、内心、大笑いしたいのを必死で堪えた。
 「気にしねぇし」
 「ええ?本当?」
 「嘘なんだろ?」
 それでもおそるおそる伺ってくる俺様が可愛くて、噴き出してしまったのを見咎め、司が憮然とする。
 「…ちぇ、手にキスくらいでつまんねぇ嘘つくなよな」
 「あんたが、一々エロいマネするからでしょ?スケベったらしい顔して、ホント、西門さんといい勝負なんだから」
 「総二郎?アホ言え、あいつは見境なくサカってんだけじゃんか。俺の場合は…お前限定で誘惑してやってんだから、感謝しろよ?」
 「……」
 「それに、あいつ今、松岡…お前のダチだっけ?その女に入れ込んでんじゃん」
 相変わらずの俺様発言はともかくとして、司の口から意外な名前が出てきて驚かされる。

 「…優紀?よくあんたが他人の色恋沙汰知ってるわね」
 「まあ、多少はな」
 親友ではあっても、つくしの中ではF3はともかく、ここ数年の司は他の三人とも距離をとっているような印象があったのだ。
 「結婚の話も出てるんだって?」
 「…そうなんだ」
 ある程度は察していたものの、ここのところ司に貼り付く生活や自分のことで精一杯で、親友の一大事に相談に乗ってあげられていなかったことに気がついて気持ちが塞いだ。
 …優紀、大変なんだろうな。
 「わきまえた奴だったが、今になって何をトチ狂ってるんだか」
 司の呆れたような物言いに、顔をあげれば声音と同じような表情に出くわし、つくしはホロ苦く苦笑した。
 「それだけ、優紀との縁を大事にしたかったんじゃないの?」
 「奴お得意の一期一会ってか?」
 「それは…」
 よく総二郎が好んで使っていた言葉だ。
 その意味はおそらく過去の彼と今の彼とでは違うだろうが、それをつくしが言い募る愚を悟り口篭る。
 「縁ね…。奴の実家がそれを納得すればいいが、下手すりゃ、総二郎の家元就任に異を唱える反対派の猛反撃喰らってお家騒動だな」
 「…お家騒動?」
 「ああ、奴は現家元の直系ではあるが、なんだかんだ内外に敵もいないわけじゃない。今までは、そうした連中の娘を娶って、同盟路線で行く姿勢を示していたから、一枚岩みたいに見えてたが、内実は…ってな」
 「なるほど」
 そこらへんの事情は、司や類、あきらも同じなのだろうと察する。
 まだ高校生の司に滋との縁談が上ったのも、個人の事情ではなく企業の利益のためで、政略結婚というものだった。
 「ま、そんな話は、ともかくとして、お前さ…」
 「ん?」
 司がいいかけたところで、どこからか、携帯電話の呼び出し音が響き、同時に胸ポケットを探るが、どうやら司の方だったらしい。
 ところが、当の携帯電話が入っている上着は先ほど脱ぎ捨て、つくしがハンガーにかけて吊るしてしまったので手元になかった。
 「…チッ、あっちか」
 呼び出し音を響かせている上着の方を伺いみるように司が身を起こしたのをチャンスに、膝枕から脱出すべく、つくしが腰を浮かせる。
 うっかりこのまま好きにさせておくと、いつものパターンでこのままソファに押し倒されることも珍しくないのだ。
 …冗談じゃないつーの。
 ただでさえ、今日は汗ばむほどの陽気で、自分でも汗臭いのに、いくら快適な空調で人心地ついたとはいえ、気になって仕方がない。
 さっさと携帯電話を司の上着の内ポケットから取り出し、抱き込まれない範囲で差し出す。
 が…。
 「ちょっ!」
 抗議するまもなく携帯電話を持った手首を掴まれ、司に乗り上げる格好で膝の上へと抱き上げられる。
 「む、胸…痛てぇ」
 「当たり前でしょ!バカ…じゃ…」
 怒鳴りつけようとした口を片手で塞いで、器用に彼女を抱き直した司が、携帯電話に出る。
 仕方なく口を噤むが、いつの間にか毎度のごとくいいように扱われ、ムッと唇を尖らせ溜息を落とす。
 そんな彼女を横目に、してやったりと笑う司は上機嫌だった。





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