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「アネモネ…全171話完+α」
第三章 Innocent②

アネモネ144

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 どれくらいの時間が経ったのだろうか。
 縁の下で昼夜の区別はつけ難いが、遠く透かし見る闇の向こうはさらに真っ暗だ。
 …まだ、夜だよね。
 いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
 体に回った逞しい腕の温もりが、つくしに寒さを感じさせない。
 だが…。
 バタバタババタッ!!!
 “““ガヤガヤガヤ…”””
 ガチャ、バンッ!!
 “…っか!?いない”
 “なんてこと……。まだ遠くへは…………”
 頭上を駆け抜ける足音や、外の方から聞こえるざわめき。
 怒声のような声や、車の音。
 さまざまな音が、司とつくしの不在が発覚したことを教えていた。
 バキッ!!
 “……ひっ!”
 “だから、女は厄介事の元だと忠告してんだ。貴様ら、連中が見つからなかったら死をもって償うことになると覚悟しておけッ”
 何を言っているかはわからなかったが、突然頭上で響いた殴打音と、物と物がぶつかる音、怒声に、ビクリとつくしが体を震わせ、司の胸から顔を上げる。
 だが、その頭をポンポンと叩いた手が再び大きくて広い胸につくしの顔を押し付け、何度も何度も背を撫でてくれている間に、どうやら再び眠ってしまっていたらしい。
 …温かい。
 生命の温もり。
 司がつくしを守ってくれる大きな手。
 だが、そう時間はたっていなかっただろう。
 次につくしが目を覚ましたとき、耳元で聞こえる風の音のような忙しない喘鳴と短く忙しない息遣い、上下する胸の動きに気がついた。
 「…道明寺?」
 怪訝に抱き込まれた胸元から、顔を上げれば、元々青かった顔色を土気色にして、熱い息を吐き、半ば意識を失った司を発見する。
 「っ!?」
 声をあげようとして、震える手に唇を弱々しく抑えられたことから意識は辛うじてあることがわかった。
 怖々と額に手を当てると、案の定、その熱さは尋常でない。
 激しい息遣いとは裏腹に、鼓動の音が弱い気がして、つくしは自分たちを探しているだろう凶行の主たちの動向よりも、目の前の司の様子の方がよほど怖かった。
 さすがに口を利くほどには、気力も残っていないらしい。
 唇を噛み締め、ジッと司を見つめるつくしの顔を見ようとか、何度か瞼が震えたた一向に目を開く気配がなかった。
 …このままじゃ、絶対にマズい。
 たぶん、もうすぐ夜明けが来る。
 遠く覗く地面が明るくなりだしているのに、つくしの焦燥と危機感が高まる。
 …今夜じゃ、道明寺が持たないかもしれない。
 ただでさえ無理に無理を重ね、こんな劣悪な環境でいったい何日耐えることができるというのだろう。
 司の読みだと勝負は今日、明日。
 つくしの経験からの判断から言っても、数日中には山狩りが実施されるだろう予想があっての行動ではあったのだ。
 …たとえ近くに人里がなかったとしても。
 屋外にでれば、つくしの体内の発信機が機能してくれる可能性が高く、また昨日聞いた町内放送に続く、夕方の防災行政無線チャイムの聞こえ方からして、そんなに市街地から離れていないこと物語っている。
 …見た目ほど山奥ってわけじゃない。
 つくしにはまだ体力もある。
 一刻も早く人をここに呼び込み、司を然るべき病院に連れてゆかなければ、たとえテロリストに捕まらなくても生命に関わる可能性が高かった。
 …あたしが守らなきゃ。
 ずっとそう思ってきた。
 だというのに実際は司に守られるばかりで、彼女自身が役に立っていたとは言い難い。
 けれど、そんなことではなかった。
 もう守る、守られるなどどうでもいい。
 ただこの男に生きていて欲しい。
 無事にここから戻って欲しい、生の世界へと。
 「…あたしがあんたを死なせない」
 あんたはあたしを守ってくれるって言った。
 もしもの時には殺してくれるとまで言ってくれた男の真心に涙が溢れそうになって、つくしはギュッと目を瞑ってその情動を堪える。
 …もういいよ。
 もうすべては報われたのだと思う。
 今度こそ、この男が生きていてくれさえいれば、他には何もいらないと心底願える。
 つくしが体を起こしても、もう司は反応しない。
 体に回った腕をそっとどかして、貫頭衣の上に纏っていたローブを苦労しなが脱いで、司の体の上に巻きつける。
 …見納めになるかもしれない。
 そんな気持ちに胸が張り裂けそうな痛みを感じていたが、つくしはその無謀な試みをやめようとは欠片とも思わなかった。
 そうでなければ…死ぬのは司なのだ。
 自分の死と司の死を天秤にかければ、考えるまでもなく自ずと答えが出る。
 …全然、生きることに執着がないこいつの為に死んでやるなんて腹立つけど。
 それでも、司が生きていることの方が、自分が生きられるかもしれないことよりもずっと彼女にとって重要なのだから仕方がないのだ。
 相変わらず白磁器のような美しい美貌に手を這わせ、そっと唇にキスを落とす。
 「待ってて。必ず誰か助けを呼んでくる」
 よしんば、連中が拳銃や猟銃のような飛び道具を持っていても、その銃声が捜査の手を引き入れることに成功する元になるかもしれない。
 何度となく触れ、梳いたクルクルの巻き毛を撫でていた手を胸元に引き寄せ、未練を振り切り前へと向き直る。
 もう後ろは見ない。
 見つかってしまうかもしれない危険も、 見つかればどんな目に合わされてしまうのかも、死の危険も、もう何もかもつくしの心を押しとどめるものは何もなかった。




 …バイ、道明寺。
 つくしの声が聞こえた気がして、司は重い瞼を無理矢理に押し開く。
 何度か痙攣を繰り返すように震えただけで上手く開くことができなかったが、なんとか意思の力で目を開けることに成功する。
 …まだ、夜なのか。
 …つくし、電気つけろよ。
 声に出したつもりで、声に出ておらず、また、ふと記憶の混濁を自覚する。
 「…つ、くし?」
 ふと、聞こえた掠れた弱々しい声が自分の声であることに気がついて、ギョッと目を瞬く。
 そして難儀しながら周囲を見回すと、闇になれた目に、見慣れぬ景色が広がり、その異様な空間が潜り込んだ縁の下の土台や基礎であることに気がつき、ハッと意識を覚醒させる。
 「…つくし、どこだ」
 …あいつ、どこ行きやがった。
 それでも抱きしめていたつくしの温もりが腕の中にいないことに混乱する。
 さっきまで抱きしめて、彼の髪を優しく撫でている彼女の温もりを感じていたはずなのに。
 『待ってて。必ず誰か助けを呼んでくる』
 唐突に彼女の声が蘇り、ギョッと身を起こす。
 「…痛っ。あのバカ」
 胸に走った鋭い痛みに呻く。
 つくしには骨は折れていないと痩せ我慢を言っていたが、胸の奥をヒューヒューいう喘鳴にあるいは、折れた肋骨が肺に刺さった可能性を考える。
 …別にだからどうした。
 今はそんなことにかかずらわっている暇はない。
 一刻も早くつくしを探し出し、連れ戻さなくては。
 “女がいたぞッ!!!男も一緒かも知れない。捕えろッ。できなければ……”
 …殺せ。





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