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「アネモネ…全171話完+α」
第三章 Innocent②

アネモネ136

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 つくしの感情がさしあたり落ち着くと、司が尋ねる。
 「…ここどこ?」
 「たぶん、どこかの倉庫かなんか」
 「奴らのアジトか?」
 「…たぶん」
 実際のところ、ここにたどり着くまでつくしも目隠しと猿ぐつわをされ、ズタ袋のようなものに入れられてまるで荷物のように運ばれてきたのだ。
 おそらく車のトランクかトラックの荷台に積み込まれでもしたのだろう。
 あまりに手荒な扱いに、途中何度か意識を失ってしまっていた。
 そこには、予想以上に非人情的な扱いを受けたショックもあったかもしれない。
 いくら訓練を受けてきた女性だとは言え、そうした事態を想定したものではなかったのだ。
 ただ…どこかの無人島とかそういう場所ではない気がしていた。
 時折、浮かび上がる意識の底で、聞き慣れた雑多な人々のざわめきや、信号機の音、交通量の多い道路特有の物音を聞いたように思う。
 猿ぐつわをされた上に、司の命を盾にとって、さらに男たちはつくしに物音を立てるな命じていた。
 これが無人島や、人の少ない場所ならその必要もないはずだし、そこまで厳重に周囲の状況を隠すこともなかっただろう。
 「たぶん無人島じゃねぇな」
 つくしも思っていたことを言い当てられ驚く。
 「…この辺で人の住める島で未開発の島なんかそうそうねぇよ。逆に、どれくらいの期間潜伏することになるかもわからねぇのに、補給の面を考えないわけにもいかねぇ」
 「補給って」
 「飯や生活用品だって必要なんだよ。いくら聖戦士?だって人間なんだからな」
 それはそうだろう。
 そして、それには目立つことはできない。
 普段ならばともかく、道明寺財閥の次期総帥が誘拐されたとなれば、捜査の範囲は広範囲…大々的に行われる。
 少し先、沖縄にはアメリカ軍も駐留しているのだ。
 「案外、九州本土に戻ってきてるのかもな」
 「熊本ってこと?」
 「さあ、そこまではわからねぇけど。どちらにせよ、どうやって外部の人間にここの場所を知らせるかだ」 
 時間があるのか、ないのかさえわからない。
 「…ねえ」
 「あ?」
 「さっき、船で言ってた意味ってどういう意味?」
 ずっと気になっていたのだ。
 営利誘拐なら、いくらでも身代金を払えない道明寺財閥ではない。
 それに、安全だと通達がされたこの時期に何故、誘拐が起こった?
 E国(この連中がE国の連中だとして)はそれどころではない情勢のはずだった。
 「あんたは生きて帰れないかもしれない、って言ったわよね?あたしのことじゃなく」
 おそらく、連中は司だけを誘拐しようとしていたのではないだろうか。
 一時期、男たちの間に膨れ上がった彼女に対する殺意めいたものに、つくしも気がつかなかったわけでない。
 アラビア語はわからなかったけれど。
 投げやりだった司の目が、憤りに満ちて、逆らわないはずだったのにその真逆を行った。
 その理由は?
 おそらく、司がつくしの生命も守らせようとしたのだと思う。
 そして現在、司がつくしの人質で、またつくしも司の人質としてここに留め置かれているのに違いなかった。
 つくしが逆らえば司が殺され、司が逆らえばつくしが殺される。
 不思議にそれが理解できた。
 「どういうことなの?言いなさいよ」
 「……たぶん、これは金銭が目的の誘拐じゃない。政治的誘拐だ」
 「政治的?」
 「財閥がアメリカ政府にかなり多額の援助を行っていることは広く知られている」
 「それって…」 
 「最近では対テロ対策とかなんとかにも支援を行ってるが、ようはアメリカ政府内にそれなりの影響力を持っているということだ」
 むしろ道明寺財閥の力は日本でこそ発揮されていて、つくしもそれは十二分に知っていた。
 そしておそらく、アメリカにおいても大なり小なり似たようなことなのだと理解する。
 「最後のあがきってやつだな。たぶん、今捕まっている奴らの有力なリーダーを、俺と引き換えに釈放でもさせるつもりなんだろ」
 「……そうなんだ」
 「だが、さすがにそれは無理だな」
 司の淡々とした言葉に、つくしが視線をジッと向ける。
 話の内容次第では自分の命に関わるかもしれないというのに、司からはその危機感が感じられなかった。
 「本当はアメリカ政府高官でも捕まえたかったんだろうが、無理だったんだろ。ちょうど、俺が飛んで火にいる夏の虫?まさか、イケイケ連中がここまで逃げ延びているとは、アメリカの連中も日本の連中も察知してなかったってことだ。情けねぇな」
 ため息をつくが、司にも責任の一端はある。
 「あんたがこの時期に、無理をして日本になんか来るからでしょ?」
 「別にどうだって良かったからな」
 「……」
 「いざとなりゃ、財閥も俺より公共の利益ってやつを取らざる得ないが、別にそれでどうってこともねぇだろ」
 「ねぇだろ…って」
 「俺がいなくなっても、それはそれで別に財閥自体がどうかなるわけでもない」
 「……」
 「俺も歯車の一つってやつだ。前にもそう言っただろ?」
 あの道明寺司が。
 つくしは信じられなかった。
 けれど、社会に出て、目の前の傲慢な男もさまざまな事実に気がついたのだろう。 
 必要な愛情も与えられず、自由を縛られながら、重すぎる荷を生まれながらに負わされ、だが結局、それさえも変わりがないなどということはなく、齟齬が生まれれば容易に挿げ替えられる。
 「ま、そういうわけで、一応はのらりくらりと言い逃れはするだろうが、どう見たって、俺と引き換えにせっかく捕まえた奴らの親玉を釈放するなんてありえねぇ。
最悪、ここで犬死だな」
 「…あんたはあたしが助ける」 
 改めて決意を込めて。
 だが、そんなつくしに目を瞬かせ、彼女の顔を見上げる司の顔はまったく彼女を信じていなかった。
 …お前に何ができる?
 そう言っているのが顕な嘲笑を浮かべて。
 それでもつくしは全然構わなかった。
 自分でも何ができるかなどわかりはしないのだ。
 ただ、その決意を言いたかっただけ。
 …あんたを守りたいと思っている人間が少なくてもここに一人はいるんだよ、と。
 「望んでねぇよ」
 「え?」
 「別にお前に守られてまで生きたいとも思わねぇな」
 コツン。
 「……痛いって」
 さすがにいつものように盛大には殴られなかったが、一応文句を言うのは、この短い間に出来た司の習い性のようなものなのかもしれない。
 「生きてる限りは頑張りなさいよ。第一、そんなにあっさり改心もしないで死なれちゃ、あんたに非道なことされて恨み骨頂な人たちが拍子抜けするでしょ?」
 「ひでぇ、言い草だな」
 苦笑する司の頭を優しく撫で、微笑み返す。
 「本当のことだもん。悪辣非道な極悪人は極悪人らしく、往生際悪くするものじゃない?」





 つくしが落ち着いてきたことを見てとって、司は先ほどから気になっていたことを口に出す。
 「…なあ」
 「なによ?」
 少し寒いような気がして、つくしは床に積み上げて置いてあった毛布に手を伸ばし、司の体にかけ巻きつける。
 「寒い?」
 「…わかんねぇ。顔は火照ってるな」
 「はは、けっこう腫れて男前があがってるもんね」
 かなりボコボコにやられたのだ。
 一応は素人の喧嘩と違って致命傷は与えられなかったようだが、司の抵抗も凄まじかった。
 おそらく相手も手加減する余裕がなかったのだろう。
 簡単に触診した感じ、骨折まではしていないようだが、あるいはまたヒビくらいは入れられている可能性はありえた。
 …大丈夫かな。
 よもや、交渉も始まらないうちに見殺しにされることはないだろうとは思う。
 ただ医者を呼ぶ余裕が連中にあるだろうか、だ。
 「…熱は今のところ出てはいないわよね」
 「お前さ」
 「ん?」 
 「やつらにヤられちゃったの?」 
 ポロリと手に持っていたアイスノンが転がり落ちる。
 「あいつら女に飢えてて、お前を変な目で見てたろ?身体検査とか言いやがって、女を真っ裸にしてそれだけですむかよッ!?」





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