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「アネモネ…全171話完+α」
第三章 Innocent②

アネモネ125

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 つくしは自分でも驚いていた。
 別に何か悲しかったわけでも、泣くつもりもなかったのに。
 ただ星空を見て、肩や握られた司の手のひらの温もりを感じていたら、頬を何かハラハラと伝うものがあった…そんな感じだったのだ。
 「…泣くなよ」
 つくしの頬を撫で奇妙な顔をしていた司が、つくしの視線と出会って何か痛いことでもあったように顔を顰めて視線を反らす。
 だが、再びつくしへと視線を戻した時には、ただ泣きたくなるような優しさを湛えた眼差しで、さらに彼女の涙を誘い溢れさせる。
 頭の後ろを掴まれ、押し付けられた大きな胸。
 その広さ、温かさに涙が止まらない。
 …あたし、どうしちゃったの?
 本当に泣くことなんて、何もないはずなのに。
 自分で選んでここまできた。
 この男を想い続けてきた年月は本当に長くて…でも短くて。
 忘れたい、そう思う本音では忘れたくなかったから忘れられなかったのだ。
 好きとか、恋とか、愛とか、少女の頃の自分はあまりに幼くて、気がついた時には嵐に翻弄されるばかりで、彼を愛しきれなかった後悔ばかりが残って、いつもどこか彼の面影を探していたように思う。
 けれど、本当にそうだったのか。
 ただの後悔だったの?
 ただ愛しかっただけ。
 逢いたかっただけ。
 こうして抱きしめられたかったのだと思えば、今、この瞬間が幸せの絶頂なのだと悟る。
 …あんたが好き。
 …好きじゃなかった時なんて、あの日から一度もなかった。
 司が彼女を忘れ、彼女が司の手を離した日からずっと、想い続けていたのだ。
 たとえ、司が他の誰を選んでいるのだとしても。
 その手が永遠に彼女のものになることはないのだとわかっていても。
 今だけは…。
 この一瞬だけを。
 司の手が胸に抱きしめていたつくしの頬をそっとあげる。
 涙を拭ってくれるその手の優しさに浸っていたくて目を閉じたつくしの唇に、司の唇が降って、柔らかく吸ってくれた。
 降りしきるような星明かりの下、すれ違う仮初の恋人たちは、まるで暗闇に置き去りにされたような孤独から一時だけ目を瞑り、ただ互いの温もりだけを感受していた。





 「…帰るか」
 「うん」
 司の上着に袖を通していても、寒さが染み渡る。
 彼女にジャケットを貸してしまって、シャツ一枚になってしまっている司はなおさらのことだろう。
 「寒い?」
 気遣うつくしに肩を竦めて、片手を差し出して立ち上がらせてくれるが、憎まれ口がいただけない。
 「俺は筋肉質だから、寒さには強ぇんだよ。脂肪が多いお前と…いてっ」
 ドンッと背中を拳で叩いてやり、下から睨みあげる。
 「これでもあたしは鍛えてる方なんです!ディスクワークのあんたよりむしろ運動してるわよ!失礼しちゃうわねッ」
 実際、同年代の女性よりはよほど筋肉質だと思う。
 昔のつくしもスレンダーだったが、今の彼女はスポーツではないが、職業的に鍛えてそれがスタイル維持になっている。
 だがそうはいっても所詮は生来のものは変えられない。
 …まったく、大して運動してないくせに、こいつ見てると世の中の不公平ってものをヒシヒシと感じさせられるわね。
 ニヤニヤ笑う男が、横っ腹を摘む真似をして首を傾げる。
 「お、ホントだ。つまめないぜ」
 「…それってセクハラだから」
 「でも、こっちはつまめるな。いってえええ!!!」
 懲りない男が脇下、胸のあたりをつまもうとして思いっきり腹にボディブローを食らって悶絶する。
 「……てめぇ、この俺様にそうやって平然と暴力奮うやつはお前くらいだぞ」
 「あら、良かったじゃない。貴重な経験ができて。そんなんだから世の中舐めきって…って、きゃあ」
 「減らず口はこの口かっ!」
 笑いながらバカ力で羽交い締めてくる大きな手の指先に、唇をつままれ、引っ張られるのを痛がってつくしが抵抗する。
 「バカッ!苦しいでしょ。やめなさいよ」
 「てめぇが生意気なこと言うからだろ?」
 「離せ~、この猿ッ。死ぬ~」
 いい大人がきゃいきゃい真夜中に騒ぎ合い、もう汗だくだ。
 「もう…ホント、イヤッ。子供じゃないつーのッ!」
 「はは、いいじゃねぇか。温かくなったろ?」
 「…そりゃそうかもしれないけど、ハァッ。汗かいちゃったわよ」
 つくしの首に巻き付いた逞しい腕に、グッと引き寄せられる。
 耳元に寄せられた唇が、甘く艶めいた囁きを落とす。
 「いいじゃん、俺が洗ってやるよ」
 ハッと振り返ったつくしを、蕩かすような色を含んだ眼差しが見つめていた。





 ホテルのスウィートルームに戻ったとたん始まる濃厚な情事。
 いつもの手順なのに、どこかそれは違った。
 部屋に入ったとたん、壁に押し付けられ貪られた唇。
 糸を引く唾液の筋さえが生々しく、色気ダダ漏れな司の欲望に満ちた目に焼き尽くされそうだ。 
 「………ぁん…ん。しゃ、シャワー」
 やっとの思いでつくしが口にした時には、首筋に埋まっていた司の唇が、彼女の肌を舐め転がしていた。
 「たしかに、しょっぱい」 
 「もう!だから、汗かいたって言ったでしょッ」
 欲望に紅潮していた顔に、カッと羞恥が浮かび、ドンドンと抱き返していた彼の背を殴って抗議する。
 「わかった、わかったって。さっき、洗ってやるって約束しただろ?」 
 名残惜しく首筋や、胸元にキスを落とし、頬にもキスをすると、司がつくしを抱き上げた。
 「きゃっ」
 「キスしながら、風呂場まで行こうぜ」
 「ゃっ……んん……ふぅ…」
 尻を支えた手とは逆の手に、頭の後ろを抑えられ、抗議するまもなく何度となく口づけられる。 
 つくしももはや抵抗することなど思いもよらない。
 いつの間にか司の首に両腕を回し、気がつけば彼の顔にキスの雨を降らせていたのは無意識だった。





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NoTitle

涙が出ちゃう…。切ない。。

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