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「アネモネ…全171話完+α」
第三章 Innocent②

アネモネ124

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 「ねぇ、帰らないの?」
 もう梅雨も後半。
 台風一過の後の空気は清涼で爽やか。
 オープンカーを吹き抜ける風は肌寒いくらいだったが、袖を通した司のジャケットがその寒さを防いでくれている。
 どうやら明日はいい天気になりそうで、夕方にはまだ雲があって月もぼんやりしていたのだが、船を降りてみればいつの間にか満天の星。
 「…山の上の方まで行くとすげぇ星がキレイだつーけど、今の時期だとはいえめっちゃ寒いらしからな、今回は諦めるか」
 「そうなんだ。土星も見えるのかな」
 自分でも馬鹿なことを言ったことに気がつき、あっと口を抑えて司を伺う。
 だが、司は前を向いたまま首を傾げるだけ。
 「そうだな、ここの天文台は九州一らしいからな。見たいか?」
 問われて、小さく笑って否定する。
 「ううん、いい。こんな時間じゃ開いてないだろうし」
 いくら夜間に開いている施設だとはいえ、彼此、もう日付が変わる時間帯だ。
 「別に俺が一言電話すれば、すぐに施設の奴らがすっ飛んできて開けるさ」
 「……やめなさい。ダダこねる子供じゃないんだから」
 「ふん」
 いかにもやりそうなことで、下手に冗談だと思って同意するとこの男は本当にやる。
 鼻を鳴らした司は、それでも機嫌が良さそうで、うっすらと笑みを浮かべていた。
 「ねえ、疲れてないの?」
 「お前は疲れたか?」
 「……ん、多少は」
 疲れているか疲れていないか、と言われれば、疲れていないはずもない。
 けれど、このどこか穏やかで優しい時間が続いて欲しいという気持ちもある。
 どこまでもどこまでも…真っ暗な闇の中を、司と二人。
 まるで世界で二人っきりになってしまったような錯覚を抱いていたい。
 運転に集中していた司が、視線を感じたのだろう、ふとつくしを横目で振り返る。
 「…なに?」
 「え?あ…その、えっと」
 見惚れていたとは言いたくなかった。
 「さ、さっき言ってた人間の三大娯楽って、なに?」
 思いつきだったが、司は別に不審に思わなかったようだ。
 「なんだよ、お前、知らねぇの?」
 「うん。三大欲求なら聞いたことあるんだけど。食欲に、睡眠欲でしょ、それと…」
 性欲…と言いかけて、やぶへびになりそうで口篭ってしまう。
 もちろん、そんな彼女の逡巡など、意図も容易く司には見破られてしまっているのだが。
 「くっ」
 「…なによ」
 「なんでもねぇよ、こらっ!運転してんだ、殴んじゃねぇよ」
 ちょっと脇腹を小突いてやっただけなのに、大げさに言い募られ唇を尖らせる。
 クツクツ笑う司は本当に楽しそうで、ここのところよく笑うようになったように思う。
 たわいないことを笑い合い、たわいないことで喧嘩する。
 まるで昔に戻ったような錯覚に、胸のどこかが小さく痛む。
 「打つ、呑む、買うって言うだろ?」
 「打つ、呑む、買う??」
 「博打を打つ、酒を呑む、女を買う」
 「…なによそれ、少しも意外性がないんですけど」
 それを言えば、目の前の男はそれのどれも日々実践しているわけだ。
 もっとも、酒と女はともかく、博打にはそれほどハマっているようには見えない。
 実際…。
 「ま、俺もギャンブルにはハマらねぇな」
 「そうなんだ?」
 「俺にとっては仕事がギャンブルみてぇなもんだからな。神経すり減らして、食うか食われるか。よほどギャンブルよりデカイ掛金で勝負してるぜ」
 「…なるほど」
 「どうだ?スリルあったか?」
 スリル…確かにあった。
 けれど根っからの貧乏性のつくしにはとても楽しいとは思えなかった。
 「スリルはあったけど…」
 「ハマった?」
 「…全然、あんな無駄なことにお金使うくらいなら、もっと有意義なことに使いたいよ」
 「ふっ。お前にとって、有意義なことってなんだ?」
 「ん~、貯金する?」 
 「ぶっ!」
 吹き出した司が、運転を誤りかける。
 ぎゅい~んと車が蛇行して、つくしは大汗をかかされた。
 「ちょ、ちょっと!なにあんた危険運転してんのよ、勘弁してよ!!あたしはまだ死にたくないんだからッ!!」
 「お前が笑わせるからだろ」
 反省はないのか、まだ司は笑い収めない。
 「…星、見てくるか」
 「見えてるよ」
 「もっと見えるところ」
 「はあ?天文台の係員の人を呼び出すようなマネはやめなさいよ」
 ニヤリと笑った司は、悪い顔でふふんとつくしの忠告を鼻でいなしてちっとも聞く気がなさそうだ。
 「ちょっと!」
 「うるさいって、いま、夜中」
 「あんたが非常識なことしようとしてるからでしょッ!?」
 この道がどこまでもどこまでも続いていたなら…。
 心の中でつくしはずっと唱え続けていた。





 結局つくしの説得?の甲斐あって、真夜中に天文台係員をたたき起こすこともなく、展望台近くまで車で行ける公園へと訪れることになった。
 何もこんな真夜中に…と思わなくもなかったけれど、司の立場上、それも致し方がない。
 むしろ、高校生の頃にはいくら星に興味?があったとは言え、どうみてもそんな健康的な趣味など持ち合わせていそうもない男が、こんなところへわざわざ足を運んできたことのほうが驚きであった。
 ボディガードたちも距離をとってついてきているのだろうが、とりあえず四方見えるところには見当たらない。
 おそらくデートと銘打っているので、基本的には身を潜めているのだろうと思う。
 手を恋人繋ぎに繋がれた夜道。
 ドキドキする自分が気恥ずかしく、…もう少しの間だけのことなのだと許容する。
 「うわぁ」
 鬱蒼とした草木の間から現れた、天上いっぱいの天然のイルミネーション。
 東京よりも遥かに近い夜空は、まるで星のシャワーのようで。
 「…すげぇな、こっちはそれほどでもないって聞いたんだけどな」
 「うん、すごい、綺麗、夢みたいだね」
 「とりあえず、上に登ろうぜ」
 展望台とは名ばかりのまるで大きな物干し台のような台座へと、階段を二人で登って、直に床へと腰を下ろす。
 二人、しばし空一杯に広がった宇宙の絵図に目を奪われて…。
 「…どうした?」
 気がついたら隣に腰掛けていた司が、不思議そうに自分を見ていた。
 「なんで泣いてるんだ?お前」
 「え?」
 目尻から溢れ落ちて頬を伝う涙を、司の指先がすくい取った。





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