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「アネモネ…全171話完+α」
第三章 Innocent①

アネモネ117

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 東京から熊本空港への空の旅は極めて順調で、予定通り一時間半ほど。
 やはり一般航空機とは異なり、よけいなタイムロスがないのでそこのところは楽なものだ。
 つくしが初めて訪れた九州の地は残念なことに激しい豪雨で、それはごく珍しいことではないらしい。
 台風は通り過ぎたばかりのはずだというのに、暑い雲で覆われた空は真っ暗で憂鬱な気分が甦る。
 「元々熊本は雨量が多くとくに、この時期の大雨は九州一と言われるくらいですからね」
 「そうなんですか…」
 夜間の雨とは異なり、それほど忌避感は感じなかったが、それにしてものっけからの雨に、ため息が溢れるのは仕方がない。
 「それでも、晴れた日もありますし、梅雨が明ければ毎日30℃を超える猛暑になりますから、今が一番過ごしやすい時期だと思いますよ」
 にっこり笑うのは熊本出身だというボディガードの村越だ。
 あからさまにつくしを『代表の愛人』として蔑んだ目で見るオスカーや江原とは異なり、人の良い村越は以前と態度をほとんど変えてこない。
 それでもある程度の遠慮があるのは明らかで、一々そんなことを気にしていてはこんな立場はやっていられないので、つくしも気がつかないフリをしている。
 …そりゃ、態度に困るわよね。
 うっかりつくしの機嫌を損ねて、司に筒抜けなのも困ると思われていても仕方がないだろう。
 さんざんこうした態度…過度の排斥やおもねりは英徳時代に経験していた。
 どうしても司や類、F4と関われば妬み嫉みはセットなのだ。
 「でも良かったですね。台風一過。今日の午後から明日、明後日あたりまではよく晴れるみたいですよ」
 「わぁ、それは嬉しいです。あまり屋外にでる機会はないかもしれませんけど、雨の時の外出は億劫ですものね」
 基本、今回の司一行の行程は、各九州支社とホテルの往復と移動がメインで、それらもドアtoドアだ。
 ましてや、道明寺HDの代表の傍近くに常に控えているつくしが、外を歩かされる機会はそうそうないのはわかっている。
 …せっかく初めての九州なのに…。仕事じゃないんだったら、散歩でもしたかったな。
 もっとこうも陰鬱な空を見ていると、それほど強い意欲が湧いてくるものでもなかったけれど。
 「おい、何してんだ」
 西田と立ち話をしていた司が、リムジンの傍らから呼びかけてくる。
 それに小走りで彼女が歩み寄ると、いつものように先に車に乗った司が手を差し伸べてきた。
 …一々手を貸してくれなくても乗れるつーの。
 頭痛を覚えつつ、つくしもとりあえずは司のメンツを慮って、それを拒否したりはしない。
 歳を得て、彼女も大人になったのだろう。
 高校生の時にはできなかったこともできるようになった。。
 少女時代はやたらと意固地になっていた気もするが、時には男を立てることも必要な時があるのを今ではわかっている。
 ましてや、司のように社会的立場がある男性はなおさらのことだ。
 唯々諾々と貢がれることを許容するのとはまた異なることだったけれど、人前でつまらないことに拘って、彼に恥をかかせるようなマネをすることはなくなった。
 リムジンのシートに腰掛けてすぐ、各所からの定期連絡を確認しようとハンドバックのスマホを取り出しかけ、ツルリと手が滑って足元へと落ちてしまった。
 拾おうと身を屈める前に、すでにわざわざ上半身を伸び上がらせて司が拾ってくれる。
 つくしとて今まで男性と一緒に出歩いた経験がないわけではなかった。
 それでもこうしてなんの躊躇もなく、レディ・ファーストを実践してくれる男性はF4くらいなもので、その特異性を思う。
 傲慢俺様男の司でさえ、その精神は染み渡っているのだ。
 以前、それをあきらなどに言った時には、『そりゃ、日本の常識。アメリカや西欧なんかの英語圏だと、別にセレブじゃなくっても、普通のマナーだぞ?』ということだったが、やはり物慣れず、目の前に差し出されたスマホを見つめて戸惑ってしまう。
 「おい?」
 「…あ、ありがとう」
 バタンと閉められたドアに、どうやら今日も西田は前の座席に座るようだと溜息をついた。
 …本当はこうした移動時間にスケジュール確認とかしたいんだろうな。
 そうは思うものの、西田でさえも上司とその愛人との間に同席するのは戸惑うのかもしれないと思い直す。
 いささか自虐的だとは思うものの、そうした自覚は周囲への気遣いであり、他人に対するつくしなりの成長だとも言えなくはなかった。
 他人の思惑に鈍感なままではいられなかった。
 人間というものの清濁を飲み込むこと。
 若い頃にはできなかったことが、いまでは息を吸うように自然にできるようになった。
 時にはそれを堕落とも、…汚れてしまったとも思うことがあったけれど、それでもつくし自身だとていつまでも清いままでいられなかったのだ。
 …昔のあたしだったら、どうしただろう。
 時々そんなことを思うことがある。
 司が別の女を選んで、それを理由に唯々諾々と彼を諦めてしまったことを何度も後悔しつつも、あの時の自分にはとても、自分のことを憶えていない司に縋りつくことなどできなかったのはわかりきっていた。
 …高慢だった。
 今ではつくしもそう思う。
 これほど傲慢男の司が、何度彼女にフられても捨て身だったようには彼を愛せなかった。
 自分の自尊心をとって彼を見捨てて、それを彼のせいにして長い間恨んでいた。
 …なんで、どうして?なぜなのよ。
 そればかりが渦巻いて、苦しいのに目を背けて苦しんでいないフリをした。
 …もうあんな奴、あたしには関係ない。
 …あたしだけを忘れて、あたしのことを見つけてくれなかったあいつが悪いんだから、と。
 「どうした?」
 ぼんやりと司を見ていたことに気がつかれたのだろう。
 シートに収まってすぐに用意されていた書類に目を落としていた司が、つくしを見返して不思議そうに首を傾げている。
 「あ…ううん。精力的だな、と思って?」
 「…は?」
 「いや、昨日の今日で、まだ疲れも残っているのにって思っただけ。夜までビッシリ予定が詰まってるんでしょ?」
 「まあな。それでも夜間移動分を早朝に稼いだから、スケジュールに穴は空かなかったから助かったけどな」
 
 なおも会話する姿勢でいる司に、自分が分刻みで仕事をこなしている彼の邪魔をしてしまったことに、つくしは気がついた。
 「えっと、ごめん、仕事続けて?邪魔しちゃったね。あたしも仕事するから、あんたも書類に戻って」
 「パソコン出すのか?いつもの小せぇ奴」
 「ううん、移動中だしスマホで十分」
 手に持った小さな機械も、今や立派な高性能パソコン並の機能を有している。
 「ふぅん」
 何を思ったのか、司が片方の靴を脱ぎ、その足をシートに乗せて向きを変えた。
 「ちょっと…」
 「膝枕。この後、夜まで仮眠するような時間もねぇし。移動中はせいぜい書類読むくらいの仕事しかねぇから、膝貸せよ」





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