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「アネモネ…全171話完+α」
第三章 Innocent①

アネモネ111

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 司の提案が耳に蘇って、つくしはブルリと肩を震わせる。
 彼の声音を思い出すだけで、快感が湧き上がってきそうだった。
 彼の美貌、つくしを揶揄う時の楽しそうな声、熱い眼差し、欲望を滲ませた色香、力強い腕の力。
 彼女のカラダを滑って快楽を生み出す長い指先。
 意図も容易く彼女を燃えたたせる甘い口づけとタバコの臭い混じりの懐かしいコロンの匂い。
 彼女の体をすっぽりと包み込み、まるで世界中の全てから守ってくれるような錯覚を与えてくれる逞しい胸。
 荒々しい吐息、熱い愛撫。
 彼女の殻を突き破った雄々しい彼の分身。
 …忘れられるの?
 …忘れてみせる。
 どのみち…、もうすぐ終わりが来る。
 おそらく九州の出張に同行する日々が最後になるだろう。
 課長の話ではすぐにも次の任務が待っているようだった。
 あるいは…。
 『花沢へおいでよ。不本意な仕事から縁が切れる。どのみち、あんたにとっての警察に入ったことの目的はもう達成したんでしょ?』
 …道明寺を守りたい。
 …道明寺を守る力があれば。
 …あの時、何もできなかった自分。あの無力感をもう味わいたくない。
 そんな彼女の気持ちを誰よりも熟知していた友。
 けれど、類でさえも知っていただろうか。
 彼女自身でさえも自覚せず…いや押し込めてきた願い。
 …もう一度、もう一度だけ。道明寺に逢いたい。
 …あの目をあの顔を、あのクルクルの髪をもう一目だけこの目で見ることができれば。
 なんて欲が深いのだろう、自分は。
 物分りよいフリで、遠く手の届かないところで、彼の横に立つ美しい女たちに嫉妬していた。
 …ああ、道明寺。
 と思う。
 あんたに逢いたくて逢いたくて、…でも会いたくなかったんだよ、と。





 邸に戻ったのは、もはや夜半にも近かった。
 さすがの司も、疲労が色濃い。
 珍しく出迎えたのは、ここのところ夜遅くの業務は若いものたちに後を譲ったはずの皺深い老婆で。
 「…なんだよ、タマ。夜更しは、老体に応えるつーてなかったか」
 「おかえりなさいまし。西田から、どこかの我が儘坊ちゃんが荒いで屋敷で一悶着起こすかもしれないと言うからね」
 「チッ、ガキかよ、俺は」
 苦虫を潰したような顔の司に、クスクスとタマが笑う。
 「なんだい、自覚あるのかね?」
 「…別に一悶着起こしてぇこともねぇよ」
 「そうですか?そういえば、つくしは親元に帰ってるんでしたっけね」
 わかってはいたが、あえて司の背後をヒョイと伺いみる。
 そのわざとらしい仕草にジロッと司が老婆を見下ろすが、当然そんな睨みくらいで今更怖じけるような性根を持ってはない。
 「西田から聞いてんだろ?」
 「いや、つくしが電話で言ってきましたよ」
 プイッとそれで、司は踵を返してしまう。
 なんとなく、自分の知らないところでつくしが違う人間とやり取りしているのが面白くない。
 自分でも確かにここのところ、子供返りしているのではないかと自覚がないわけではなかった。
 …珍しく気に入ったおもちゃだしな。
 継続的に愛人を囲おうなどと思ったこともない。
 総二郎の三回ルールではないが、彼の周囲をうろつく女たちには事欠かないが、むしろ司が追い払わずとも大概の女が彼の激しすぎて慈しみのない態度に嫌気がさして逃げていった。
 あとは彼の金やステータスを利用しようという輩ばかりで、それらも司に飽きられて金で始末された。
 本当に希薄な関係しか築いてこなかったが、別段それで孤独を感じることもなく…ただ、手の指の間から砂が落ちてゆくような奇妙な空虚感と飢餓感に常に苛まれ。
 それは別に、そうしたつまらない者たちが失われてゆくことに対するものではなく、ただこうして無為に過ごしてゆく時間の流れに対する焦燥だったのか。
 …待っている誰かがいる気がして。
 …その誰かが失われてゆく恐怖に夢を見た。
 …それなのにその夢を拒むうちに、それらさえも間遠くなり。
 なにが苦しいのかわからないままに。
 ただ手に触れるものを破壊して、寂寥を慰めた。
 スリル。
 それだけが彼の希薄な生をこの世に押しとどめてくれる唯一の活力剤で。
 …なんで生きていなきゃなんねぇ。
 …いつ死んだってかまわない。
 そう思うのに、死んでしまった後の無が怖かった。 
 …もし、自分がいなくなれば、あいつはどうするんだろう。
 …あいつ?
 そう思ったとたん、ここのところ彼を面白がらせ楽しませている女のフくれた顔が思い浮かんで、唇の端に自然笑みが浮かぶ。
 辿り付いたここ数週間の寝室は、なぜかいつもとはまるで違う気がした。
 「…なんだ?」
 何も変わることなどあるはずもないのに、ひんやりとして無機質な広い部屋が寒々しくて、妙に居心地が悪い。
 …あの女がいない。
 いつもは彼に付き従っているか、居間のソファに座っているつくしがいなかった。
 「バカバカしい!」
 この30年間。
 ほとんどの時間、つくしはいなかったのだし、彼女と共にいたという1年余の時を司は憶えていない。
 それなのに…。
 わずか2ヶ月ほどの、共に過ごした時間が。
 彼女の不在をこの上なく耐え難く、つまらないものに感じさせて、司は舌打ちをする。
 …もし、自分がいなくなれば。
 先ほどの問が蘇って。
 「あの女のことだ。この俺様がいなくても、全然平気だとか抜かしやんだろうな」
 それが妙に胸に響いて、司は足元のコーヒーテーブルを蹴り上げ、シャワー室へと向かった。





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