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「アネモネ…全171話完+α」
第三章 Innocent①

アネモネ103

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 「…ひッ!?………」
 「つくし!?」
 突然呻いて、体をふたつ折りに屈み込んだつくしに優紀が驚く。
 腹を抑えて、口元に手をやるつくしの顔は真っ赤だ。
 「い、いま、誰か、読んでくるね!」
 非常事態なのは明らかで、皆を呼んでこようと優紀が足を踏み出した。
 「ま、待って!」
 ブルブル震える手に上着の裾を掴まれ、優紀がつんのめった。
 「ご、ごめん」 
 「ううん、平気。もしかして、吐いたり倒れたりしちゃうそう?」
 「ち、違うんだけど、その…大丈夫だから」
 「大丈夫って…」
 そのまま屈み込んでしまっていては、ますます優紀の心配を助長してしまうだろう。
 焦って立ち上がろうとしたが、ブイーンと音を立てていた異物がグリンと胎内で動いて、またもしゃがみそうになって、懸命にその衝動を押し殺す。
 ゆっくりと息を吐き、深呼吸を繰り返すうちに、胎内で蠢いていた機械が動きを止め、安堵に脱力しそうになった。
 …あの男ッ!
 「つくし?」
 「む、虫!」
 「えっ!?」
 ギョッと仰け反る優紀に畳み掛けるように早口で言い置き、奮然と踵を返す。
 「ゴキブリみたいのがいて、驚いちゃったの」 
 「…こんな高級店にゴキブリ?」
 「繁盛している店こそ、いるものでしょ!?」
 かなり強引ないいわけだったが、ありえないことでもない。
 怪訝な優紀に引き攣った笑みを浮かべつつ、一目散に歩き出す。
 こんなところでグズグズしていたら、いつあのサド男に何をされるものだかわかったものではないのだ。
 「…本当に平気?」
 「うん、大丈夫。どっちみち、あのバカ引き摺って帰らないといけないし…」
 彼女の悲哀も苦悩も、屈託も…司のせいだと思うと改めて厄介な男に惚れてしまった自分の愚かさが身につまされ、やるせない思いのつくしだった。





 つくしがVIPルームに戻ると、すでに戻っていた司が総二郎やあきらと難しい顔を突き合わせてよもやま話に興じていた。
 すぐに出るものと思っていたつくしが、戸惑って立ち尽くす。
 すると、総二郎とあきらの話に聞き入っているように見えた司が、拳を一瞬開いて握ったリモコンを見せびらかすように、チラッとつくしへと視線をくれる。
 先ほどのような激しい振動ではなかったけれど、わずかに胎内の器具が蠢いた気がして、つくしはキュッと心臓が縮こまった気がして拳を握り締める。
 「ああ、戻ってきた」
 「先輩大丈夫でした?」
 つくしと優紀に気がついた女性陣が椅子から立ち上がって出迎えてくれる。
 「…あ、うん、平気」
 「なんだよ、牧野。酒も飲んでねぇのに、酔ったのかよ?」
 怪訝な総二郎に曖昧に微笑み、女性たちの方へと歩み寄る。
 が…。
 司の横を通りしな…、
 「…遅かったじゃねぇかよ」
 「あんた、あとで覚えてなさいよ」
 くくっと笑う司の真横を通り過ぎながら、顔を怒りと羞恥に染め通りすぎる。
 …結局、あたしにはあいつにできる報復なんてないんだよね。
 せいぜい、耳元でキャンキャン吠える犬くらいにしか思われていないだろう。
 それでも唯々諾々と従うできないのは性分だった。
 …あんなサイテー野郎だっていうのに、見限れないなんて、あたしは本当にどれだけ馬鹿なんだか。
 すぐに退席できると思っていたのに、ガッツリ話し込む体制になっているF4の話を遮ってまで帰宅を催促できなかった。
 …どうしよう。
 いつあのリモコンのスイッチを入れられるかと心もとない。
 入ってるだけならば、意外なことにそれほど違和感はなかった。
 それでも、動かされればとてもじゃないが平静ではいられなかった。
 イライラと足を組み替えつつ、司を伺わずにはいられない。
 「…先輩?さっきからずいぶん、道明寺さんのことを気にしてらっしゃるんですね?」 
 「え?!」
 言い当てられ思わず飛び上がる。
 怪訝な顔の桜子に答える言葉などあるはずもない。
 優紀も気のせいか、不審そうだ。
 「…いや、その」 
 「そういえば、司もだよね」
 「ですね」
 自分が司を気にしている理由は嫌というほどわかっていたが、司の方はといえば彼女の無意識の哀願をまったく意に介さず、知らない顔で総二郎の話に聞き入っているとばかりつくしは思っていた。
 「…そんな風には見えないけど」
 「気にしてるよね?優紀ちゃん」
 「たぶん?」
 言われて改めて司を振り返ってみるものの、滋や桜子が言うようにこちらを気にしているようには見えなかった。
 「ぷぷ、あたし見ちゃった」
 「何が?」
 「つくしがあっち見ようとした瞬間、知らん顔してるの司ったら」
 「ですね。どうも、先輩に注目されるのを楽しんでらっしゃるように思えます」
 「…なんか、あるの?」
 「……」 
 憮然とジュースを一気飲みする。
 …道明寺め。
 もちろん心当たりなどわかりすぎるほどにある。
 いまのところ、『遅い』と文句を言われた時にスイッチを押された時くらいで、特にイケズなマネはされていない。
 おそらく、滋の言うとおり司は楽しんでいるのだろう。
 いつスイッチを押されるかと戦々恐々としているつくしの苦渋を楽しんでいる。
 …ムカつく。
 …ホント、サイテー!!





 「…なんか楽しそうだな、司」 
 「あ?」
 総二郎の話を聞いているフリで、つくしの動向を探っていた司が総二郎へと注意を戻す。
 「不機嫌な顔して席を立ったと思ったら、いきなり上機嫌で戻ってきてどういう風の吹き回しだよ?」
 「…牧野か?」
 「なんだよ、それ」
 もちろんその通りなのだが、言い当てられるのは面白くない。
 いつもはケンモホロロで、警備目的以外にはこちらを見ようともしない女が、縋る視線で常に自分を見つめている。
 「司は今更、ガキの頃をやりなおしてるんでしょ」





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